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二人が何故括り付けたのかとロー達に問い詰めるとローはシレッと「逃亡しようとしてたからだ」というのでバレていたのかと内心歯噛み。
別に二人が来る事は知らなかったが、逃亡のタイミングが非常に悪すぎただけのようだ。
ローは人間なのに鼻が利く。

「あと、俺の支配欲求が疼いたからな」

「「「ええええ」」」

三人ハモってローに向けて放った。
自分の為かよと船員達も思ったが、言わなかった。
保身に走ったのだ。
改めて久々の再会にリーシャは考えまいとしたが、一人旅はもう無理そうだと諦めた。
どう見ても一時帰宅では無さそうだ。
聞けば、一年だった修行を半年に詰めて終わらせてきたらしい。
理由はリーシャが途中から行方不明になった事で目が離せないと判断したかららしい。

「電話でも無事って分かってたけど、気になってしょうがなかったのよ」

「生きてますよね?幽霊とかじゃないですよねっ?」

仕切に体を触るマイに大丈夫だと言う。
これからまた賑やかな旅になりそうだ。

「二人共、一年間でやる筈だったものをそんなに急いでやって、平気なの?」

「ええ。ものにしました」

「あたしも!」

「ほー、凄いねえ」

リーシャなら三日坊主間違いなしだ。
関心しながらそれをお披露目しようかと二人に言われて「え?」となる。
此処でするよりも実践でやった方が効率が良いのではないかと思ったからだ。
でも、俄然見せる気満々の二人を見ているとそれも言い辛くなり、結局宴の席にてお披露目する事となった。
ハートの海賊団の面々はお酒が飲めるとあってテンションが高い。
折角再会したのだから水入らずで部屋で過ごせと後押しされて興奮に疼いている甲板から追い出される。
ローも目で言ってこいというので言われる通りに三人で三人部屋へ向かう。

「何だかこういうの久ぶりですね」

「「同感」」

マイの発言はリーシャも言おうと思っていたものだ。
三人で過ごすのは半年振りである。
話すのも何をするにしても。
宴まで時間が掛かるのでそれまで、お互いに何があったのかをお喋りするのは決定事項であった。
リーシャの場合何か言う度にお説教と悲鳴と混乱が付いて来るだろう。
特に誘拐とかは半叫コースで決まりだ。
話し出しては叫び泣き笑い。
何故か殆どリーシャの人生が話題だった。
不幸しかないのに聞きたがるなんて物好きだと終わらせたいが、何も二人は楽しくて聞いているのではない。

「「いやー!」」

最後ら辺は最早気絶しそうで、胃に穴が空きそうだったとはヨーコ談。
もう胃に穴が空いて手遅れだとはロー談である。

「三人の再会を祝して……乾杯!」

音頭を取った一人に全員がビールや酒のグラスを掲げて宴は始まった。
今回は気を遣っているのかローは隣に座れと強要する事はなかったので、いつもこうだったら良いのにと内心愚痴る。
隣に座れと言う癖に更に酒も注げやらもっと近くに寄れやら、注文を言ってくるので相席するには忍耐力が試された。
マイとヨーコと並んでご飯を食べるのも久々で懐かしい。
これからそれもいつもの日常になるので浸っているのも今だけ。
もう直ぐ大人になる年齢の二人に船員達は遠慮なくお酒を勧める。

「飲ませないで下さい皆!」

酔っ払いに言うには気迫が足りない。
ローに頼んでも好きにさせろの一点張り。
確かにそろそろお酒に慣れさせた方が良いのかもしれないが、どうにも向こうの世界に対して申し訳なく思ってしまう。
向こうでは未成年。
こっちでは別に飲んでも咎められない世界なのだ。
難しい顔をしていると酔った船員がポロッと何かを言う。

「あん時は可愛かったのによー」

「あの時?」

いつの話しだろう。
疑問を抱いているとローが鞘に入れたままの刀を振り下ろすのが見えた。
ゴンッという音がするとその船員の意識が地に落ちた。
船員に何て事をと言うとローは何食わぬ顔で「明日には今の事何てどうせ忘れてる」何て言うのでそういう問題じゃないんではと冷や汗をかく。
船員達は揃って口に手を当てて「くわばらくわばら」と唱えていた。
何故「あの時は可愛かったのに」発言からくわばらくわばらなのか。
更に疑惑を抱くとベポが酔った風な足取りでこちらへやってきてカンフーのポーズをする。

