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「#幼馴染」のBL小説を読む
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男女逆転事件。
とある船員命名の事件が解決したのは本当に何ともない、起きたらポンッと皆元に戻っていた。
その後、ローにもう船を出して良いかと聞くと許可を貰えたので出航した(何故ローに許可を取らなければならないのだという矛盾があるものの)。
だから、四人を乗せた船は海を進んでいた。
もう問題なんて起こらないようにと祈っておく。
何も………な、何も………。

「女が四人も居る!」

「今日は宴だ!」

空を仰ぎたくなる。
厄日だ、毎日厄日だ。
マーマンという種族をご存知だろうか。
下半身が魚で上半身は人間の男。
それがマーマンという妖精の格好だ。
その容姿が合致する者が目の前で踊っている。
それが数人。
船の周りを囲っている。
こちらの視線に気が付いた彼等は胸を張って高らかに宣言してくる。

「我は誇り高き戦士!魚族!」

煩い、声がうるせーわい。
そんなに声を張らないでも聞こえるし。
消えてくないかな、と適当に念じておく。
っていうか、女だ、と喚く輩が誇り高き(笑)戦士っ(笑)なの?
と隣で呟くマイに同意。
それ、同じ事思いました。

「貴様らは我らの花嫁。向上品としてくれるっ」

だから、煩い!
怒鳴らなくなると怒鳴る前に魚の人間が海からビョーンと飛び出て甲板へ乗ってきた。
うへえ、不可侵略、不法侵入だ。
マイとヨーコはその暴挙を許すわけもなく、相手が好戦的であると判断して攻撃を始める。
アリサとリーシャは観戦である。
というのは半分本気で、前に襲われたのを教訓に、こういう時に攻撃出来るように攻撃方法を思い付いている。
一つ、マキビシ。
でも、乱戦には不向きなので今は無理だ。
乱戦の時には勿論、スタンガン。
たったらー、と効果音を内々でエコーさせて、スタンガン片手にゴーイングマイ。
一つの魚に近寄られているのですかさずビリリ。
パタッと倒れた。
呆気ない呆気ない。
それでも誇り高き(笑)戦士?
笑みをニタリと浮かべて次だと向き直る。
アリサがあっさり捕まってた。
冗談ではなく、マジで。
これじゃあスタンガンは使えな………あ、別に使えるや。
じゃあサクッとビリリ!
アリサまで気絶したけどそれが?
本人絶対心の中で歓喜待ったなしだと思うから大丈夫。
だって、戦力でもないし、気絶しててもしてなくても対して変わらないから。
と、言い訳させてもらいます。
戦闘はこちらの優位だ。
伊達に七武海に鍛えられているというわけでは無いから、当然の結果。
魚達もこちらが優勢だと知ったのか、敵将の男がぐぬぬ顔で撤退を期する。
その際に必ずや迎えに来るという台詞。
負け犬の遠吠えかよ!
いや、負け魚の敗北である。
勝ったと安堵するとアリサを放置して三人はまた思い思いに休む。
雨ざらしになってもどうせ喜ぶんだし……ねぇ?
全国の皆さん、この扱いが納得出来ないのならば十話くらい前から是非読んで下さいな。
それでも無理ならまたまた遡ってくれれば分かる、色々。
というか、女四人旅だからこそ厄介事が四割増しで起きるんじゃないと最近密かに思っていたりする。
あるよねー、男は労働、女はホニャララって奴。
それを思うと女という生き物は労働させられた方がマシってもんだよ。
でも、させてくれないのが非道って言葉がある世の中。
道具にされ易い点では、もう厄介事パーティ。
つらつらとそんな疑問や合点を並べていると眠たくなってくる。
天気が良いから昼寝でもするとしますか。



そんな平和な時間が続くと本気で思っていた時期が私にもありました。
これ一回言ってみたかったんだよね。

「わ、ウロコ」

現実逃避したい。

「きっとあの魚野郎の仕業よね」

ヨーコがアリサの腕を注視しながら言う。
うん、何となくそうだろうなー、とは思ってたよ。
アリサの腕に魚のウロコに似たアザのようにも見える物が出来ていた。
マイが変な病気を移されたんじゃと離れる。
ヨーコも難しい顔をしてから言う。

「こういうのってマーキングされたとかいうパターンかも」

流石ゲームを極めた少女だ。
そう言ったらきっと極めていないと喚くだろうから黙っておく。
しかし、と頭痛がする。
リーシャが不幸に見舞われなかったから良かったと安堵したのに、別の所で起こっていたなんて。
アリサは心無しか落ち込んではない。
いや、というか、もうハッキリ言ってしまえば喜んでいる。
顔をふやけさせて不幸に浸っている。
現実に引き戻すようにヨーコがアリサの頭を叩く。
戻ってきてもあまり顔は変わらない。
そんなに嬉しいのなら毎回不幸な出来事を身代わりとして受けてもらおうかな。
思案していると船が揺れる。
目の前にあのマーマンが再び現れた。
いつの間に船内に現れていたんだか。
激しく疲れる。
さっさと今日という日を乗り切りたい。
げっそりとする気持ちを引き締めてマーマンに対峙。

