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04
LAW-side


「銀行強盗ですって」

「物騒ねえ……」

ざわざわと先程から町が騒がしく、シャチの掴んだ情報によれば銀行に強盗が入りそのまま人質を取って立て込もっているらしい。
ペンギンからは、犯人は少人数らしく計画的な犯行らしいという見解。
おまけに余計な事まで仕入れてきたのでさっきからベポが小うるさい。

「なーキャプテン。リーシャが人質なんだ、大変なんだぞ。何とかしないと」

「海軍か自警団が勝手に助けに行くだろ。俺達が出る必要はねェ」

「そんなこと言っても海軍なんて弱いし頼りないだろっ。もしうっかり人質に何かあっても知らん顔するような奴らだし」

海軍も海賊にここまで言われてしまうなど世も末だが、新聞記者にここまで肩入れするベポもベポだ。
おまけにどことなく不吉な白熊の予感は当たりそうに思い、知らずの内に舌打ちをする。
しかしあのアホ面が泣く姿も想像してみれば案外面白いかもしれない。
考えているとベポが最後の人押しに助けようよ、とあまり言わない我が儘を必死に言うので、もう仕方がないとため息を溢した。

「面倒臭ェ……行くぞ」

「さすがキャプテン!」

後ろに居る船員達も喜びの声を上げながらローの後に続く。
彼女はどうやらいつの間にか自分の船の人間達を手懐けていたようだ。
やれやれと思いながらも刀を担ぎ直した。



***



もう三時間は拘束されていていい加減海軍くらいは突撃して欲しい。
イライラと不安に塗り潰された感情はいつまでも冷めていた。
こんなに氷の様な女だっただろうかと不思議に感じ、不安があるのに冷静になれるのはきっと周りの人がリーシャよりも怯えているからだと納得する。
歯を鳴らしすなり、必死に身体の震えを抑えようとしていたり、隠す事もせず震えていたり。
様々な反応にこれが普通なのだと今更ながら自分の内心の静かさに落ち込む。
慣れとは怖いもので、慣れてしまえば死はいつかくるのだと悟る。
悟れば怖さも慣れ、この程度の恐怖では泣き叫ぶ気は微塵も沸き上がらない。
それに二度三度と似たような体験をしたから飽きてしまう。
飽きてしまえばとことんどうでも良くなる。

(暇だ……この程度のニュースならどの新聞も記事にするから話題性もなんもないな)

人質な以上記事も書けなくなるかもしれないがやはり思う事は記事。
それとハートの海賊団。
あの極悪人の顔と悪評をついに記事に出来なかったと冗談を心の中で思い出す。

(シャチさんのお腹ダンスをもう一度見たい……ベポくんとイチゴ牛乳飲みたい……ローさんのあのすっごく難しい医学書をドミノにしたかった……ドミノ……ぷぷ)

密かに思い出し笑いをしていると犯人達が急にどよめき出す。
誰だ、と全員が叫び手に持つ銃を相手に向ける。

「どこから入った!?」

「お前らの空っぽな頭じゃ理解出来ねーよ。考えても無意味だ」

ローだった。
あまりの予想外の人物に脳が付いていかずあんぐりと口を開けていると彼が能力を瞬時に発動させ片はつく。
それでも唖然としているとローが人質に見逃してやるから行けと一声すれば、たちまち民間人は犯人よりも劣悪な印象を抱く海賊に恐れ、誰もが一目散に逃げる。

「いつまで口開けてるつもりだ」

話し掛けられハッと意識を戻すとローは犯人が得る筈だった大金の、お金が入った袋を肩に担いでいた。
もしかしてとその意図が脳裏に過ぎ、目が半分菅められる。

「えと、もしやそのお金の為に犯人を……」

「それ以外に何がある。勝者が敗者のものを貰うことは当然。だからこれは俺のだ」

ドヤッと顔を浮かべるローにそうですかと答えるしかない。
まあ彼は海賊で無法者なので犯罪行為は息をするのと同じような感覚なのだろう。
冷や汗と乾いた笑みを浮かべ自分も去ろうと足を動かすと身体がいつの間にかローの側にあった。
リーシャが居た所を見ると手足があったので犯人の一部と入れ換えたのかと理解する。
そして何故入れ換えたのか理解出来ないまま付いて来いと言われるが首を傾げた。
説明なしに付いていくのはと渋るが、彼にその眼光で睨まれたので仕方なく後に付く。
能力で移動したらしくいつの間にか彼の船の上で船員達も総出だ。
がやがやと騒がしくなる。
どうやら彼が持ち帰った大金がかなりの額らしく盛大に酒盛りしようぜと彼らは宴をし始めた。
そして、置き去りになる。
リーシャは、気持ちの整理の今だつかない状況についていけない。

(え?意味が)

「あ、いたいた!リーシャ!心配したんだぞ」

「ベポくん……ありがとう?」

「キャプテンタイミング良かっただろ?」

「え、あ、うん。退屈でうっかり暴れる寸前だった」

「え!?暴れたりなんてしたらリーシャ強盗に殺されるぞ!」

「私結構ヤバかった!?でもでも本当に暇で退屈で飽きてたしっ」

「ダメダメ!お前は弱いんだから!」

「がふ!」

ダメージを受けた。
吐血しそうだったが踏ん張っているとベポにどう見ても食べきれない量の料理が乗った皿を渡される。
食べきれないと言うのに場の雰囲気に酔ったのか聞く耳を持たれなかった。
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