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「ちょっ〜〜〜!!?」

「診察するくれェで一々恥ずかしがるんじゃねェ」

「そ、んなの、む、り!」

恥ずかしさで頭がパニックになっているから上手く呂律が回らない。
やっと絞り出せた言葉にローはあっさりと体に聴診器を当てるとサッと服を下げた。
それに息を付くとジリジリとベッドの後ろへ下がる。

「ローさんはデリカシーが足りません」

「医者がデリカシーなんて気にしてたら治すもんも治せねェだろうが、馬鹿だなお前は」

さもこっちが正論を言ってますよという顔をするローにリーシャは若い人よりも老人の方が良いと前々から思っている。
やはり年が近ければ羞恥心も激しく抵抗感を感じてしまう。
リーシャはむくれながら服を手直しすると彼がこちらを見詰め上から下まで見る。

「外傷は特にねェ。外に出ても許す」

「は、はあ」

こちらが呆けてしまう程脈絡のない話をする相手にベッドから地へ足を付ける。
扉へ向かおうとするとローが呼び止めるので振り返ると、人の悪い笑みを浮かべていた。

「借金、プラス五千ベリー追加しておくからな」

「えええええ」

今までの治療代と救助代を前々から言われているのだが、前に現金を渡そうとしたらいらないと突き返され、これは借りだと言われ、リーシャが渋々ローの言うことを聞いていたりする理由である。止む無く強制連行されても借りがあるだろうと言う脅し文句は恒例になっていた。
内心不幸だと思いながら廊下に出て窓を見ると船は潜水中ではなかったので甲板へ出る。
周りを見回すと数人のクルーが色々とやっていた。
釣りをしていたベポに自分の愛用している船が何処か訊ねると向こうにある、と裏側を指すのでそこへ向かうと、無傷でそこにあった事に安堵する。
それにしても、いつも停めている場所を毎回よく発見出来るなと不思議に思う。
大きな船の隣になんか止めれば木っ端微塵になる可能性があるので出来るだけ離れた場所に停めている。

(もうボロボロ……)

そろそろ船を替え時かと頭を悩ませ、船を動かし潜水艦を繋ぐロープを解いた。





ゆらゆら、と漂うように空を見ていた。

「うーん、暇だなぁ」

恐らくその言葉が自分の不幸を呼んだのかもしれないと、後から思う事を今は知らない。





−−ドサッ

「わあ!?」

いきなり船が揺れ、同時に何かが後ろで転がる音がした。
端に掴まり揺れが収まると恐る恐る後ろを向く。

「え、人?……人!?」

突然現れた女の子はよく見てみると"制服"を来ている。

「これは……まさか」

背中に冷や汗が伝うのを感じた。



突然現れた人が起きるとここはどこ〜から典型的な「そんなの有り得ない」と言い始めた。
一応聞かれた事に答えたのでグランドラインだとか海賊が沢山居る時代だとか言えば、案の定彼女は錯乱したので徐々に確信していく。

「あの……私、信じて貰えるとは思わないですけど……異世界から来たんだと思います」

震える体躯にゆったりと肘をついていた手を解く。
そして、そうなんですかと一言告げれば彼女はキョトンとした顔で信じてくれるんですかと言う。

「信じるとか信じないは関係ないです。けど貴女を次の島まで送る事くらいはできます。ですから宜(よろ)しくお願いします」

坦々と言えば彼女は落胆したように肩を落とし、分かりましたと承諾した。
これ以上の厄介な事は背負えない。
グランドラインに訳ありの一般人を連れ回す事等自分には不可能だ。
出来る事は唯一無事に送り届けることくらいだ。
異世界から来て戸惑う子をこれ以上戸惑わせたくない。

「私はリーシャ。貴女は?」

「私は、マイです」

「そうですか、マイさん。ここはとても危険な海です。危機感を持って生活して下さいね」

「は、はい……」

それから五日が経過した頃のマイの順応性は目からウロコだった。

「リーシャさん、魚釣れました!」

「リーシャさん、お洗濯出来ました!」

「リーシャさん、ご飯出来ましたよ!」

そう、言うなればこれは……

「嫁っ」

マイに聞こえない様に叫ぶ。
到れり尽くせりの状況に悶えたくなるのも致し方ない。
お風呂に入ろうと部屋の外に居るマイへ今行く!と伝え扉を開けた。

−−ドサッ

「痛!!」

目の前で何かが落ちる音がして高めの声に前を凝視するとまた、制服を身に付ける女の子。
マイは自身を最初高校生だと言って、これは制服だと言っていたのでまだ十八歳らしい。
だとするとこの子も。
そして二人目の異世界の来訪者に目眩がした。

「ヨーコ……?」

「!、あんた、もしかして……マイ?」

気絶しそうになると目の前で繰り広げられる光景にハッと意識を戻す。
お互いが信じられないという顔をしていて凝視しあっている。

「っ、えー!こほん、二人ともこっち向いて!」

このまま放置しておくわけにもいかず、注目をこちらに向けさせようと声を出す。

「誰?」

「この船の持ち主です」

分かり易く言うと次はマイにもやった、この世界についての情報を口にするとやはりその子も有り得ないと発した。
有り得ないも何も、と苦笑するとマイと同じく次の島までと言う約束で乗せますと先に言っておく。
そして、二日経過した後のヨーコは正直ダメな子なのだと思う。

「貴女も釣りをして下さい」

「気持ち悪い」

ヨーコが目で示すのは箱に入った幼虫だ。
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