「アチョー!」

もしかして宴の席の一発芸という奴か。
それに続いてヨーコとマイも中心に出る。
ニョンガシマにて鍛えたそれをお披露目だという訳か。
マイの手には弓矢よりも重みのあるボウガン。
ヨーコの手には長く細い中くらいのトンファー。
先ずはマイかららしく、彼女は的らしきそれを甲板に取り付けてヨーコは近くに大きな石を置く。
それを興味しんしんに見ている周り。
マイは狙いを付けて、見られているというのに、一切集中を切らさずに矢をつがう。
キリリリ、と音がして矢が飛ぶと的に当たりその的が破損した。
破損、つまりは貫通して甲板の場所に刺さった。
周りがその光景に絶句していると次はあたしね、とヨーコが石に向かってトンファーを振り下ろす。
銀色だったトンファーが黒くなっている事に気付いたのは石が粉々に砕けた後。
真っ二つに割るのかなと簡単に予想していたリーシャは口を開けて固まった。
ハッと意識を取り戻すまで五分は要した筈。
その間にマイはローに弓を貫通させて船を傷付けてしまった事を謝っていた。
ヨーコは粉々にした石を箒(ほうき)で掃き出していた。
ローや船員達が二人を海賊にならないか、とかまた船員にならなかと勧誘する気持ちがとても理解出来る。

(てか、只の女子高生だったよねこの前まで……)

この前というか一年も経過していない。
驚異の成長である。
リーシャは信じられないが信じるしかないその事実に悩む。
もし向こうの世界に戻ったら二人は変な研究対象にでもされかねないのではないか、と。
向こうに帰らなければそれは分からないし、今更どうする事も出来ないので成り行きに任せるしかないのであろう。
諦めるというか、思考を放棄した。

「ちょ、お前らほんと俺らと海賊しねェ?」

「ストップストップストップー!」

勧誘されて困っている二人の間に入り船員達から切り離す。
悪の道に勧誘はさせない。

「お前に聞いてねーつの。船長に擁護されてのうのうとしてるお前なんてお呼びじゃねェ」

「!」

お酒が入っているにしても過ぎた言葉を出すのはこの船に乗っている中でそこそこ長い男だ。
この男はリーシャがローと出会った後に入ってきたので、その不満はそれからもずっと溜まっていたのだろう。

「てめー言い過ぎだろ。酔ってるからって」

「うるせーな。お前だってこの女が新世界に来る程強くないの分かってんだろっ!」

「だからっててめーに関係ねェだろ!?」

「嘘つくな!ほんとは邪魔なお荷物って思ってる癖に善人ぶってんじゃねー!」

殴り合いがついに始まった。

「……あ、リーシャさん!」

唖然とそれを見ていた内の一人であるマイが自室に籠もろうとするリーシャを引き留めようとする。

「マイ達は主役だからまだ此処に居た方が良いよ」

何か言おうとするマイ達を押し止めてトボトボと甲板を去る。

(痛いとこ抉ってくるぜー)

何て湿っぽく感じながら廊下を歩く。

「寝るのならこっち来い」

グイッと腕を引いてくる相手に力なく笑みを見せてから引かれるままに付いていく。

「ローさんも遠慮なく言ってくれても良いんですよ?」

今は何を言われても構わないと思えた。

「じゃあやらせろ」

「そういう言ってとかじゃないですってば……」

好きな事を言えとは言ってない。
というか、やらせろとか先程言われた事よりも悪質だ。

「裸になれば男も女も力も弱さも関係無くなる」

(確かに正論だけど暴論)

今の台詞は何かから抜粋したような発言だ。

「だから服を脱げ。それから考えるのも放棄して、考えるな」

慰めてくれているのかもしれない。
それにしてはローにとってはペースに乗せるだけの展開だ。
そのままの空気で裸にさせる気満々だろう。
しかし、ならない。

「でも脱ぎません」

「別に上は脱がなくても良い」

「最低ですからそれ」

下だけ脱げと言われても。
さっきまで落ち込んでいたのに、ローの下ネタのせいで気力が少し戻った。

「弱い奴は弱い。お前も弱い。んな事全員知ってる」

「……ローさんなじり方、普通」

「いつ死んでも可笑しくないお前が強くなるなんて俺も誰も期待してねェから安心しとけ」

「ふふ……心得ておきます」

世界一不器用に慰められて、慰められるリーシャは何と単純な女だろうか。
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