×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
111
計画実行の日。
マイ、ヨーコ、リーシャはハートの海賊団達に男装させられどこからどう見ても男に見えると太鼓判を押された格好で宴に出た。
バレる可能性が激薄だが、姫の動体視力が未知数な為無言で居る事になっている。
ローの近くに居ると姫が自ずと寄ってくる可能性があるのを考慮して近寄らず、船員達に紛れると酒や宴の空気になっていく。
アリサの姿を見つけようと帽子の隙間から風景を見回す。

(あ、普通に扱き使われてる)

着物みたいな服を着たアリサが男達に混じってお酒を持ってきた。
脅されているのか幽閉されていたのか。

「女?この島で女は一人だと思っていたが」

ローは素知らぬ顔で姫に問う。

「最近雇ったのです」

(攫ってきたの言い間違いでしょ。物は言い様だね、全く)

どんな私情があったとしても悪びれていない様子だからと闘志を燃やす。
アリサはローの姿を見て目を見張るかと思ったが、予想に反して無反応。
何か得体の知れない秘術でも使われてしまったのかも。
危機を感じて反射的に感情を黙らせたのかもしれない。
彼女は恐らく賢いのでそういうのに敏感なのだろう。

(そのまま知らんぷりをしてくれればいい)

多分、このままいけば上手くいくと思う。
ローも何かしらの算段を付けてくれているかもしれないし。
マイとヨーコもまだ大人しく宴会の品を食している。
ぱくぱくと食べてみるも、滅茶苦茶美味しいというわけでなく、可でも不可でもない。
食文化に華があるわけでもない、男の比率が多すぎて真の支配者は誘拐犯という名の犯罪者。
良いとこ無しのロクデナシしか居ない島である。
先ずはローが警備と護衛に立っている敵の男達にも酒を飲めと進める。
流石に最初は断ったがローが姫に今日くらい暇を出してやったらどうだと言うと姫は命令で警備はやらなくてもいいと言う。
計画の始まりは男達を酔わせて使い物にならなくさせること。

「融通の利かない人達でごめんなさい」

馬鹿な女だ、彼らが誰の為に警備をしてアリサを誘拐したのか分かっていない。
いや、分かっているがローという大物の前では彼らを下げてローを上げているかもしれない。
それでも男達の不信を買わない男達の馬鹿さに辟易。
どっちもどっちな似たもの同士だ。
そんな人達は関係ない所で勝手に滅亡していてくれ。

「今日は泊まっていかれるのですよね」

猫撫で声で誘惑する女に肯定するローは表情が無である。
怒っているのかさえ分からない。

(はあああ。帰りたいよー)

面倒な女と男達に関わってしまった嘆きに内心を晴らす。
さっさと自船に戻って布団へダイブしたい。
それかお酒をこれでもかとかっ食らいたい。
二人が来てからお酒など嗜む程度だが、流石に酔いたい時はべろんべろんになりたい派だ。

「そろそろ部屋へ行かせてもらう」

姫の猫撫で声を完全に無視して何も知らない風を装い立ち上がる男に女帝は戸惑った瞳で見てくるのが端からですら伝わってくる。
自信が砕けるか挫折するかと思われたが、どうやら彼女はやり方を変えて、ふらりと彼の袖を掴む。

「なんだ?」

分かっているのに聞くロー。
確信犯だとリーシャは彼の行動を心得ているが彼女はそんな事は何一つ察せようがないので本当に彼が聞いてきていると思っている事だろう。
まだ飲み足りないだろうとシナを作り身体を寄せる女に酒場に居る女性と何も変わらないんだと呆れを含む。
女を誘拐し海賊を誘う時点で姫の欠片もないではないか。
どこにも姫要素が無くなった。
只姫と肩書きを持つだけの一人の女なのだ。
しかし、犯罪者でもある。
女を攫えと言えるような人の意志を無視する所行を何の感情もなく命令できる女。
並べ立てればあっという間に極悪人であろう。
姫が警護を必要としなくなったし、酒を飲むように催促し、お堅い戦士達はそれに逆らう事も出来ないまま酒をグビグビ飲んでいく。
無礼講で断れば良いのに真面目くんだ。
真面目でも人を浚っているので優等生も何もないけれどなっ。

(ヤマタノオロチと九つの首を持つ竜のお話みたい。確かお酒で酔わせてって奴だったか)

思い出していくと結構覚えているものだ。
ローと姫の夜の言葉の駆け引きも終盤らしく、そこだけアルコール度数の濃い気配を感じる。
リーシャは鈍感系を装っているのでローが駆け引きを持ち込む事はあまりない。
持ち込んでしまうとそれを逆手に取ってローを避けようとする道を選ぶため。
なので、ああいう駆け引きを見るのは新鮮だ。
アリサの時は騙すにしても簡単に落ちたので駆け引きのしようもなかったと聞いている。
姫はプライドも高いので駆け引きを楽しんでいる所を見ると今まで幾人もの男達を騙くらかしてきたのかは窺えた。

(相当な手練れに感じる)

あくまでも女の感である。
お酒を注ぐ仕草、ローに甘える声音、誘う言葉。
全てにおいて自分がどうすればどう見られるか、男はどう感じるかを知っている、謂わば計算し尽くされた言動。
もう呆れる程の手練れだと認めてあげるから放っといてくれとさえ思う。
ローに目を向けると顎に手を掛けて仕草の駆け引きが掛かる。

「ふふっ、まあ………私、続きのお話を聞きたいわ。良いお酒もありますのよ私の部屋に。是非、如何?」

きたきた、お誘いキタ!
どこが姫だよ全く。
辟易してローを見ているとローはニヤッと艶のある視線を向けて姫に当てていた。
何だかリーシャに向ける色とは若干違っている気がする。
ローは姫の誘いに直ぐには答えず意味ありげな視線をこちらに姫には見えないように寄越す。

(何を言われているのか分からん)

目配せられても以心伝心でないので理解不能。

(あ、マイ達なら分かるかも)

マイとヨーコを見ると彼女達は戦士の目をしたままお互い話し合っている。
おーい、仲間に入れておくれ。

「リーシャ」

手招いてくれたのでそこへ向かう。
prev * 113/131 * next
+bookmark