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26
LAW-side


涙でグシャグシャな女二人を船に送り、一つの酒場に単独で向かう。
ギィと開いた場所は廃れた小さな場所だった。
一つの席に一人の女が店主にお酒を頼むのが見えて、その辿々(たどたど)しい声音に眉根を寄せる。

「こんな場所で酒盛りとは随分な記者だな」

問いかけると女は虚ろな目でこちらを見た。
前に酔った所を見た事があるが、今はそれよりも泥酔い状態に近い。

「うーん?トローさんじゃないですかあ」

「何だトローさんって」

呂律も上手く回ってない。

「トラファルガー・ロー。略してえ、トローさんでえすうう」

真っ赤な顔に額がヒクツく。
相手は酔っぱらいなのだ、まともに取り合う事など無意味。
隣にかけて横を向くと切なげに顔を俯かせる女。

(色気出せば出るんじゃねェか)

内心女の仕草に本能が疼きかけるが、今はそんな事を考えるべきではない。
何というか、己の世話焼き思考に呆れる。
本能のままに貪ればよいではないかと二つの良心と邪な心がせめぎ合う。

(今はまだ時期じゃねェ)

弱っている女に付け込む隙を狙う理由があると、狙わない理由もある。
今ものにしてもローに執着するとは思えない。

「どうしてあの二人が俺の船に乗りたいと言ってきたか分かるか」

「知りたくない!トローのバカ!あっちいけえっ」

感情の荒ぶる女に少しイラッとしたが抑える。

「あいつらはお前を守れる力が欲しいと言った」

「私、守られたくない。守ってなんて一言も言ってない。望んでない」

リーシャはアルコールを飲んでからブツブツと言う。
何をそんなに拒否するのだろう。
彼女はよく壁を作る。
容易く壊せるようなものではない。

「お前が生きようとしていないのが二人にも透けて見えたんだろう。あいつらはお前に生きて欲しがってる」

「ふざんなあ。私が死のうが生きようが私の勝手だつーの!あ」

ローが飲もうとしたアルコールを取り上げて飲んだら彼女は怒った。
勝手に飲むなと言われたが、いくら何でも飲み過ぎなのは分かり切っていたので無視をした。

「こいつの酒代幾らだ」

マスターとやらに聞くと二千ベリーと言われたのでポケットから出してそれをマスターの前に置く。

「トローのバカ!私はまだ飲み終わってなーい!」

リーシャが騒ぐのを聞きながら腕を掴んで外へ連れ出す。
痛いだの誘拐だの変態だの襲われるだのと煩いので一目に付かない裏へ移動する。

「望み通り襲ってやるよ」

アルコールを飲んだからか胸が焼ける感覚と気分が高揚するのを感じた。
たった一杯で酔ったなどと言える狡い己の性格を褒めたい。
それを理由に彼女の唇を奪って貪れるならば何と言われようとも本望だ。

「あの子達はまだあんなに幼いのに、海賊船に乗せるなんて……このロリコン!ロリコン!ロリコンっ」

ロリコンと連呼する煩い女の唇に己のものを合わせて塞ぐ。
ロリコンではない。
彼女達を見ても食指が動かないし、既に部下と認識しているから手なんて出す事も有り得ないのだ。

「ふぶぐぐう!」

器用なのか不器用なのかは分からないが、彼女はキスしているのに喋ろうとしている。
このまま酔いを理由に担いで宿へ行ってこの身体を隅々まで知りたい。
欲望が葛藤とかち合う。

「酷い酷い……ローさんは酷い人だ」

「海賊が酷くて何が悪い」

リーシャは静かに涙を流した。

「てめェの事を疎かにしておいて。他人の事を優先させるお前が悪ィ。あんな嘘を付いておいて酒場で落ち込むなら無視でもして何も言わなきゃ良かったんだ」

「だって、だってえ!あの二人は此処に居ちゃいけないんだもん!帰らないといけないんだもんっ」

リーシャの言った意味が全く理解出来なかったのはローが知識不足なわけではないだろう。
どういう意味だと聞くとその目が微睡んでいるのが見えて、寝る気だなと脱力した。
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