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07
折角の休日だったのに。
平謝りの体勢で是非戦闘に参加して欲しいと頼まれているこの状況に溜息を吐きたくなったが、何とか押し込める。
シャボンディ諸島と呼ばれる島にて遊ぶ為に満喫していた折りの事であった。
どことなくザワザワしている島の中は楽しいが、どこか、と言われると分からないザワツきにこれが賑わっている島の空気なのかと思い込んでいた自分を殴りたい。
後から聞いた話だが、今この島には十一人のルーキーが居ると。
そんなの居るなら船で大人しく引きこもってましたが何か。
どうやらそのルーキーの一部が天竜人を人質にして立てこもっているらしい。
正直、己が訳に立てることなどないのだけれど。
そう言ったのだが、それでも数が欲しいらしいので渋々後に付いていく。

「ルーキーって億越え?」

傍に居る海兵に問うと彼はハイと応えて心底帰りたくなる。
部下であるマイとヨーコは諸事情で今此処には居ない。
それがとても心細くて焦らす為に時間を稼いでいたが、焦りを感じているのか海兵は全く察してくれずにこうして連れて行かれる。
行きたくないなー帰りたいなーと駄々を捏ねたくなるのをグッと我慢。
そもそも勝てる見込みは軍を率いても高い確率は引けないと察している。
はははは、と、内心遠い目で笑う。
乾いた声音は更に己の敗北する未来を暗示しているように聞こえてくる。
ルーキーと言っても実力はあるだろう。
新世界目前の海を渡ったのだから、推して知るべしである。

「ロズワード一家を早く解放せんかっ。そうは思いませんか?メイス大佐」

「は、はあ………………(帰りたい)」

天竜人を好きな訳でないから積極的に助けたいとは思わない。
指揮官に話しかけられ曖昧に濁す。
男は頷き満足すると拡声器を手に持ち中に居る凶悪犯達に対して強気な態度で言うものだから顔面は蒼白だ。
吐きそう。
交渉人のやり方としては最悪な物言い。
挑発して中に居るロズワード一家とやらに危害を加えたらどう責任を取るのだろうかこの人。
激しく距離を取りたい。
数分も経たぬ内に中からルーキーが出てきて頭を抱えたくなった。
海兵達がルーキーの海賊で億越えの船長が、と騒ぐ。

「三億………………私詰んだ」

戦わず遺書を書いた方が遙かに時間が無駄にならないだろう。
うだうだしている間に海兵達がワーワーと突撃していく。
大砲を撃ち終えた後、だというのに良く生身で受けて立とうと思ったなと素直に感心。

「嗚呼、負ける」

未来をさらりと言えるくらい達観していた。

「うわあああー!」

「腕が」

ローが居るという事実が一番見たくない現実である。
海兵の首があちらの手元に言ってしまう。
ああいうホラー映像あるよね。

「なんだあれ!?」

海兵達の叫びに沿って顔を向けるとガチャガチャと何かが集まりーーあれは金属だ。
そう思うとグンッとクレイモアが引かれる。
頑張って奮闘し耐えていると鉄の塊が迫る。

「うっわわわ!?」

リーシャもなりふり構ってなどいられずに逃げる。
しかし、追いつかれる。
波のように身体が押し上げられ海老の如く背中が反ると青いコントラストな空。
これを人は現実逃避という。

「シャンブルズ」

ーーヒュッ

視界が安定している事に気付き首の圧迫に呻く。
どうやら首根っこを捕まれているらしい。

「よお、大佐」

「ご機嫌よう、色男さん」

取り敢えず現実逃避の延長戦を述べれば彼はなんだよそれ、と笑う。
楽しそうですこと。
こちらは死にていなのに。

「こんなとこで何やってる。お前そんなに死にたがってたか?」

「要請されて仕方、なく……………」

若干怒っている様にも見える。
しかし、仕事なのだこれは。

「痛い!ぐ!」

アイアンクローをされ顔面が!と手を掴む。
その時、耳に名が聞こえてきて嗚呼!と感動する。

「リーシャさんを離せ〜!」

「ま、マイ〜」

涙声でヒーロー登場に胸をときめかせる。
しかし、マイの武器をローが受ける前にガキンと防がれた。
恐らくエレスティンだろう。
エレスティンとはマイが戦う頻度が高く、ヨーコはシャチやペンギンとが多い。

