「おはよう皆」
「うお、まだ起きてくるのは先だと思ってた」
「シャチさん……ローにバラバラにされるかもしれない夢を私は見た」
「おま、それ、こえええ!それ夢じゃねーだろ絶対!」
昨日ローがシャチが馴れ初めを聞いてきた時の反応を伝える。
暗に昨日は船長と人には言えない事をしたことを絶対に知っているような発言をするリーシャなりの制裁だ。
テンパり具合にローが彼を玩具のように遊ぶ気持ちも分かる。
それを見ていたベポがリーシャに昼御飯を食べるように進める。
「今日は、えっと……ちんじゃ、お、ろー……ん?」
「ちんじゃおろーん?……ちんじゃおろーす?……ああ……青椒肉絲……の事?」
チンジャオロースと正しく発音すればベポは花を綻ばせた空気を醸し出しそうだ!それそれ!と喜ぶ。
「また懐かしい食べ物……」
そう口にしながらコックから食事を受け取ると適当な場所に座る。
するとシャチがテンションが低めに喋り出す。
「停泊出来る島には後二日で着くらしいぜ。そういえばリーシャはいつも船長に外に出たいって言わないよな」
「というよりローが島が安全な時にしか出るなって言うから」
きっとバラバラにされる事を考えてしまったのだろうと内心二回目の合掌。
(そういえばってもっと前から私あんまりローから出てもいいって言われたことないけど)
言われるのは言われるが別に絶対にとは言われていないので誰かを同伴させて島に降りる。
いくら何でも治安が悪いところには自分のような普通の女がのこのこと出ると何か酷い事態になる程度の危機感と防御本能くらいは備えているつもりなので進んで外に出たいとは思わない。
それにローはリーシャが船に居る時は必ず必要な用事を済ませると早く帰ってきてくれるのだ。
その時に自分は幸福者だと更に実感出来る。
(あのぶっきらぼうにお土産だって言って袋をぶら下げて渡してくる時が、もう可愛いんだよねええっ)
くううう、と思い出し悶える。
そして、チンジャオロースを食べてほろりと過去に食べたチンジャオロースを思い浮かべるが頻繁に食べるものではないからこんなに美味しいものだっただろうかと不思議に思った。
(あ、そーいや前にくれたお見上げのクッキーみたいなお菓子がまだ残ってたな)
ご飯を食べたら食べてしまおうとスケジュールを頭の中で組む。
「ほんとお前と船長の関係が今もピンとこねェな」
「それ昨日も言われた……ここに指輪してるけど……目に入らぬかーっ、なんてね」
某時代劇ドラマの台詞にシャチとベポはちんぷんかんぷんな顔をする。
いや見えてるけど、と言われ苦笑。
「それだってフェイクとか考えられるぜ?」
「別に何とでも考えても構わないけど、それローに言わない方がいいよ。これくれたの本人だし」
シャチは分かってると怯えた声で言うとベポが先程のドラマの名台詞に今だ関心があったようで質問してくる。
「時々リーシャって俺の知らない言葉を使うな。それって故郷の言葉なのか?」
言葉ではなくドラマだが彼らにもこの世界にも存在していない言葉なので説明が難しい。
「そんなところ。後は控えおろう!とかある」
「ワノ国にそんな言葉があった気もする」
「ペンギンさん!こんにちは」
靴音と共に現れたペンギン。
挨拶してから彼は彼らと同じく席に座り聞く話す姿勢になる。
「ワノ国?……なんだか親近感の沸く名前……」
ワノ国を勝手に脳が『和の国』に変換するがあながち間違っていないかもしれない。
ペンギンによればそこは閉鎖的な国で世界政府も安易に近付けない程強い人がたくさん住んでいるらしくチョンマゲと呼ばれるヘアスタイルがその国の特徴らしい。
サムライと呼ばれ武士道と聞いてこれは確実に行ってみたいと今まで感じた事のないような煩悩がじわりと湧いてくる。
どんな場所かは想像に難しくない。
このお喋りタイムが終わったらローに行けるかを聞いてみようと緩む口元を抑えきれなかった。
_4/21