「印を刻んだ女を渡してもらう」

「貴方達。これが暴行、誘拐と不法侵入の罪に問われる行為と分かっていての狼藉でしょうか?」

弱々しいところなんて見せず、堂々と腕を組んで言う。
高圧的に。
マーマンの何人かは今の言葉に心当たりがあったらしく怯んだ。
当たり前だ、常識的にやっている事は海賊行為、略奪行為そのものだ。
普通に常識がしっかりある人ならば良心の呵責に悩まされている。
いくらなんでも全員が悪の心で此処に居るのだとは出来れば考えたくない。
しかし、リーダーっぽい男は果敢な顔をしてさも当然とばかりに口を開く。

「花嫁は神聖な女神である。この行為は聖心なものだ」

「そういうのを世間では爆論だとか詭弁だとか、正当化しようとしてもどう聞いても誘拐でしかない光景、になるんですよ」

何が聖心だ。
人間から見たら身勝手な行動なのである。

「私達を誘拐したら人間達が貴方達をこぞって排除しようとするでしょうね」

これは脅しでもあるし、苔脅しでもある。
こんな海の真ん中で起こった出来事なんていくら能力者が居る海軍でも千里眼持ちでなければ把握は不可能だ。
しかし、独自に海軍へマーマンが襲ってきたと連絡していると勘違いしてくれたらというフェイク。
マーマンは何歩か後退りし始める。
人間の脅威を想像してしまったのだろう。
多分この種族よりも多いことを知っているのだろうと推測。
その恐怖さえ盾に出来ればこっちのものだ。
ふっふーん、と勝利を確信しているとリーダーらしき前に出ていた男が後退る者を叱責する。
戦士ともあろう物がうんたらかんたらー、という例の決まり文句だ。
いやいや、こっちの台詞だっつうの!
戦士なら恥じない行動くらいしろよっという感じである。
誘拐なんて人道すらも外す行為。
こうやって押し入っている間にも己らがどれ程のルールを破っているのか等想像もしていないだろう。
此処で引いては明日の朝日は拝めまい。
白旗を上げる事だってやらないつもりだ。
降参もしないし、絶対に言うことは聞かない。
一体何の権利があって連れ去ろうというのだ。
丁度良い、リーダーに直接直談判しよう。
ズカズカと悟られない様に怯えを完璧に隠して相手と対峙。
もうスタンガンという手段はバレているから使えない。

「大人しく手を引いて帰って下さい」

ハッキリ宣言すると相手のリーダーの男がじっくり此方を見る。
観察されている。
汗が背中に流れて服が張り付いて気持ち悪い。
シャワーを浴びたいなあ。
ぼんやりと平和に終わらせたいと切に願うと突然グッと手首を掴まれる感触と共に引き寄せられる。
後ろからヨーコ達の叫ぶ声が聞こえると、相手の、敵の手の内に入ってしまったんだと知った。

「気に入った」

「………………………はあ?」

あまりにも自己中な発言にガン付ける。
凄んだのに相手は気にする事無く言い続けた。

「多勢に対する果敢な態度。お見逸れした」

元はといえば君らのせいだろうと内心飽きれる。
彼等が大手を降って来なかったら痩せ我慢をして対峙なんてしない。
未来永劫来て欲しくなかったんだから、願いは早々に崩された訳だが。
というか、手を取り敢えず離して欲しい。

「あの、手」

「貴様は私の妻となってもらう」

言葉を遮られたし、妻とかならないし。
全ての返事を手の平に乗せてグーパン。
喰らえ、不幸の場数パーンチいいい!

「ぐはあ!」

「「「隊長!」」」

リーダーじゃなくて隊長だったのね。
初めて知ったけど特に思う物もない。
そっちが全面的に悪いんだしー。
勇ましくて二枚目な顔をしている隊長には悪いが、襲った相手を間違えたんだ。

「きゃああ、リーシャさんカッコイイです〜!」

「やれば出来るんじゃない」

マイとヨーコが褒めてきた。
殴って褒めるって何か違和感というか、コレジャナイ感がする。
けど、今回は不可抗力と正当防衛だから後悔はしていない。
ふう、吐息を吐くと此方を睨みつける目が多数。
お仲間たちの殺気に満たされる。
それを見ても何ら感慨も浮かばず。

「何睨んでんです?貴方達はじゃあ、お前私の婿になれと言われて………はい、分かりましたって言えるんですか?言えますか?言えませんよね?」

ああん、何見てんだてめーらあ。
という声音で尋ねてみれば殆どの男達が目を逸らす。
同じ目に逢えば良いんだこいつら。
睨んだまま周りを見ていると隊長とやらがムクっと起き上がった。
戦闘体形になる。
手を構えてまたいつでもグーを決められるようにしておく。

「っ、ちっきしょーっ。今のは効いたぜ……!」

まさかの言葉を崩した内容に目を点にした。
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