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それから二人の必需品を買ったりして過ごした。
夕暮れに町が染まる頃、二人にはもう働く店であって、住む家の食堂へと帰るよう言い、店まで見送る。
そして、ネオン街へと赴くと面接を受けておいた酒場へと足を動かす。
二人のお金もついでに稼いでおこうと思いながら、今回は一番大きな場所を選んだ。
多分ロー達もそこに来る可能性があるが、仕方ないと諦め、オーナーと話して服を着替えヘルプをする。
せっせと懸命に働いているといらっしゃいませ、というオーナーの声が聞こえ振り返ると黄色い声がここにまで聞こえて、来たのか……と、遠い目をした。
黄色い声を出される客なんて早々居ない。
これまでの経験で直ぐに察知したリーシャはまぁいいか、と隣に居る客のお酒を注ぐ。
「トラファルガー・ローさんにお目にかかれるなんて、私、感動しましたっ」
「船員さん達も男前ねぇ」
「そうでもないっす!」
テンション高く返事をしたのはシャチだろう。
相変わらず女が好きだと苦笑し、ヨーコの時は泣いていたのに……と見直した事を少し後悔する。
「つーかさ、聞いてくれよっ。今日……船から女が誰も居なくなったんだ〜!」
酔っぱらいと早くも化した船員達が店の女達に愚痴り始めた。
「居なくなった?それは……逃げられたのぉ?」
「違くてよォ、ここに住むから降りたわけ!……一気に女が……ううう!」
「あいつも居なくて……コックがショボくれてたの見たぞ、俺」
きっとマイの事だろう。
お客さんに氷を入れつつ話しを盗み聞きする。
別に盗み聞きしなくても聞こえているので盗んでいるのとはまた違うが。
ローはどういう顔をしているのか分からない。
なんせ、隣のテーブルだから顔をそこへ向ければバレる可能性があるからだ。
「この店に新しく入った女は居るか」
やっとローの声が聞こえたと思ったら、いきなりそんな事を聞くので、どういうつもりで問いかけたのかを直ぐに察した。
接客していた一人が何の躊躇もなく、そういえば居たわね、と口にした為に内心あーあ、と額を叩きたくなる。
(確実にバレた……)
探す気がないのか女性の一言にローはそうか、と淡白な返事を返した。
それだけの事なので、何故聞いたんだと言いたくなる。
(まぁ詮索されなきゃどっちでもいいか)
上がる時間になり席を立つと、お客に別れを伝えてロッカールームへと急いだ。
予約している宿へと早く帰りたい気持ちに駆られながら着替えを済ませると裏口から出る。
「あいつらの働き場所は見つかったのか」
「!?……っ、ローさんか、びっくりした……はい、見つかりましたよ。それにしても待ち伏せなんて……もしかして隣に居た事に気付いてました?」
「最初はもしかしたらと思ってたが立ち上がる時に確証した」
「もう最後ら辺ですね……」
特に隠すつもりはなかったのだが。
かと言ってわざわざ名乗り出るのも可笑しな話なので声をかけなかった。
それに、酒と女を目当てに来ているのに自分がしゃしゃり出るのはと思う。
ローは行くぞ、と踵を返して歩き出す。
どこへと問うと、お前が泊まるホテルだと言われギョッとする。
「え、困ります!私、宿を取ってるんでそっちに行きます」
「……いいから付いて来い」
有無を言わせない声に抵抗する。
ローの向いている方向と逆にある宿へと進む。
「待て」
「なんか今日のローさん変ですよ?いつもはこんな強引にやらないのに」
「……別に他意はない。兎に角、今からお前は俺達の泊まるホテルに泊まれ」
「やですって。どうしたんですか本当に」
強引な態度に困惑を感じていると、ローは突然腕を掴んできて「宿まで連れていけ」と上から目線で命令してきた。