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14
ホテルに泊まった翌日の朝、例に洩れずテンション低めに朝食を取る。

「ねむい……」

「食べたら好きなだけ寝てろ」

「……お土産買ってきてね、忘れないでね」

「分かった」

黙々と食べるローは同じ時間を過ごしたのに全く眠そうには見えなくて恨めしくなる。

「明日は絶対買い物行きたいから夜はふつーに早めに寝よ、ていうか寝るっ」

「お前次第だそれは」

ローのニヤついた悪どい笑みを変形させたくなる。

(でも惚れた弱味でまた流されそう……)

可愛いローなら歓迎だが意地悪ローはノーサンキューだ。

「ローは寝なくていーの?」

「……平気だ」

心配になり聞くとどこにツボったのか黒い尻尾が彼の尾骨から現れゆらりと揺れる。

(かわいいいい!照れてる〜っ)

ギャップが堪らない。
無愛想な顔をしているのにその尻尾は歓喜しているという矛盾に顔がにやける。

(はああ〜、堪らないいい)

悶えつつもローに尻尾が出ていると今回は特別に教えて上げると彼は凄い勢いで後ろを見て舌打ちした。
そしてこちらを見ると普通の人にとっては恐ろしく竦み上がるであろう眼光は照れ隠しにしか見えない。

(やだあ、やだ、照れてるううう)

内心息を荒くするとローはギリッと歯を鳴らす。

「明日は足腰が使いもんにならなくなると思え」

「えー!?明日は私も出歩きたいのに!」

「知るか。たっぷり可愛がってやるよ」

いつもは甘くて痺れて惚れ直してしまう言葉が今は一種の脅迫に聞こえ顔をひきつらせてしまう。
遠慮したくて後ろに下がる。

「"ROOM"……シャンブルズ」

「!……能力は反則っ」

文句を言うが彼が服の上から胸に触れたのでそれ以上抗うことは出来そうになかった。

「夫婦に遠慮は無用……だろ?」

後ろを向かなくても不適な笑みを浮かべているのだろうと簡単に想像出来た。










翌日、やはり動けなくてやっと買い物に行けたのは更に一日後だった。
恨めしくローの出ていく後ろ姿を見ていた昨日におさらばし久しく浴びていない太陽と外の空気を存分に吸う。
それを横で見ていた元凶は大袈裟だと口にするが誰のせいだとそっぽを向く。
それに気分良く「機嫌直せ」と言われても全く心に響かない。
無視を続けていると次の島でバイトをして良いと彼の口から告げられ怒りの感情がポロリと落ちて顔を向ける。

「今……もっかい言ってっ」

「次の島でバイトしてもいいぞ」

「に、二言はなし?ない?」

信じられない思いで確認してみても同じ言葉で言われたのでじわりと嬉しさに顔が弛んでいく。
幻聴でも嘘でもないバイトの許可にやった、と拳を胸の前で握る。

「喧嘩してもなしはなしねっ、機嫌悪いとかでもやっぱりダメとかも……」

「分かったから落ち着け」

「だってロー気分屋じゃん」

「今回は寛大に心を広くしてやる」

海賊の言う言葉としては些か違和感があるが身内の言葉なので偽りはないだろう。
ありがとうとお礼を言えば彼は素っ気なく「ああ」と返す。
別に興味がない訳でも無関心でもないと今なら理解出来るようになったリーシャは抱きついていいかと尋ねた。

「好きにしろ」

そんなぶっきらぼうな態度にくすくすと笑いながらその細身で筋肉質な胸にそっと手を当て頭を付ける。
チラッと窺い見たローの顔は外に出たばかりにしては赤みがさしていて内心可愛過ぎると悶えまくった。
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