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取り敢えず宿に帰りたかったのでそこへ案内するとローは「安っぽいな」と失礼な発言をしてズカズカと中へ入る。
受け付けにここに泊まると言いつけてお金を渡すと颯爽とこちらへ来てお前の部屋はどこだと聞いて来るので首を振った。

「や、ていうか言うわけないでしょ」

「あ"?」

「すいません私調子に乗りました、向こうの部屋ですすいませんー!」

慌てて案内すると部屋の前に来たローはつまらなそうに部屋へ入り簡素だと皮肉った。
確かに閑散としているが雨風が凌げる場所で寝られるのは幸せなのだ。
文句を言うローを放置して荷物をテーブルに乗せるも改めて疑問を聞く。

「ここに泊まると言ってましたけど、ホテルに泊まる筈だったんじゃないんですか?良かったんですか?」

「ただのきまぐれだ。別に構わねェ」

どうでもいいと言うローだが、やはりいつもよりも何か可笑しいとそればかりが胸につっかえる。
モソモソと荷物を解いていればどの部屋に泊まるんだと何気なく聞く。

「何言ってんだ、ここに泊まるに決まってんだろ」

鼻で笑われた、リーシャは固まった。

「いやいやいやいや!可笑しいですそれ!私なんも聞いてないですけど!てか他に空いてる部屋行って下さいっ」

「めんどい。今言った。断る」

全てを単調に切ったローは我が家のようにベッドへと向かいシレッと横になる。
その行動に唖然としていればハッと我に帰り慌ててローが寝転んでいるベッドへと寄り抗議をした。

「何してるんです!?そこに寝られたら私が寝れないんですけど……!」

そう述べればローはあっさり隣を叩いてここに寝ればいいだろとケロリと言い放つ。
何でそんなに軽く言えるんだと頭が痛くなる。

「今さら何恥ずかしがってんだよ。もう二人だけで寝た仲だろ」

「それ誰にも言わないで下さい!凄く誤解を招く言い方ですっ、ただ隣で就寝しただけなんですよ」

「ごちゃごちゃうるせェ」

煩わしげに言うとローはリーシャの腕を引っ張り膝をベッドへと乗り上げさせると上半身を起き上がらせた彼は靴を勝手に脱がせてリーシャを組み敷いた。

「つべこべ言わずこうやって素直に横になればいいんだよ」

してやったり顔のローが得意気に笑うのを見たリーシャは身体を気まずげに揺らす。
こんな風に上から見下ろされるのは落ち着かない。

「ん〜と、分かりましたよぉ……」

恥ずかしくなるのを我慢して相手から目を反らすと男の指先が顎を摘まみ目を無理矢理合わせさせられ、自ずと黄色がかった茶色の瞳に覗き込まれてしまう。

「お前は不器用だな」

「どういう、」

意味を図りかねない事を言われ聞こうとすれば唇を落としてきた相手に先を遮られた。

「は、」

ローの息遣いが聞こえ、色っぽい吐息に頬がジリリと熱くなるのを感じた。





マイとヨーコにログが溜まったと言い別れの挨拶をして一人旅と再びなった船を出航させた。
二人が見送るのを見ながら幸せになるんだよ、と小さく呟く。

「もしかしたら、帰れる時がくるかもしれないし」

彼女達はいきなり現れたのだから、いきなり帰ることだって大いにありうる。
そう願ってもう見ないように前へと移動した。
食堂の仕事も人間関係も上手くいっているようだったのでこうして安心して海へと戻れるのだ。
たまには電話をして欲しいと頼まれたが、していいものかと迷う。
未練という鎖を二人に付けたくなかった。





それから数日船を進めて少しだけログが指すのとは別の近くの島へ寄り食べるものを調達とアルバイトの為に停泊。
ついでに先の島の情報を調べておくのも頭に入れとく。
酒場の店主というのは、かなり情報を持っている。
何かを頼むのを対価に話を聞き出すのだ。
アルコールは今回は控えておいてマスターから良い事を聞く。
聞き終えて一休みすると、そろそろ出ようかと椅子から降りて出口へ向かうと擦れ違った男性の身体から何かが落ちるのが視界の端に見えてそれを認識するとすいませんと声を落とした持ち主へとかける。

「財布落としましたよ」

軽く言い財布を拾ってその人に渡す。
男性はロングヘヤーを揺らしてすまねェと言うと仲間らしき人たちの居るテーブルへと向かう。
もう一度出口へと向かうと、今度は赤い人がリーシャを呼び止めた。
なぜ分かるのかというと、酒場にいる時から目立っていたし落とし物をした人が向かったテーブルにその目立つ人がいたから。
更に、関わるつもりのなかった声に呼び止められて自分の心情は過呼吸寸前なくらい心臓がドキドキと恋とは比べ物にならない程嫌な方向へと鳴っている。
恐る恐る振り返ると不適な笑みをこさえた泣く子も黙るキッド海賊団船長『ユースタス・"キャプテン"・キッド』その人が居た。

(やんばい……やっばい……ピンチだこれ)

かつてない程己の機嫌センサーが警告音をバンバン鳴らしている。
関わるべきでない。
最早本能だこれは。
どうするべきか悩んだ一秒で決まった。

「は、はい、何か……?」

怯えているアピールをして早々に興味を失せさせる作戦に出た。
皆様は小説を読んだりドラマやアニメを見た時に一度でもこう思った事はないだろうか?

『目立つ事をしなきゃ逃げられたのに』

と−−−。

今正にそんな状況を打破するべく行動している。
ユースタス・キッドに興味を向けさせないように怯えたフリをすれば平凡で何の面白みもない女だと思われてすぐに解放されるだろうという計算だ。
先に言っておくと、サイフを拾った人がまさかまさかのキッド海賊団だと知らなかった。
これは誠の真実である。
なので、声を掛けられる予感を覚えたのですぐに店を出ようと動いたのだが、予感は嫌な方向に的中して呼び止められてしまったのだ。
ブリキのようにギコギコと頭を後ろに向けて怯えた目をしつつ返事を返す。
そうして相手の出方を見やると男は心底悪どい笑みをたさえてこちらを見ていた。
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