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仕方無く釣り針に幼虫を刺し、それを海に投げ込み竿をヨーコに渡そうとすると彼女は嫌な物を見るように手を見る。

「今虫触ったじゃん。そんなもの触れない」

「……!……では今晩のご飯は貴女だけ無しになります」

「は?……マイ、あたしのご飯抜きにする?」

「……っ、リーシャさんが言うなら、する!」

二人の間に何があったのかは知らないがマイはヨーコを怖がっている。
昔は易々と言うことを聞いていたのだろマイの拒絶の言葉にヨーコは面白くないと顔を強張らせ、乱暴に竿を取った。
恐らくこのグランドラインに来てからマイは少し変わったのかもしれない。
初めて会った時に比べると明るくなったし、発言もよくするようになった。

(て、感心してる場合じゃないんだよねー)

この三人の船旅にはもっと差し迫った問題が出てきた。

「てことで、今この船にある食料がそこを尽きかけているので沢山魚を釣って下さいねー」

リーシャもマイとヨーコの間に座り、再び釣りを開始する。
このままだと飢え死にしてしまう。
空腹のお腹を擦りながら無になろうと目を閉じた瞬間、ぶくりと音が聞こえ、二人の騒ぐ声で目を開ける。

「リーシャさん!何か海の中から!」

「な、何なのよ!?」

目の前には海の一部が盛り上がり、徐々にその姿が露になる。
リーシャはそれが何か知っていたので慌てる二人を見て内心楽しく思った。
いつも一人で何かをするので三人になるとこうも船旅が楽しくなるのだと、初めて感じる感覚。
ザパァン、と水飛沫を上げながら全貌を現したものに二人の目は点になっている。

「へ、ふ、船?」

「え!?このマークあたし知ってる!!」

ヨーコは話題のルーキーも知っていたか、と内心嫌な予感を覚えながら溜め息を付くと船の扉が開く。
小さな船との差のせいで中から姿見せる時は絶対見上げなくてはいけなく、相手は下から見るので毎回首が痛くなる。
それを三人でやっていると尚更可笑しな図になっているだろう。
コツリコツリと靴音を響かせる間に二人は生唾を飲み込む。
緊張を孕んだ空気に苦笑していると不意に響くテノールの声。

「誰だそいつらは」

「私の後輩です」

そう述べれば端正な顔を疑問に歪める死の外科医。

「ほ、ほん、もの」

隣にいるヨーコが感激染みた声で発するのを聞き、ファンか、と察した。
しかし、マイはリーシャとローを交互に見ていたので彼の事は全く知らないらしい。
ヨーコはかなりの知識を持ってそうだと思い、いつかそれが不運となるか幸となるか。
考え込んでいると白熊のベポがひょっこりと現れ手を振ってきた。

「リーシャー!……あれ?知らない顔が居る!」

それと同時に梯子が目の前に降りてきたので登る。
二人を見ると不安げにこちらを見ていたので、少し待っているように言う。
甲板に上がると船員達も居て少し驚いた。

「お揃いで何かあるんですか?」

ハテナマークを頭上に浮かべながら訊ねると船員達はニヤニヤと顔を崩壊させながら自慢げに言う。

「「「船長の懸賞金が一億になったんだ!!」」」

「…………遂(つい)にかあ」

予想外の言葉に暫し固まるとローに向き直りおめでとうございます、と言った。

「なんかリアクションが薄くないか」

ペンギンに言われ、唸るが特に理由もないので気にしないで下さい、と言う。
そしてローがあの女達は何なんだと言うので男しか居ない船員達が盛大に反応する。

「ちょ、だから私の後輩なんですってば!その飢えた目を彼女達に向けないで下さい!」

船員等に言うと自分等の破顔した顔に気付いたのか手を頬に当てる狼達。
じゃないと、彼女達をここに連れてこないと言えば「盛らないから!」と必死な男達に不安を覚える。

「えっとー、彼女達をここに呼んでも良いですか?」

「構わねェ」

ローが了承すると更に盛り上がる船。
但し二人が上がりたくないと言えば上がらないと付け足しておき、船を降りる。
船に足を着けるとマイとヨーコが詰め寄ってきた。

「ヨーコから聞きました!ここ、海賊船なんですよね!」

「そんな所に行って平気だったのあんた!?」

「え、うん。無事だよ?……それに顔見知りだから平気。だから二人も良ければ船に来ない?船長も良いって言ってるから」

説明すると二人は迷う素振りを見せ、マイは海賊船に戸惑い、ヨーコはローに会いたいようで、どちらも困惑していた。

「リーシャさん、私から離れないで欲しいです」

「そんなに怖いなら無理に」

「い、いいえ!平気です!」

「あ、あたしもあんた達が行くなら行く!」

苦笑してじゃあ行こうかということで、船に三人でお邪魔する事になる。
甲板へ上がれば船員等が宴の用意をしているのが見えた。
ローは端で胡座をかいてそれを眺めていて、ベポは料理を運んでいる。
三人に気が付いた男達はこちらを見てそれぞれ反応して、彼女達はリーシャの後ろで縮こまっていた。
ヨーコも普段の態度とは違い、やはりまだ子供なんだと頬が緩む。

「お、女だ」

「ほんとーだ、マジだ」

「約束忘れてますよ」

リーシャが咎めるように言えば、彼らはハッと宴の準備をし始める。
改めてローの所へ向かうとヨーコがいきなり!?と慌てていた。

「ローさん、この子達が後輩です」

予(あらかじ)め彼女達にはボロを出さないようにと、リーシャの後輩として振る舞い、設定しておくように説明したのでスムーズに紹介が終わる。
それをローは無言で聞き、そうか、と一言言うだけ。
やけにあっさりした返事にこちらが肩透かしを食らう。

「女の子が揃ってるのに……ウハウハしないんですか?」

「するかアホ。大体女には困ってねェ」

「じゃあ、この子達には絶対手を出さないように皆にも言って下さいね!有り得ないとは思いますけど」

「くくく、そうだな」

先程の盛らない発言を思い出したのかローは笑う。
それを惚けたように見るヨーコに問題は起こさないでくれ、と祈った。
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