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王国へ王子の国があるという島に着くと一目散に船から降りたマイの元へ来た。
そして、マイに「送ってくれて感謝する」と言う。
それにマイは笑顔で黒い言葉を吐く。

「貴方達を送ると決めたのは私ではなくリーシャさんです。お礼なら彼女に言うのが筋なのでは?」

如何にもな言葉に王子は顔を悲しそうに気まずそうに歪める。
お気に入りのマイに咎められるのがプライドを刺激し、こちらを見る王子は遅いお礼をヨーコとリーシャに言う。

「たく、言われたからって渋々って何様?」

「全くです。こんな人とは早くお別れしたいです」

王子達から少し離れた場所で三人で集まると二人が不機嫌に言い合う。
兵達は嬉しそうにお礼を言ってくれたのでリーシャ的には満足である。
誠意を見せて貰えたので王子の対応にははなから期待等してなかった。
五歳児の子供と思えば何ら思わない。
腹が立つ事はあるけれど大人としての品を求めていないので心持ち楽だ。
二人が憤るのに気付かない鈍感王子は嬉しそうにこちらへやってきてマイに話しかけてくる。
全く興味などないという態度を貫いているのに、惚れている彼は構わず己の道を進む。

「余の殿へ招待したい」

「いいえ。私達は急いでる、忙しい身なのでお断りします」

「そ、そう言うな。沢山ご馳走や褒美を用意するぞ?それに、何でもくれてやろうぞ?」

ヤバい、王子が引き留めるのに必死だ。
マイの眉間のシワも心なしか増えてきている。
これ以上男の株を落とすつもりなのかと王子に言いたくなるが、馬鹿にされていると思って怒鳴られるのも面倒だったので言わずに見ていた。
その内痺れを切らしたマイが「さようなら」と言って王子に背を向ける。
それに慌てて付いてくる王子に兵が止めに掛かる。
王子は「離せ!」と鬱陶しそうに兵達を叱るが子供が喚いているようにしか見えない。

「王子。城では今頃王様やお妃様が心配しておられますよ」

「余はもう子供ではない!」

「いえ、子供のようです。さ、お城へ帰りましょう」

側近らしき男は王子にそう促すとこちらを向いて笑顔でお世話になりました、と言い添える。
それにいいえと返して言うと彼等は王子を連れて去っていく。

「はー!やーっとお守りから解放されたっ」

ヨーコが言う言葉に珍しく同意したリーシャ。

「取り敢えず宿を予約しに行こう」

もう頭を悩ませていた王子は居なくなったのでさっさと先に進みたい。
サクサクと宿の場所を現地の人間に聞いてからそこへ向かう。
ホテルが良いと一応進言してみたが、二人がお金は無駄に出来ないと前回の島のホテル生活で何やら思ったらしく反対してくる。

「でも、安全面とかさ」

「三人で一部屋借りれば万事解決でしょ」

ヨーコの得意げな顔にうっと言葉に窮する。
よもやリーダーの発言が弱くなろうとは。
その分、二人が利口になってきていると思えばいいのだが、利口になり過ぎてもいいのだろうか。
でも……と言葉を探す気力も削げて言う事もなく二人の意向のままに宿を三人一部屋で取った。
そのまま二人はショッピングをすると言うので、リーシャは断って二人だけ行かせた。
今日はショッピングをする気分ではなかったのだ。
二人は分かったと言って若いからか元気に出ていく。
二人程の活力はない自分に内心若いっていいなあ、と年寄り臭い思考になってしまう。
そこまで言う程歳ではないが、高校生と同じ行動を取れる自信があまりないくらいは実感する。
近くを散歩でもしてバイトを探そうかと思い、自称王子を相手にした疲労を背負ったまま宿から出た。
二人には深夜は出歩かないように言ってあるし、夕日が出る時間までには帰ってくるように言い聞かせてあるので心配はしていない。
フラフラと外へ出ると路地裏をソッと覗いて見た。
こういう所でここの治安の良さ具合を比べていたりする。
治安が良いとゴミはあまり転がっていなかったりするので案外分かり易い。
王子が統括する島だからか、不明たがそこそこ良いようだ。
それにしてもベタな程教育が間違った王子に民間人はどう思っているのだろうかと気になった。
やはり噂や信頼は確かめておきたいのが記者の性というもの。
ウズウズする気持ちを押し込んで路地裏に少し足を踏み入れる。
人は少ない、けれど居るには居た。
夜の蝶も居るし、それを得たい男も居る。
どの島もそこは対して変わらない。

「っ!きゃあむぐっ」

いきなり何かに捕まり路地の道に引き込まれる。
男の乱暴目的だと瞬時に理解して手に噛みつこうとするが、男の手の力がとても強くて上手く抗えない。
青くなる、という程の顔にはなっていないがどうしようと対策を考える。

「良い女だ。どうだ?十万ベリーで」

リーシャを夜の女だと勘違いしている事よりも、その破格な値段に目を見開く。
相場は詳しく知らないが、もっと低いと思うのだが。

「って!」

この手に彫ってある刺青は見覚えがある。
有りすぎて頭痛がしてきた。
考えて呆れている間に男はリーシャのお尻に手を当てて揉んでくる。

「ほんと、何してるんですか……ローさん」

目を冷たくするのも有りだが、兎に角今はローの行動の真意が知りたい。
ローはこちらの声にクスクスと笑う。

「で?十万ベリーが嫌なら二十万ならどうだ?」

と、言いながらお尻をまだ撫でている。
何故撫でるのだろう、イエスもノーも言っていないのに。
しかもどさくさに紛れて、下から服の中に手を入れてきた。
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