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12
ベポを追うにしても、もう俊敏な熊には追い付けそうはなくて、仕方なく町に戻る。
歩いていると近くで破裂音が聞こえ、またもや不幸が、と嘆く。

「子供が中に居るぞー!」

そんな叫ばれた内容に、野次馬に混ざり、見てみれば二階に小さな男の子がわんわんと泣いていた。
もう入り口も大人が入れるスペースはなく救出は不可能に思え、周りの人達は諦めの表情をする。
リーシャは子供を一直線に見ると近くにあった、まだ水の入っているバケツを掴み、徐に上から被った。

「おい!何してる!?」

こちらに気が付いた男性が来る前に建物へと入る。
熱くて目を開けるのも難しいが、兎に角階段を探すとそこへ駆け上って子供の泣き声がする方へ走った。
扉を体当たりで押し入り、泣きじゃくる子供を抱え、元来た道を行く。
入り口に近付けば、前に木製の柱か何かが落ちてきた。
子供を下ろし、その隙間を通るように言えばその子は怯えながらも入り口へ向かう。
木片を上げようとしても上がらず炎に囲まれる。

(まさか火炙りで死ぬとは……)

今回は流石に諦めるしかなくて座り込む。
近くで何かが崩れ落ちる音がして、火ではなく物に押し潰される可能性も出来た。








「おい、何座り込んでる」

「!……ローさん!どうしてここに?」

突如後ろから声が聞こえ振り向くと、いつもと何ら変わらない、けれども額に青筋を浮かべたローがいた。

「近くを通りかかったら女が炎に突っ込んでいったと聞こえたもんで、来てみりゃあやっぱりお前だったわけだ」

呆れた溜め息を吐くローにもう常習犯だからと言われた様で申し訳なく思う。
確かに不運で不幸に合い易いし、悪運が強い訳でもない。
そんな自分はこの先の航海にすら出る力もないのだ。
もうベポに故郷に帰る話は聞いているのだろうか。
そんな事を考えていると腕を上から掴まれる。

「行くぞ」

「この前、もう助けなくていいって言ったじゃないですか……自分で何とかしますからローさんは先に脱出してくださいよ……」

俯きながら言い終えるとローは舌打ちしリーシャを無理矢理立たせる。

「ですから、っ!?」

もう一度言いかけた言葉はお腹の強い衝撃によって続かなかった。
視界がぼやけ、一瞬で意識がブラックアウトする。

「お前のそういう所が俺は嫌いだ」








目が覚めるとローの船の医務室に居た。
横を向くと本を読む男が居て、目を見開いた。
どうしてこんなにも構ってくるのだろうと頭を掠め、火事現場に置いていかなかったあの時の暴挙に自分でも溜め息をつく。

(自分で何とかするとか絶対に無理なのに)

あの時、彼は怒っていた。
こんな所で何を座っている、と聞かれ連れ出そうとしている女がどうにも出来ない筈なのに自力で脱出出来る訳がないと見破られていて。
殴られたお腹がまだ重く痛む。

「考え事か」

「はい、少し」

本を読んでいたペンギンがそれを閉じると徐に立ち上がる。

「あっ、ペンギンさん。ローさんに私の事を聞いていますか?」

「ああ……火事の現場に居たとだけ」

それを聞いて救出を拒否した事は言っていないのだと意外に思う。
ペンギンは黙り混んだリーシャの頭を軽く撫で、部屋を静かに去った。
恐らくローに起きた事を伝えに言ったのだろう。
今はローとは顔を会わせ辛く、どう話そうかと悩む。
その間にも扉の向こう側からこちらに近付く足音に、反射的に布団を翻す。

「…………おい」

(寝たフリだけでもしてみよ)

布団を目一杯被っているので今の状態は端から見れば白い塊であろう。
呼吸を定期的にし、あたかも寝ているように偽装工作をするが、話し掛けてきたのに返事を返してこなかったからか、少し乱暴に布団を引き剥がしてきた。
ローにしては感情的な行動だと思いつつ目は開けない。

「俺の前で狸寝入りたァ良い度胸だ。バラされたくなかったらさっさと起きろ」

「くっ、脅しは卑怯ですよ……」

バレていることに、早々に諦め、目を開けて起き上がる。
軽く恨めしさに目をすがめるが本人は聴診器を首に掛けて服を脱ぐように言ってきた。

「や、やですよ!恥ずかしくて出来ません」

「お前の体を見ても何も思うわけねーだろ。それにこれは命令だ。前にも言ったが医者の言うことは聞け。さもねェとお仕置きするぞ」

「だから力で捩じ伏せるのは反則ですよっ」

ひええ、と泣く泣く服を胸の下ギリギリまで上げればローは呆れた顔で服を掴み、こっちの譲れる境界線をグッと押し上げた。
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