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06
ローの船に滞在してから三日目。
女船員の殺気に晒されずに済んでいる。
マイとヨーコには何か言っているのかと懸念をしてはいたが彼女は何故か文句を二人に言わない。
多分真の実力者だからかもしれない。
強いやつは内心認めてるぜっというやつ。
だからローに敵であるが託したのだろうし。
徐々にではあるけれどローはこの病を治す術を見つけ出せると呟き、材料探しを行っていた。
そうか、治るのかと安堵した。
これで多少は安泰だ。
二人にもそれを伝えてもらうとゆるりとベッドへ横になる。
最近咳の為に眠れなかったが流石に不眠では体力も限界で咳で金平糖を生産しながら眠りの気配を感じていた。
ローからは眠れないのなら微量の睡眠薬をと渡されているのも作用して後押ししているからかもしれない。
彼は部下思いというのは知っていたが患者となれば甘々なのが意外だ。
薬を作れるとローが宣言して早二日、出来たと言う言葉に従いそれを飲み込み経過を待つ。

「あああうあうあう」

濁声が少しマシになった。
ローに声を出して見ろと羅列を並べて発音すればもう良いとの終止符。
問診やらを聞き取りされロードクターはカルテに書き込む。
金平糖も収まりを見せている。
もぐもぐしなくて良いのは楽だ。
カルテを書き終えたローはこちらを向き触診だと身体を触る。
医者等老人にしか見せた事が無いので羞恥心を抱き若い男に触られるのに耐えた。

「そんなに意識されると応えたくなる」

「!」

そんな事言われても、としどろもどろでもう良いですかと聞いた。

「まだだ」

動揺に動揺を重ね冷静になる感情。
回り回って冷静になるとはこのことか。
やがて医者の手が頬の周りを確認するように触れてくる。

「あの、顔は関係ないのでは」

聞いたらローの目が熱を含み、ゆるりと相手の身体が僅かに傾いた。
その証拠に椅子がギギギ、と鳴る。

「あ、あのう、近いなーっと」

「勘違い」

勘違いなわけあるか。
あるものか、と腰を仰け反らせて距離を離す。
横に行こうとしたら彼の指先が頬を掠めて指に髪を絡ませ弄ぶのが視界の端に見えて、慣れない溶けるような雰囲気に顔が火照る。
急激に加速する体温を意識しないように駆られて、ローに好きな様に髪を弄ばせるしかない。
視界の外で強かに笑う男等見る暇も無く、止めてくれとも言えない。
否、言ったとしても止めてもらえる可能性は無いと理解している。
前に好き勝手にされた時ーー悪態馬鹿中年大差の無茶ぶりロー捕獲作戦事件をバックに思い出される数々の羞恥心。
ここで頑なに身体を守らねば前の様に懐柔されかける事となる。
それは何としても避けたかったのでローの気を紛らわせようと思案。

「考え事とは随分余裕だな」

思考を戻した刹那、ローがグイッと腕を引っ張り診察室のベッドにリーシャを移動させて間もなくバタンと横向きに寝ころばせる。

「痛いのか、痛くないのか、選ばせてやる」

(注射の針の太さとか、選べるの?え、そんなの………医学の進歩とか知らなかったなあ)

これはガチである。

「勿論痛くないので。筋肉注射は止めて欲しいですっ」

ビシィっと言い退けるとローの冷たい視線が返ってきて怖い。

「剥製にして天然記念物に加工してやろうか」

「えっ、何故でしょう!?」

その後、無事完治してとっとこ退散しました。



有給を経て、漸く日常に戻ったリーシャは気を抜いて机の上でだらけていた。
もし、大将クラスに配属されるのならクザンが良い。
こくんとお茶を飲み煎餅を食べる。
尚、ここは船である為満喫しているのであって、サボっている訳ではない。

「ちょっと!」

例え怒鳴られても…………。

「あんたまた洗濯物出してないわね!」

ヨーコが世話焼き属性になったのば誰でもない自分の責任である。

「ごーめーんー。いまーいくぅー」

だらけていたのでその気持ちを引きずったままのろのろと動く。
その途端に、船へ過剰な振動が起こる。

「うぼく!?」

衝撃に巻き込まれて顔面を打つ。
足腰が差ほど強くないから、いつもならマイが支えてくれるのだが、今はお風呂に入っているのだ。
慌ててお風呂場へ行こうとしたが、やはり最優先は外だと思い直し向かう。
外へ出ると自分の船よりも一回り大きい船が体当たりしていてこちらの船へ飛び移る輩ーー海賊共が目に写る。

(えー!やめてー!船壊れたらマイが鬼神になる!)

「この船!海兵の船かよ!」

海賊の兵が言うのを聞いていたが、飛び移る前にヨーコの残像が次々と相手を吹き飛ばす。
自分より強い部下………これ如何に。
そもそもロー達程の強さ以下なら彼女の敵ではないのだ。

「がああ!?」

「なん、おげえ!?」

次々いなしていく女は相手からすれば恐怖以外の何者でもないだろう。
合掌しておく。

「リーシャさん。遅れました」

「マイ!お風呂平気だった?」

「はい!」

マイが髪を濡らした状態で笑う。
そして、直ぐに突撃した。
一人が加勢すると更に猛攻は加速して二人と己以外そこに立っている者はいない。
やりましたねと言うマイにヨーコがそそくさと敵船へ乗り込む。

「ねぇねぇ!お宝あったわよー。換金する額は良さげみたーい!」

「私達海兵だよね?」

「海兵ですね。でも、バレなきゃ良いでしょう」

海賊の方が君ら合ってるんじゃないかね。
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