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85
ローがペトリナを倒すのを見届ける前に船員達に船へ誘導される。
それから直ぐ後にローが帰ってきてウエディングドレスを着たまま手を引かれて彼の自室に連れ込まれた。
きっと長いお説教が始まるに違いないと思っていたら部屋に入るや否や壁に押し付けられて唇に噛みつかれたのは驚愕であった。
口が離れていくのを感じると付けてあったままのグロスがローに付いているのを視界に入れてしまい一瞬で赤面。
ウエディングドレスを上から下まで見た彼はぽつりと呟く。

「あのまま結婚する気だったのか」

「そんな訳ないです。ローさんが来なければ逃走してました」

そう述べるとローの目が剣呑に光る。
怒っているし、今も継続して何かに対して怒りを抱いている顔だ。
ローはリーシャの腕をキツく握ると低い声音で告げた。

「あの男から易々と逃れられると思ってたのか?あいつは悪魔の実の能力者だったんだぞ」

「そうなんですか?でも、女には滅法弱いので……私が隙さえ作れば、痛!」

更にギリッと握られる圧力に顔を歪めるとローはほれ見ろと言わんばかりに笑う。

「お前はこの程度も痛がるんだ。その自己犠牲は焼け石に水って事を理解しろ」

ローは怒気を含んだ声で脅してくる。
確かに今回はかなり危なかったが、リーシャなりに考えての行動なので自分も彼に言いたい。

「いつでもローさんが近くに居て、助けにきてくれる訳ではないのに、私にどうこう言っても何もなりませんが」

「……だからと言ってお前が犠牲にする理由でもない。あいつらだってお前の自己犠牲なんて必要ないだろうな」

「だとしても、私は身を呈(てい)して彼女達を守ります」

ローの身体を押し返して言うと更に身体を密着させられて身動きが出来なくなる。
彼は顔をスレスレに持ってきて鼻が付きそうになる距離。
離れようと顔を逸らす事も出来ない詰め方にタラリと汗を垂らす。
少しでも動けば何かを仕掛けられるのだろう。
手をピクリともさせられない状況で彼は睨んだまま手を動かして肩をグイグイと前へ押した。
彼はリーシャの耳に唇を寄せるとフッと息を吹きかける。

「もうこの話しはキリがねェなァ」

「同感です。というか、近いですよ……近い……っ!」

耳朶にチロッと舌を這わす感覚にピクリと身体が揺れる。
ローが楽しげに「ウエディングドレスを脱がすのって良いな」という言葉にポカンとなった。
ウエディングドレスから私服に着替えておけばこうなる事は免れただろうか。
いや、恐らく関係無いだろう。



中型船に乗って再び航海出来るようになった事を噛みしめて海を進む三人。
とある無人島に着いて、そこで三人は久々に人の居ない島へ降りて探索をする事となった。
普通はログが溜まるまで大人しくしているのが一番なのに、暇だし降りようと言うヨーコの発言に負けたのだ。
マイも乗り気だったので二対一でこっちに味方が居ない惨敗である。
自分だけ留守番しておく訳にもいかず、仕方なく付いていく。
すると、歩いている最中にマイが嬉しそうな声を出す。

「これっ、竹の子じゃないですかっ?」

ヨーコも同じように興奮してそれを取ろうとするので待ったを掛けた。

「貴方達の世界では無害なものかもしれないけれど、此処は新世界という事を忘れないでね……という訳で触るの禁止」

「う、持って帰っちゃ駄目なの?あたしこれ食べたいんだけど」

「私も食べたいです。けど、此処は新世界だからどんな危険な食べ物でも不思議じゃないよ、ヨーコ」

二人は納得すると落ち込んだ様子で歩き出す。
それから歩き出したが、視界にその竹の子という物しか入らなくなってきた。
数分歩いても悪化するばかりでクラクラしてきた。

(何なの?眩惑?)

