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お宝を回収出来なかったから残りの飲み物を飲むタイムを続ける事にした。
今回はローも最初から参加していてコーヒーを飲んでいる。
コーヒーは彼女達が用意したわけではなく、船員達に用意させたものだ。
わざわざさせるだなんてまるで忠犬のようだと思ったけれど口に出さない。
健気であるその人達の姿を見ていた。
彼がここに来るまで特に紅一点がごねていた。
敵の船ですよと王下七武海になった事を前提とした言い方に内心もう少し隠せば良いのにと苦笑を浮かべる。
ローはコーヒーを飲んでいるが二人の部下は彼を訝しげに見ていた。
海賊がこんなところで呑気に飲んでいるなんて、とでも思っているのだろう。
簡単に想像できたのはリーシャも思ったからだ。
というか、何を目的にしてここへ来たのか本当に分からなくて困る。
二人もそろそろ聞きたくて堪らないという雰囲気で代表として彼に問う。

「何のご用でこの船へ来たのか聞かせて下さい。トラファルガー・ローさん」

そろそろと顔を上げてあまり減っていない飲み物をテーブルへ置いた。
聞かれた男は飲み口から唇を離しニヤッと口角を漸くかと言わんばかりに上げる。
待ってたのか。

「フフッ、特に………と言いたいところだが、優秀なお前に頼みたい事があってな。船を突撃させたのはよくある事故だったわけだが。お前に拒否権は恐らく無い。何故なら上司にとっくに掛け合ってて話しは通してある」

「………………………」

絶句と同時に机の奥に閉まってある退職届を出す時が来たのかと神妙に顔が遠くなる。
ガタッと席を立ち、部屋の机から退職届を取り出すとガチャ!と電伝虫に掛ける。
かけた相手は麦わらを追う海兵と有名な海兵だ。
彼なら相談に乗ってくれる筈。

「もしもし、私だけれど」

『どうした?珍しいな』

「どうしたって?私ね海兵を止めようと思っているんだけど、良い就職先紹介して」

彼とは飲み仲間だから気安い話し方でいく。
彼は真剣なこちらの声音で本気だと分かってくれた上でどうした?と聞いてくれた。
数分の間に窶れた心を潤してくれる。
スモーカーはカッコいい性格をしているから癒されるな。

『そうか、ローの』

訳知り顔で言う彼もローには目を光らせている。
また電話をすると言い終わった
ガチャンと受話器を置くと息を吐いて寝室に向かう。
陸に行って速達で退職届を出すしか今はないと我慢。
寝室へ向かうのはローの相手は彼女達がするだろうし、昼寝をしたくなったからだ。
スモーカーに話したら何だか安心して急に眠たくなってきた。
スモーカーが海兵で居てくれたから、マイとヨーコも支えてくれたからここまで来れたが、ローに利用される為に海兵になったんじゃないと思ってかなり自分は怒っているらしい。
どかどかと音を立てているのを聞いていると心と体が感情に追い付いていないので、困惑さえも抱いている。
色々あって整理したい。

「おい」

「!」

サッと戦闘体勢になって相手を睨み付ける。
ローと分かっていたからこそ、そういう態度でいた。

「話しかけないで」

「何を怒ってる」

「怒っているのは分かるのにそれ以外は分からないの?」

目をキッとさせて上から見ると彼は眉間にシワを寄せてこちらへ寄ってきた。
話しかけるなと言ったから寄ってきたのだろうか。
傍まで来ると彼は何も言わずにこちらを眺めてお互いの瞳を見つめ合うかのようになった。
そういうつもりはないのだけれど。

「お前のそういうところは存外悪くねェ」

真面目な顔、無表情で宣った台詞。
赤面をするまでもなく、ぽかん、となる。
悪くねェ、って何。

「その顔も」

ローは手を伸ばしてきてビクッとなる。
触られると思い目を閉じてしまい、途中で駄目だ目を閉じたら、と思い目を開けると耳へ生暖かな風、彼の吐息が掛かる。
男の身に付けられている香水の香りに体が固くなった。
誰かに抱き締められるだなんてローくらいしか居ない上に男性に耐性がそんなに無いので余裕を持てない。

「離して」

「嫌だ」

「な、んでっ!?」

大声を出したのに上手く声が発せたいのに、出来なくて悔しさに唇を噛む。
武骨な手先が唇を慈しむ様にさわさわと触れられて遊ばれる。
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