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- ナノ -
09
エレスティンとマイの睨み合いが終わらない中、カツカツと音を立てて遅い登場をした男。
遅い、本当に激遅だ。
遅刻である。
足止めさせておいた癖に。

「何をやってるエレス」

「船長、この海兵が挑発してきたので返しておきました」

ローは周りを見渡してリーシャが居ない事に直ぐに気付く。

「あいつはどこに居る?」

尋ねた相手はヨーコ。
しかし、ヨーコはさあ?と惚けて言おうとしない。

「なあに?攻撃するの?」

敵対行為は契約違反と暗に示されてローは無表情でそれを悟り、カツカツとまた靴を響かせて海兵船へ行こうとする。
それを阻むのは当然二人だ。

「通すと思ってる?」

「リーシャさんには近付けさせない」

通らせないように対峙する。
ローは二人くらいあしらうことなど苦ではないが、七武海の称号を得る事で出しづらい事態になっていることは自覚していた。

「おーい、ティータイム始めよう」

中から声が聞こえて二人はやれやれと武器を持ったまま扉へ向かい中から鍵を掛けた。
錠などローには無意味だがローしかいけない。
ティータイムということはこの状況をほったらかしにしてお茶会をするのだと推測される。
仕方ないと船員達に各自解散を伝えて船の中へ行く。
途中エレスティンが自分もと志願したが剣呑になるのは分かっているので連れていけない。
適当な理由を付けて置いていく。
船の艦内に入ると前に見た時と何も変わっていない内装。
中型船なので探し回らずとも大体場所は把握出来る。
察してその場所へ迷い無く進むと話し声が聞こえてやはり此処かと扉を開けた。

「あ、来た」

(本当に来ちゃったな)

まさか、女子だらけのお茶会に顔を出そうとはローも物好きなのだなと思う。
エレスティンがああだからお茶会というものを知らない可能性もある。
好奇心から訪れたとしても致し方ないだろう。

「トラファルガーさん。どの様な用件で?」

これといったものは無さそうだが、体裁上聞いておく。

「こんな時に茶を飲むのは何故かと思ってな」

理由はあったようだ。

「トラファルガーさんは七武海。だからお茶を飲んでもなんら問題はありませんしねー」

コクリとこちらに構わず飲む仕草。
肝が据わっているのか、単にアホなだけなのか。
三者から見れば間抜けだろう。

「トラファルガーさんは自分の船に戻って本でもお読みになられては?」

百パーセント追い出しに掛かっている台詞にローも口角を上げた。
漸くこっちの意図を汲んでくれるか。
優雅にお茶をしているとマイがピクッと反応して壁を見る。

「リーシャさん三時の方向に敵船と思われる船が来てます」

マイの感にはいつも助けられている。
疑う要素もなく戦う為に立ち上がる。
陶器が割れないように片しておく。
リーシャも戦闘に参加する為に武器庫から手軽な物を持ってくる。
ローは相変わらずそこに立っていた。

「俺がやっても良いんだぜ?」

「ふふ。七武海の特権を安売りは止めておいた方が良いですよ」

取り立てホヤホヤな特権を使いたい気持ちは分かるけれど。
微笑ましい顔で外へ向かうとローが何やら怒った声音で何が言いたいと言ってくる。
何か間違った事でも言ってしまったのかと思い失敗失敗、と苦笑。

「来ました」

マイが冷静に見ている方向には一隻の海賊旗が。
見ているだけは流石に出来なくて、攻撃と砲撃の準備をして迎え撃つ。
少しずつ近付いてくる敵対勢力に向かって大砲を打ち込む。
普通は威嚇のために斜めに打ち込んだりしたりという事をするのだが、そんな余裕をこちらは持ち合わせていないので遠慮など無く、一片の躊躇も無く真ん中に当ててマストをへし折る。

「戦い方がモロ海賊かっ」

ハートの船員からの叫び。
いえいえ、海賊なんて滅びよという海軍の名前を背負ってますから。

「という体のいい名目」

どこからか変な言葉が聞こえてきたが気にせず打ち込んでいく。
わはははは、沈めよ沈めー。
高笑い三唱。
こちらへ少しでも乗り込まれれば定員オーバーにより手狭になり戦いにくくなる。
そう、内の子達が言ってた。
だから、仕方ないもの。

「うわ、えげつない」

そうして白旗を上げる海賊船。
この船は海軍から出されるお金で改良した部分を考えるだけで、一つの武器である。
そうでもしないと大きなガレオン船に負けてしまう。

「あーあ、今回はお宝取れなかったわね」

「回収は大切な収入源なのに残念ですね」

ヨーコとマイが本当に残念そうに船を見ている。

「おいおいおいおい。お前らそこら辺に居る奴よりも海賊みてェな台詞言ってんぜ!」

船員達がんな馬鹿なとでも言いたげに突っ込む。
律儀で真面目な子達だなぁ。
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