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シャボンディ諸島に着いた麦藁海賊団に礼を言ってから故郷のサウスブルーに行く定期船の予定表を確認しに行こうと別れた。
このまま乗っていけ、なんて勧誘されたが、こんな小娘一人、耐えていける訳がないと己の限界を理解しているので苦笑しつつも丁寧に断った。
嬉しいし恥ずかしく思ったが、彼等との旅は存外楽しかったと言える。
またグランドラインを一周した際に会えるといいなあ、くらいには思っていた。
彼等は政府を敵に回してもこうして航海していけているので、運も味方なのだろう。
だから、一周なんて訳ない。
いつまでも手を振るルフィを止めるナミの声を聞きながら定期船乗り場に向かった。
楽しかったな、と気分良く笑っていると不意に声をかけられた。

「よォ、女」

「…………おうふー」

思わずヘンテコな単語を発してしまう。

「ただの酒場の女だと思ってりゃ、こんな所に何で居やがる」

そこに居たのは前に酒場で絡んできたキッドだった。
酒場に居た女なんて忘れてしまうと高を括っていただけに逃亡したくなる。

「………ノーコメンツ」

滑舌良く答えてからニコリと笑う。

「丁度良い、今から酒を飲みに行く予定だ。お前も来い」

「え?うわ、ちょっ!」

と言われて半ば強引に手を引かれて一つの酒場に連れ込まれる。

「酌とかでしたら出来ませんよ?まだ働いてませんし、びた一文にもならないならやりませんからね」

釘を二回指すと「肝が据わってやがる。前と反応が違うな」と返ってきたので「もう隠さなくても何となく気付いてらっしゃるかと思いまして」と述べた。
それに、此処に長居するつもりはなく島から出て行くつもりだ。
あまりダラダラしているとあの二人に見つかりそうで困る。
特にマイは情報に敏感でこちらの存在を少しでも洩らしたら直ぐにでも来そうだ。
そうならない為にはここからいち早く出なくてはならない。
急いでいるというのにキッドは隣に侍らしてくる。
この店にはどうやらその女達が居ないようで数々の海賊達が居た。
そこにマイ達が居ないかとヒヤヒヤしたが、幸いにも居なかったので息を付く。

「ご注文は」

「ビール」

船員達も同じように頼み去っていく定員。
此処は良く海賊達が通る島というだけあり、他の島に良くある光景の『怯え』が殆どない。
今怯えているのは悪名高きキッドの懸賞金の高さにおののいている周りの海賊達だろう。

「で、こんなとこで何してる」

「特にこれと言った理由はないです」

本当の事を言うとキッドは聞いてきた癖に詰まらなそうな顔をした。
聞いてこなかったらいいのに人の事を詮索するからだ。
ビールが運ばれてきてそれを豪快にグビグビと喉を鳴らして飲むとキッドは徐にニヤリと笑う。
何だろうと彼が違う場所に視線を向けていたのでそこへ顔を向けると良く新聞に乗っているもう一人のルーキー『スクラッチメン・アプー』が居た。
彼の安い挑発に乗り、そのまま特攻していくキッドに店の中は騒然となる。
もうこの様子ではキッドはそちらに夢中となるだろうと予感したリーシャはそそくさとその場から去った。
誰もこちらの事に気が回っていないらしくあっさりと出られた事にひっそりと息を吐く。
あまり騒ぎの中に居ると目立つ。
ただでさえこの島にはルーキーが人数多めで大集結しているのだし。
本当は取材して無双したいが、それも簡単に出来ない身の上となったので内心落ち込む。
ボンチャリを借りて浮遊感を楽しんでいると向こうから人が流れ込んでくる。
内容は「破壊僧が暴れている」「殺戮武人が戦っている」だ。
ソワソワとしてしまう。
前にキラーに助けてもらったとはいえ、こちらはただの一般人。
行く事も出来ない歯がゆさに溜め息を吐いた。
それに、全身の毛が逆立っている。
行かない方が良いと本能が発しているのでそれに従う事になった。

「定期船が二時間後………」

それまでひっそりと過ごすしかないな、とぼんやり予定を組み立てた。

「ヒューマンオークションは地雷だしな………」

如何にも海賊が好みそうな場所だ。

「でも、逆にマイ達は居ない可能性大か」

それならそこに向かいたい所だ。
何か重大な要素と欠落を見落としたままリーシャは会場へ向かった。
ここから近いのは一番グローブだ。
その道すがらどこかで見たオレンジ色が見えて、その人達はヒューマンオークションへ向かっているようだった。

「??………ああっ!」

最初は何故此処に居るのだろうと思ったが、そういう“展開″だと言うのをすっかり忘れていた。

「うーん。これは一悶着の予感」

リーシャはこの島でルフィ達が何を起こすのかというのを大まかに記憶しているが、詳細やその際に巻き込まれた人間の事等はあまり知らない。
覚えている台詞で最も脳裏に焼き付いている『Dは必ず嵐を呼ぶ』というもの。
誰が言っていたかはもうあやふやだ。
兎に角あそこには近寄らないに限る。

「よし、宿に引きこもろう」

歩き回るというのは性に合わない。

「んー………波乱が起こりそう」

段々不安になってきた。
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