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18
船に居候になっている時からの日課になっているのが、女子オンリーの寝る前の報告会――もとい、女子会トーク。
マイはコックさんが仕事終わりにくれるデザートは美味しかったや、今日も相変わらず厨房は楽しかった等の話。
ヨーコも毎日飽きもせず釣りや船員達とのゲームをした事を話す。
そして、毎日必ず二人がリーシャに聞きたがる事があった。

「で、トラファルガー・ローとはどうなってんのよ」

「今日は何か話しましたか?」

「朝に廊下であって以来その後すれ違ってもないです…………何か薄々感じているんですけど……二人ともローさんと私の関係について勘違いしてません?」

どう聞いてもリーシャとローが出来ていると思っている。
確かにこの二人からすればローとは浅くもなく凄く深い仲ではないが、それなりに付き合いが長いからこそ、そういう男女の関係を勘ぐってしまうのだろう。

「ローさんとは、絶対にないから」

こんな事を言うが、ローからは絶対にないという感触はなかったので、自分が思う分にはと内心付け足す。
それに、

(彼はどこかに闇を背負ってる)

あんなにミステリアスだという雰囲気もリーシャにとっては、別の鬱々とした空気にしか思えない。
一世紀を生きた勘、とでも言うのか。
とにかく、自身と同じくローも何かを背負っているのかもと前々から薄々感付いてはいた。

「貴女達は私の事よりも自分達の事を心配して下さい。元の世界に帰る方法と次の島で暮らす術を」

「………………」

「………………」

二人にそういうと一気に暗い顔をした。
大体トリップという体験をした人が最初に会った人間と場所に安らぎを感じるのは何ら不思議ではないと分かっている。
そりゃあ右も左も分からない時に導いてくれる存在程安心出来るものはない。
だが、彼女達は忘れている。

「私は万能ではないです。死ぬときは死ぬ。強くもない。貴女達を守れない。ですから、この船に居るよりは陸で暮らすのが何よりも安全なんです」

勿論陸で暮らしていても危険はあるが船の上に比べれば格段に少ない。
それを分かっていて、こんな場所に長い間、過ごさせるつもりは毛頭なかった。

「少し夜風に当たってきます」

こんな空気にしてしまった事を後ろめたくなり、二人に考えさせる時間を作る事も考えてこの部屋を出た。
廊下に出て外へ向かえば生ぬるい風が顔に触れる。
それから暫くして、後ろから足音が聞こえてきたので自分と同じく甲板に誰か来たのかと変わらず海を眺めた。
すると、隣に並んだ気配にちらりと横を向くと予想外にロー自身だった。
驚いたが、彼の船なのだからどこに居ても不思議ではないと思い直し無言で前を向く。
先日彼に抱き締められてキスされたことを不意に思い出し、途端に居辛く感じた。
こっそり退場しようと踵を返す。

「そんな風に反応されたら期待するぞ……くくく」

からかいを大いに含んだ言葉にビクリと肩が揺れ、そこは静かにスルーして欲しかったと思いつつ恨めしく溜め息をつく。

「普通は何もなかった様に振る舞うものだと思うんですけど」

飽きれと恥ずかしさでそう言いつつ手摺の縁に場所を戻せば隣で今だ楽しげに笑うローは意地悪な顔でこちらを向く。
こうして向き合うとつい目を逸らしたくなる衝動に駆られる。
少し顎を引いて視線を逸らせば彼が逸らすな、と頬に触れてきて目を強制的に合わせる様に動かす。
それに唸り声が出ると真剣な眼とかち合う。
ごくりと無意識に喉が鳴り、そのアンバーの色にも近い視線に吸い込まれそうに感じた。
ボーッとしていると徐々にローの顔が狭まっている事に気付きバッと手を自分の口に被せる。
その行動にローはジト目で塞ぐなと言う。

「無理でひゅ」

「じゃあ俺が退かしてやる」

無理と言うのはそっちの意味じゃないと言う前にローがリーシャの手をグググ、と力を入れて剥がそうとするのでこちらも負けじと力を居れるのだが、一億の賞金首なのは伊達ではなく呆気なく口から手が退かされた。
その手を捕まれもう片方があると行動する前に瞬時に口付けを強行される。
素早すぎる行動に何も出来ないまま二回目になる行為を迎えてしまう。
最初は虚無感が大きくて無防備に受け入れてしまったが今となってはローとはこういう事をしてはいけないのではないかと己に問いかけた。
相手はラフテルを目指し、何かを抱えている。
そして、リーシャは宛もない船旅の単なる一般人。
彼の夢を阻害してしまわり兼ねない自分の存在を自身が邪魔な人間だと認識した。
だから、ローと特別な関係になるのは駄目だと考えたのだ。
その気持ちとは逆の事をしてくるローにはちゃんとこの事を伝えなくてはいけない。
けれど、今は口付けられているので話す事も自由に体を動かす事も出来ないのでされるがまま。

「ローさ、」

合間に唇を離す時に言おうとすれば間もなしに再度塞がれ言わない様に誘導される。
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