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16
ローに彼女達の事は一切言わずただの無計画が祟っただけの事だと言うと彼は明らかに納得していない顔を浮かべたが、深く言及はされなかった。

「次の島に着くまでこの船からは下ろさねェ」

やはり軟禁を告げられた。
しかし、今回は食料がないのでかなり助かったというものだ。
喜んでという意味で頷くとローは最後に頬を撫でてきて労るように顔を辛そうにさせた、かのように一瞬だけ見えたが見間違いだろう。
そう無理矢理思い、ローの手が離れるともう行っても良いかと聞けば彼はああ、と言ってくれたので部屋を出た。
心臓の辺りが少し速く波打つのを感じ息を整えると、彼女等と彼等が居る甲板へ戻る。
扉を開けると既に酔っ払いの余興が始まっており、踊る者や歌う者、お酒を飲み続けている船員達に、明日は二日酔いに悩まされるだろうと先に合掌しておく。
マイとヨーコがこちらに気付き平気だったかと物凄く心配され笑いながら大丈夫だと伝えれば安堵した顔が浮かぶ。

「あたし、あのトラファルガー・ローって人好きだけど、実物前にすると威圧感に耐えられない」

「私も、なんというか、近寄りがたいです……」

二人が両脇でコソッと伝えてくる言葉に腹を抱えて大笑いしたくなる。
確かに普段は恐らく残忍な所業をしているのだろうが、リーシャは自分に対して何かをされたことはなく、実害もない。
どれだけ悪態をついても、キレたりするが、その刃物で血を見せられた事などはなかった。
それは当然ながら彼の能力の特徴だ。

「怖がるのも今のうちだから体験しとくだけでも儲けもんだよ」

海賊には危機感を持って接しなければいけない。
絶対安全でも善良でもないが、恐ろしい海賊と比べればこの海賊団は比較的に無駄な事はしないのだ。
無闇に人を襲わないし恩義にも固いのかは定かではないが助けてくれる。
二人の怖がっている雰囲気に新鮮な気持ちで眺めながら扉からローが出てくるのが見えた。
先程の卑猥染みた行為をジワジワと思い出してしまい動揺をしてしまっている心の内を納めようと深呼吸する。

「今日から島に着くまでコイツらをこの船に乗せる」

「え!?」

「何ですって!?」

マイとヨーコと船員達がどよめき、騒然となるが、ローは毅然とした様子で口を閉じて目をすがめる。

「このバカは間抜けな事に食料がない船でグランドラインを進もうとしてやがる。分かったな」

然も当然という口調で船員達の同意を求め、彼らはローが大好きなので反論の声など聞いたことはない。
だから今回も反論がないと思いきやシャチが質問した。

「部屋はどーすんすか?」

「三人に一つだ」

その台詞に船員達はホッとした顔になり、彼女達もまだ戸惑っていながらも安堵していた。
三人一組ならお互いの不安を少しでも緩和出来るだろうという彼なりの気遣いだと、二人は気付けるだろうかと少し楽しく感じた。
宴も終わりになり甲板に船員達の屍もどきが転がり、辺りはイビキなどの音である意味静かではない。
そんなこんなで部屋に早々と去るマイとヨーコはリーシャに張り付き、宛がわれた部屋へと向かう。
ひたりと歩く度に軋む木の廊下に、珍しさからか目を仕切りに動かす二人の少女に初々しさを感じつつ部屋に誘導した。
部屋に入ると一人の時より二倍はある部屋で広々とした空間があった。
こんな部屋もあったのかと思い、二人に布団等を渡し、寝巻きとして用意されたツナギを着るように言い付けると水を飲みに行こうと部屋を出る。
その際に二人に必死に早く帰ってくるように言われ、可愛いと思いながら頷く。
パタンと二人が居る部屋を後にするとそこから目線を横に動かした所にローが立っていて驚いた。

「どうかされましたかローさん」

「二日酔いの薬を渡しとく」

「今回はそこまで飲んでませんって」

苦笑していると予備用に持っとけと付け足され突き返す事も出来ないので受けとる。

「明日からは食えなかった分を補うくらい食いまくれ」

「無茶苦茶なんですけどっ!?」

そんなことをしてしまえば吐く。

「目の下に隈」

「はは、今さら何を……チャームポイントの自慢ですか?」

「……お前の事だ」

バツンとおでこを指先で軽く小突かれあうっ、と間の抜けた声が洩れる。
しかし、やはり目敏い男の目は誤魔化せなかったかと白旗を降った。

「ローさんには隠し事、難しいですね」

「見張りを一人でこなしてたのか」

「彼女達の命を優先してますから」

そう告げると死の外科医と呼ばれている男の表情が悔しげに歪められるのが見えたが、それでもリーシャは知らぬフリをした。
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