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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -
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雪、雪と言えば雪だるま、雪合戦。
突然何を宣うのかって?
それはーー。

ーーグシャ!グシャ!ベシャ!

「ぎゃああ!」

三つの玉が当たると痛い早さで飛んできてヒットしてしまう。
悲鳴を上げてそれらを受けた身体がなし崩しに倒れ、悲痛な叫びが周りを反響させる。

「リーシャさん!よくも!リーシャさんの仇!」

「死んでないよっ!?」

倒れた形のまま言うが、この騒動の中でその発言は誰の耳にも届かない。
こうやってまた一つ忘れられていくわけだ。
雪の降る冬島でポスターが大々的に貼られているのを見つけた事から全ては始まる。
リーシャは初め、雪合戦大会なる物に参加する予定もなく、マイとヨーコとアリサだけに参加するよう言い含めた。
それが予定でなくなったのは飛び入りで参加してきたハートの海賊団のせいだ。
ローは居ないが人数が向こう側の方が多く不利。
であるから、数合わせで共に出て欲しいと懇願され今に至る。

「冷たい、冷たいよう」

かじかむ手をさする。
太陽が出ていても気温はマイナスなので手があっという間に冷たくなっていく。

(早く退場したい)

終わらせて船へ戻って暖まりたい。
そこに至るまでの経緯や怠慢がクルリクルリと回る。

ーーボカッ

「ほが!?」

立ち上がって直ぐに放下される雪玉。
さらりとした雪だが当てられると皮の薄い顔なんて冷たい。

「ぺ!ぺっ!」

口に入りソレを吐き出す。

「マイ、行くよ!」

いつの間にか雪の壁が幾つか出来ていて、盾にして雪玉を防ぎ攻防している。
リーシャは攻防している子達に意識が向かないようにと良い的になっているピエロ。
まー、別に攻撃タイプじゃないから良いんだけどねー。
今は不特定多数の参加者と乱戦式でそこから勝ち上がっていくとトーナメント式になる。
ハートの海賊達は一目散にこちらを狙ってきた。
読もうと思えば読めたのでこうして的になっているわけだ。

「リーシャの仇!」

ヨーコが向かってくる雪兵に向かって投げつける。
それは当たる事無く避けられ彼女は悔しそうに玉を作成していく。
もう一チーム居たのだが最初の時点でハートの先鋭達により撃破され残っていない。
わざと一体一のマッチにしたとしか思えず、可哀想にと倒されたチームに合掌した。
それにしても、と試合の合間に盛り上がっている観客を見ると、結構な数。
この大会は有名らしいし、商品が豪華らしいので皆気合いが入るというものなのだろう。

ーーバスン!

「ひぃん!」

「嬉しそうだな〜おいいぃ」

アリサも的として嬉々として身体を差し出して錯乱組になっている。
雪玉を当てられる度にMが刺激されるのだろう。
彼女は放っておこう、勝手に幸せに過ごす。

「リーシャー、おおい」

「?ーー何かな?」

ベポが手を振ってくるので振り返す。
こんなにのほほんとしていて良いのだろうかと相手の心配をしていると各場から雪玉が投げられてぶつけられる。
痛いし冷たいし早く終われ!

「タイムアウト!引き分け」 

願いが通じたのか審判が鼻を赤くしながら旗を上げる。
会場を見ていた観客がざわざわキャアキャアと楽しげに盛り上がるので皆手を掲げて挨拶。
もう手も動かしたくない程なのでリーシャはしないでおく。
愛想なぞ振りまいても無意味だ。
大会が終わるが引き分けなので勝ち進む。
また明後日やるのでそのウマを書いた紙を渡されてげんなりとなる。
もうやりたくないよ〜。

「リーシャさん。躯平気ですか?痛みます?」

「筋肉痛ヤバい」

昼食を食べながらの問いにぐう、と唸る。
明後日までに万全を期すのは難しそうだ。
島での昼食に温かなスープをチビチビと飲んでいると変な言葉が聞こえてきた。

「貧弱ね」

なんじゃそら、と言いたくなる程理不尽なものにその出所へ顔を向けると男女混合の人達がこちらを馬鹿にした顔で見ていた。
いやいや、そんな事を言われる事をした事もないし、そもそも面識もないのだが。
困惑しているとその人達は勝ち誇った顔でまた言う。

「島の出身でも無い人達が出しゃばるとか調子のりすぎ」

草を生やしていそうな程蔑んでいる声音に悪意有りとは分かりやすい。
此処まで卑下される理由を知らないでどう言い返したものかと悩む。
やたらめったら喧嘩を買う程血の気が多くない上に不可解な難癖。
この人達に嫌みを言われて直ぐに食堂の場がシーンとなった。
彼等が嫌味を言うのは勝手だが、その言い方はリーシャ達意外の外部チームにも該当するのでは。
思っていた通り、全員ではないが外部チームの人達らしき目が調子乗っていると言っていた人達に向けられている。
当然の結果ではないか。
良い気はしないだろうな。
それに、この祭りは外部が出場しているから盛り上がっているし、もっと言えば、観光客なんてその最たる町の収入源。
稼ぎ相手、商売相手を侮辱して自ら首を絞めるなんていやはや、とても真似出来ない。

「おい、メシカっ」

嫌味を開口一番に放った子を小突いたのはこの空気と視線に気付いた男。
もっと早く止めて上げなよ。
今更後悔しても遅い。
肩身を狭くした集団は負け犬宜しくズコズコと逃げ去って行った。
結局何がしたかったのだろうと思わなくもないが、魔性のMだったのだろうと勝手に想像して完結させておき、食事を済ませた。
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