「八千万の賞金首が、邪魔です」

吐き捨てる台詞が海兵らしくて格好いい。
しかし、ヨーコが来ない。
電伝虫を探そうとすると胸の谷間に変な事が起きる。
これはーー触られている。
絶句しているとローが今日はパットでも入れているのかと言い、電伝虫が入っている胸の中を思い出してうわ、と顔をしかめた。

「変態!変態変態へんた、むぐ!」

口を手で抑えられて更に人質っぽくなる。
本当は慎ましい谷間の中に入れたくなかったが二人の部下が無理矢理詰めてきたので違和感を激しく感じながら過ごしていたのであった。

「何だ電伝虫か」

心底詰まらなそうに胸から引っこ抜いたそれをまたスポッと胸へ戻す。
挟んでいる感覚はやはり変な慣れない感覚でソワソワする。
ローは手を離すとやってくる海兵を能力で斬っていく。

「リーシャ〜!」

「ヨーコー!!助けて〜!」

ヨーコもやっと来てくれた。
助けを求める為に一歩足を前に出すと次はシャチとベポが躍り出てきたのでハッとなる。
スッと鎖を出すと二人に向けて放つ。
当たる事はなかったが他の海兵の攻撃も加えられて武力を分散出来た。
それにしても、理不尽な対峙になった。
マイはエレスティン、ヨーコはペンギン達。
そしてリーシャは。

「億越えの賞金首…………無理…………」

青くなる顔色。
当然だ、実力が違いすぎていつも弄ばれているのに。
吐きそうになるこの状況下で最悪な思いを激しく覚えながら遠い目をする。
いっそローの能力で斬られて放置させれば色々問題なく今日が終わるのでないかと名案が脳裏に浮かぶ。
真面目に戦わないのはガチで斬られて重傷を負いたくない為。
こんなに苦労しているのにやってられるかと言える程勝ち目のない戦。

「どうした。いつもみてェに掛かってこいよ」

相手が挑発してくるがどうせ向かっていっても三枚から何枚にでも斬られて身動きが出来なくなる未来は安易に予想出来た。
誰が行くものか。

「なら、こっちから行く」

「!」

ビュオオと風を切って飛んでくるロー単体。
体当たりを受けてドッと吹き飛ぶ身体に重みがあり、地面に倒れる。
二人の部下の悲鳴が遠くから聞こえるが。
恐らく手加減された。
それ程痛くないのに吹っ飛ぶのは驚いたが、受け身の取り方を付け焼き刃ながらに教えてもらっていたので何とかなった。
横向けに倒れた体躯は転がったが立て直す。
ムクッと足を折り曲げて立つ。
泣きたい、大声で泣きたい。
身の丈に合わない地位と追いつく見込みのない実力でこんな事に巻き込まれている。

「ふうーーはぁあああ」

途方のない言葉が全て溜息に変わり止めどない理不尽さに屍の顔へとなる。

「二人共!」

「はい!」

二人分の返事を聞いてローを見る事無く宣言する。

「帰ろう」

「「え!?」」

部下の他にもハートの団員の驚き声も聞こえたような気もするが気にならなかった。

「いやいや、お前何言ってんの」

誰かの引き止める声が聞こえるがマイとヨーコに目配せしてマイが煙玉を手に持つ。
ハートの奴らは何度も見ているから、これを何たるか知っている表情で本当に帰るのかよと言いたげに見ていた。
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