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19
ユッサユッサと激しく揺られる何かの中で必死に冷静さを保とうと頑張る。

「おい、なんか中身小さくねーか」

「心なしか軽い……よし、一旦確認するぞ」

そう麻袋らしきものの入り口を開き男達は一同に目を見開き間抜けに口を開く。

「虎……!?」

「女は!?くそ!間違えたかっ」

悔しげに叫ぶ男達に囲まれ小虎になったリーシャは早く解放されないかと祈る。
怖くて鳴くことも出来ない中、急に男達の悲鳴が耳に入った。
状況を声でのみ判断すると黒い虎が目の前に現れて牙を向いているらしい。
黒い虎なんて早々にいない。

「ひ!?待て!今返すからよ!」

男は自分をその虎の子供だとでも思ったのか慌ててリーシャを出すと彼らは離れる。
そして逃げ出しあっという間にいなくなってしまう。
それを見ているとローである黒い虎が前足で手招いてこちらだと建物の死角へ連れて行かれる。

「……最悪な気分だ……貴族だろうが許さねェ」

虎から人に戻るとローは唸るような低い声で怒りを表していた。

「ロー、わ、私ならこうして……平気だったんだし……もういいと思うよ?……」

「何を言い出すかと思えば……能天気なアホな貴族が調子に乗るとまた同じ事をしてくるのが相場だ……徹底的に潰す」

もう腸が煮えくり返っている様子のローに、何を言っても無駄なんだと悟る。
でも、ここに来てこんな事で怪我でも万が一にしてしまっては大事だと己に言い聞かせた。

「ロー、ねぇ、ロー」

「まだ何かあんのか」

「うん…………」

ご立腹なローに言葉の空白を一拍置いて彼の腰上に腕を回して頬を胸元に預ける。

「さっきの、忘れたい。ねぇ、私を安心させて……ローとふ、二人でしか出来ないこと、あのね、」

しどろもどろになりながらも伝えるとローは意味を察したのか無言で腰に手を這わせてくる。
そのまま能力だろうか、先程のホテルではなく船の一室であるそこにいた。
そのままベッドへと倒れる。
恥ずかしい事を言ってしまった事を凄く恥ずかしく思っているが、彼の思考をどうにか逸らすことが出来たので悔いはない。
でも、目の前で虎にも負けない獰猛な瞳で射ぬいてくる男に欲情という名の感情により心臓が歓喜に震えた。





目を覚ますと隣にいる筈のローが居なくて、最初は水でも飲みに行ったのかと本当に思っていた。
そして、まさかの事態を疑わなかったのは失態である。
返ってきたという様子のローは外行きの格好をしていて何かをしてきたという風な顔をしていた。
しいて例えるならスッキリした清々しい顔とでも言うべきか。
暫くして出航の用意が出来たという船員の言葉に凄く急だとシャチに詳しい詳細を聞く。
まだバイトのお礼も何もしていないのに。

「あ、そーだ、これ渡しとくな」

「?、お金?」

「バイト代、船長が貰ってきたらしい」

なんと、ローが店に行って貰って来たらしい。
それにしてもどことなく量が多いような気がする。

「あの金持ちに目を付けられたから、詫びの分も入ってるってよ」

追加で言われた事に、あの店が悪い訳ではないのにと落ち込む。
それにしても、やはり出航が急すぎる。

「うーん、よく分からねェけど海軍がこっちに来るからって船長がなァ」

嫌な予感がしてローがいるという甲板へ急ぐ。

「ロー!」

バン!と扉を開くといつもの表情をしたローがいて、中に居ろと言ってくるが従う前に確認しなければいけない。

「海軍がこっちに向かってるって聞いたっ。も、もしかして……ローがあの貴族に」

「そんなの、お前が知ることでもない。大したことでもない」

「っ、ロー……」

言葉に詰まる。
知ることでもないとは意味がよく分からない。
少なくとも原因を作ってしまったのはリーシャなのに。

「ごめん、ごめん!私が目を付けられなかったら、ローにも皆にも迷惑かけ」

「それ以上言うな。お前は何も悪くねェ事は皆分かってる」

そう言われても、罪悪感が湧く。
不安になってオロオロと足を揺らすと目の前に居るローが突然抱き締めてくる。
突然の行動に固まると目を白黒させて動揺した。
いきなりどうしたのだろう。
ゆるりと彼の背中に腕を回すと抱擁の力が増す。
そうすると、不思議な事に焦ったりして不安定な気持ちが静まっていく。
落ち着く。

「大丈夫だ。責任を感じる必要もねェ。あの男の事は忘れろ」

「でも、ロー……」

(ローの手を煩わせちゃったのに)

責めてくれた方が楽なのに。
彼は腕の力を緩めてリーシャの顔を見つめてからそっと頬にキスをしてくれた。
それから唇にくれる。
目を閉じて受け止めると、その行為は激しくなった。
酸欠になりそうな程長い間触れ合ってから離れる。
こちらは息を必死に吸っているのに、ローはケロリとしていた。
男と女の差でもあるし、経験の差でもあるから結構悔しい。

「あいつの事は忘れろ。俺の事だけ見てればいいんだよ」

勝ち誇った顔で言った男に、最初から貴方しか目に入ってない、と思ったが悔しいから言ってなんかあげない。
_19/21
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