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とある男side


人の弱みや欲望に付け込むのが得意な男は、王族に目を付けた。
この国の王子である男が恋に悩んでいるという会話を近くで聞いてこれは面白そうだと笑う。

「そこの王子様」

「誰だ貴様は」

「名乗る程の者じゃァありません」

「名乗れ。余はこの国の王子だ」

この男は面白いくらい使えて、尚且つ動かし易いと瞬時に見抜く。
今回はこいつに寄生してやろう。
寄生は物理的にとも言うし、精神的にとも言う。
別に特殊な能力とかではなく、金のなる木という扱い、認識だ。
恋は盲目、その意味を狡賢い男は良く分かっていた。

「良ければ。貴方様の恋のお相手のお話を聞かしてもらっても?私、こう見えて実は語りをやってましてねェ」

勿論真っ赤な大嘘。
けれど、この王子は真っ直ぐに信じた。

「そうか!うむ。この国に広められるならば余の語りをとくと聞くが良い」

そうして語り出した内容にこれはまた、とせせら笑いそうなりながらもいくつかの利用価値を見いだす。

「良ければその女の周りに居る女達。私が捌いて差し上げましょう」

「どういう意味だ?」

「なァに。ちっと王子様が恋い焦がれる方と沢山話せる時間を得られると言うまでの事。話したいでしょう?」

余程話せなかった事が悔しかったのか、王子は「そんな事が可能なのか!?」と興奮気味に聞いてくるので食い付いてきた事に内心ニタリと笑みを浮かべる。
王子の了承と報酬の話しを終える頃にやっと兵達がやってきたので口止めをしておく。
バレてもどうせこちらの事は一切分かるまい。
前金として受け取った指輪や装飾品の数々を握って男はほくそ笑んだ。
それから数刻。

「なんだあの男!?」

男は予定にも計画にもなかった事態に油汗をかいていた。
脅すか襲うか話すか足止めするかと考えていた女の所へ向かうと話に居なかった筈の異性、男が居た。
知り合いのようで話していたが、路地裏で完璧に気配を消していたと言うのに何故かこちらを見た男の尋常ならざる気配と殺気に背筋から、身体から危険信号の汗、戸惑い、死の一文字、震えが止まらない。
もしあの場に少しでも姿を現したり、変な動きをしたら首が飛ぶのではないかとさえ錯覚する。
あの刀を持った男の刀身で切られるのを想像しただけで発狂してしまいそうだった。
いや、まだチャンスはある。
あの男さえ居なければ隙はある筈だ。
男は戦慄した本当の意味を理解出来ないまま無謀にもそう思ってしまった。
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