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18
今日もバイト三昧で少し慣れた滞在五日目。
ちりんちりんと鳴った来客の知らせにいらっしゃいませと振り返るとふくよかな中年男性が立っていた。
手にはゴツゴツした宝石の付いている指輪をしており後ろにはサングラスに黒服の男達が微動だにせずに立っている。
すると周りの客が緊張を孕んだ声でひそりと口々に喋った。

「おい、あれブロディーじゃないか」

「どうしてこのカフェに」

「また女狩りをする気か」

女狩りという聞き慣れない単語に嫌な予感を覚えた時、あの中年男性と目が合う。
客として席に案内しようと動けば相手の男は上から下まで舐めるように品定めする。
悪寒が走り震える声でこちらにどうぞと案内した。
しかし、歩き出した瞬間、男は「この女を私のコレクションに」と言うのが聞こえ「え?」と振り返った時、男達がこちらへやって来るのが見える。

「きゃ!」

思わず防御体勢を取ると耳に何かが爆発する音が聞こえ、目を開けると視界が真っ白で混乱する。
ブロディーと呼ばれていた男の焦る声とこっちだ、と言う声と共に腕を掴まれちんぷんかんぷんな思考のまま誘導された。
外へ出ると視界が開け前を見ればシャチが手を掴んでいた事に驚く。
騒ぎのする後ろを見れば白くモクモクとした煙が店内を埋め尽くしていた。
素早く彼が誰も居ない死角に入るとやっと呼吸がまともに出来て、彼の顔を改めて見る。

「今の結構ヤバかったからさ……煙幕投げたんだよ。あのままだったらお前確実に何かされっただろ?」

「うん……助けてくれてありがとうシャチさん」

「や?別に……船長に頼まれてたからな」

その台詞に首を傾げると詳しい話しはホテルでと言われ見つからないように帰った。



ホテルに着くとシャチから事情を聞いたローが剣呑な顔を浮かべ、頷くと部屋から出ていくシャチにもう一度ありがとうと伝えると二人だけの空間になる。
暫し静かすぎる空気に気不味くなるとローがソファにリーシャを呼び、恐る恐る歩み寄りソファに腰掛けた。
そして、ゆるりと手が髪に触れふわふわと撫でられる。
不安で堪らなくて手を離して欲しくなくて、でも、少しでも情報が欲しくてローに尋ねる。

「ロー、私……ちゃんと今の自分の状況を、し、知りたい……お願い」

「お前は知らなくても良い」

「知りたい、私の事だから」

髪を撫でるのを止めないままリーシャを真っ直ぐ見つめる。
こちらも反らさない。

「……分かった」

ローは目を一度伏せた。

「お前を拐おうとした奴、ブロディーっつー男はこの島の権力者だ。島のブロンド鉱山の土地を買った貴族」

ブロディーはこの島に住む貴族で島の鉱山を所有する一族らしい。
島が栄えてからというものブロディーは我が物顔で町を練り歩き男を鉱山で強制的に働くように要求し女性は妻や愛人にして『コレクション』として拐う行為をしていた。
今も行われる『女狩り』に島の女も男も怯えているらしい。
出没する場所は決まっていたらしいが今日は今まで現れなかったカフェに来てしまったという予想外の事だった。
というのがローが知る情報で船員達の集めたものだと言い終える。

「私、そんな人に……」

「……お前には、もう」

ローが耐える様に撫でる手を止め、リーシャを抱き寄せてきた。
暖かくて安心するいつもの香水の香りに頬を胸元に押し当てる。

「もう……怯えさせたくねェんだ」

「ロー……」

不安げな声音でギュッと抱き締める彼に背中に腕を回す。
昔、彼氏に暴力を受け辛く、それを辛いと思わなくなる程麻痺をしていた日常から救い出してくれた海賊。
その時はまだ二人しか居なくて、グランドラインにも入ったばかりだったが船長と名乗るローは強くて頼りになって、全く知らない世界からリーシャを守ってくれた。
あの時の悪夢に似た光景や、彼氏が金属バッドを振り上げる姿を思い出す事すら背筋が凍りおぞましく思う。
だが、そんな事を思い出す暇すらない程ローは様々な世界を見せてくれた。

「お前を拐う奴も傷付ける奴も……俺が消す」

「……ありがとう、ロー……でも、私……ローと居られれば何も入らないから」

そう口にすれば彼はパッと体を離して息をつく暇もなく口を塞がれる。
キスはとても荒々しくて、けど求められていると実感出来た。

「くそ、今日は加減しねェ」

どこにスイッチがあるのかは分からないが、ローの眼に熱が籠るのが見えた。



疲れて眠っていると隣に居る半裸のローがゆるりと起き上がり徐にベッドから降りる。
どうしたのかと尋ねると敵のお出ましだと彼は立ち上がった。
リーシャにも立てと言うが下着のままだからそう易々と布団から出られない。

「布団を被ってろ」

「え、あ、うん」

そう言われ立ち上がると突如天井の電気が消え真っ暗になる。
バツンと鳴り、ガラスの割れる音が部屋に響く。

−−ガッシャアアアン!!

「きゃあー!?」

予想だにしていなかった音に、反射的にしゃがみ込むとグッと身体が引き寄せられ浮遊する感覚にローかと思えば、何かに押し込まれるような感覚に違うと直感し、本能が知らずの内に警告を鳴らし己の体が変化するのを感じた。
_18/21
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