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「#エロ」のBL小説を読む
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- ナノ -
08
ダメだもうダメだ。
リーシャは今世紀最大のカオスに苛まれていた。

『トラファルガー・ロー。七武海の名に連なる!』

今朝の新聞にあった記事だ。
そんなバナナと朝食に入っていたバナナを懇々と見ながら現実逃避していたが、現実逃避から離れると頭を抱える事になる。
今まで避けてきたアレやコレやがこれからは避けられなくなるのか。
悶々と自問自答になってくるとマイの励ます声音に顔を上げる。

「大丈夫です!七武海側も海兵に手を出すのは契約違反ですからっ」

そりゃあそうかもしれないが、七人のうちそれを守っている海賊は何人なのだろうと疑う程の疑心暗鬼を覚えるくらいあの海賊達は信用出来ない。
海軍の人達もその契約を純粋に守る海賊だと真に信じている人は極僅かであろう。

「海軍本部行きたくなーい」

「まぁ、今回は難しいと連絡しておいて行くのを中止に出来はしますけどね」

「それでもいつか行かなくちゃいけないのよねっ」

ヨーコが思っていた事を躊躇無く述べるのを聞いてそうなんだよねー、と遠い目をする。
しかし、今よりはローが本部を歩いている確率は下がる訳だ。
それを狙っての回避。
ヨーコの言う機会とは数ヶ月後にある祝賀会だ。
海軍の本部が完全に新世界へ移行したもののパーティーらしい。
新七武海ならば出席する可能性が大。

「あーあーあー。何かぜーんぶ投げ出したい!」

首を何度もフルフルさせて現実逃避に走る。
ローだけを避けるのはそれ程難しくはない。
何せ、目立つのは相手であり、一度壁の花になるか早々に帰るかを選べば話すこともなきにあらず。
必死に面倒からの逃避を練っているとドシーン!と振動と心音に持っていたバナナが危うく手から落ちるところだ。
何事だと憤りマイとヨーコもご飯をテーブルに置いて直ちに外へ向かう。
リーシャもうっかりバナナを手に持ったまま向かうと扉へ行く。
外に繋がる最後の扉を二人に続いて開ければ曇り空があった。
天気は良さそうではないが、雨よりかはマシ。

(あーやだやだ。よりにもよって何で今日会っちゃうかなーっ!)

正に今話していた男の船と船員が船へ飛び移っているのが見えた。
隠れてボイスレコーダー電伝虫を起動させておく。
丁度マイが彼らに七武海と海軍の誓約について尋ね、それを確信にして述べ初めた。
海軍に手出ししてはいけない。
それを聞いた船員達は別に戦いに来た訳じゃないとケタケタ笑い声を響かせる。

「では、貴方達は何をしに来たので?まさか遊びにきたとでも言い張るつもりですか?」

「その、まさかよ」

真ん中に立つ紅一点が口を開く。

「それを信じられると?馬鹿なことを言われるとは舐められたものですね。貴方達の独断、とは言わせませんよ?」

マイの鋭い眼はハート全体を貫く。
そのピリピリした空気は船員達を固くするには十分だった。
強いてはリーシャも空気に飲まれていたのだ。

「ミキサーで刻んだ苺………苺ぉ」

何かで気を紛らわせようと明日のメニューを唱える。

「奇遇ね、あたしもメロンをミキサーに」

ヨーコもメニューを披露してきた。
メロンって豪華過ぎやしないか?
公務員の決算はそんなに潤っていないから明日は使わないように見張っておかないと。
現実より遠くの想像を描き現実を見ない術は上手くいった。
ぽやぽやと頭の中に想像を浮かべ、考えぬようにしていた事を考えない。

「ざーんねんっ。諦めろよ〜」

船員達の楽観視且つ他人事な声音に心底イラついた。
そもそも何をしに来たのか。
戦う意志も敵対との抗戦の意志もないと言うのなら、余計にこの船へ来た意味も汲み取れやしない。
警戒するかは、ローが居るから意味を成さないのだが。
捕虜的な立ち位置になる前にマイを落ち着かせていつもの参謀系ポジションになってもらう。

「この船から兎に角今は立ち退かせて下さい」

「分かった分かった」

マイに言われて船員達に向かって犬を払う仕草をした。
さぁ帰った帰った、と。

「船長に足止めしとけって言われてっからな」

「帰れねーんだ」

「ごめんな?」

マイがキッと彼らを睨みつけるのは直ぐだ。

「称号剥奪ですね。頭の角を打ってお亡くなりになって下さい」

それに対して返してくるのは女船員だ。

「貴女達こそ死ぬべきだと。そもそも海兵にプライドなど無意味でしょうに」

バチバチと火花が見えそうなくらい陰険な雰囲気が漂っている。
彼女達をやはり引き合わせるべきではなかった。
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