気付いた時には遅くて、すっかり足は何かに引き寄せられるかのように自分ではどうにもならなくなっていた。
先程までは何ともなかったのに、もしかしたら此処の植物は知恵が有るのかもしれない。
またまたいつの間にか竹の子擬きを手に取って一心不乱に食べていた。
止めたくても止められないくらい美味しい。
マイとヨーコも抗えないらしく、食べていた。
お腹が満たされる頃には意識はハッキリしていて、吐き出そうにも吐き出せないくらいお腹に入っていたので無念。
三人はトボトボとした足取りで船に戻った。
一応保険として竹の子を持って帰ってきたのだが何の安心も出来ない。
一日がやっと経過して出航した頃に異変は起こった。
朝起きたら耳と尾骨に違和感があったのだ。

「何なのお!?」

鏡を見たらしいヨーコが叫ぶ声にリーシャの中にある推理的予測が疼く。
自分も鏡を見なければ、と鬱蒼となる気分で立ち上がるとバタバタと部屋の外から走る足音が聞こえて此処へ来るのかもしれないと覚悟を決めた。

「ちょ、あんた!これ、見なさいよ!ヤバいってこれ!」

というか、彼女は何故ベッドから起きる時にマイやリーシャを見て気付かなかったのだろう。
マイも同様に思ったが、何故か気付かなかったという仕様(イベント的な)だろう。
リーシャだって起きるまで少しくらいしっぽみたいな物に気付かないなんて可笑しいし、ヨーコに生えている耳や尻尾と同じように自分にも生えているに違いないと思う。
鏡を見たいような見たくないような。
怖々とした感情がせめぎ合うのを感じつつ、ヨーコに落ち着くよう言う。
こういう時こそ冷静にしなければいけないのだ。
グランドラインも不思議な島が多かったが、新世界はそれも超越している。

「マイにも生えてた?」

「生えてたわよ。あんたも生えてる」

カタカタと震えながら伝えるヨーコに頷く。
聞かなくても分かっている。

「取り敢えず原因はちゃんと分かっているんだし、そんなに慌てる事も無いと思う。それに、明日とか明後日には消えてる可能性だってある」

竹の子擬きを食べた事を思えば慌てる理由は特に無い。
時間に任せるか、それが無理なら島にある病院に行くしかあるまいと予定を組み立てる。
マイとヨーコにはいつも通りの事をしてもらい、自分も自分の事をした。
それから一日が経つ少し前にローの潜水艦が向こうに見えると報告を受けて苦い顔をする。
二人も同様だ。
こんな態とらしいあざとさのある姿なんて進んで見られたいとは普通思わない。
ハプニングでなってしまったにせよ、隠したい物だ。
慌てて二人に帽子を被ってもらい尻尾も隠すように言うと二人はサッと隠す。
リーシャも同じようにしてからロー達の船は無視しようという総意となる。
今回は流石に会う気にもなれない。
向こうが去るのを三人で眺めていると、何と向こうに居る船がこちらに方向転換してきたではないか。
慌ててこちらも船の向きを変えてから逃げるように進む。

「追ってきてる追ってきてる!」

「逃げ切れません!」

「こうなったら………電伝虫?………誰から?」

小型電伝虫に電話が掛かってきて、疑問を抱きながら出ると不機嫌な声が耳に通る。

『何でこっちに来ねェ。逃げてるようにも見えるぞ』

「う、ローさん……わざわざ電話掛けてきたんですか?」

『掛けて不都合が?』

すこぶる機嫌の悪いローにヘコヘコする。
いつもはしないけれど会うのを避ける為には必要な処置だ。

「ちょ、ちょっと今は……とある理由でそちらには行けないと言いますか……」

ごにょごにょと言うとローが怪訝そうに「は?意味が分からない」と言うのを聞いて言葉に窮する。
そうだ、と閃いたのでそれを口に乗せて伝えた。

「今、女しか掛からない奇病に掛かりまして……!ですが、明後日くらいには治るので出来ればあまり見られたくないんです!」

本当半分嘘半分。
ありのままを一部入れて言えば仕方無いと諦めてくれるかもしれない。
期待を胸に活き活きと言うとローが黙る。
黙られるという事は考えているという事なのでいけるかもしれない。
ニマニマとなりそうな顔を抑える。

『俺の気のせいか?電伝虫が笑ってやがる』

「え?気のせいです。ほんとに、会えないです。面会謝絶ですから」

もう押し切ってしまえ。
念じていると向こうにある潜水艦の扉が開く。
見ていると見慣れた帽子と刀を担いだローが現れ眉を下げる。

『近くに船を付けろ。お前達の症状に興味がある』

「ローさん、世の中にはですね知らない方が幸せな事があるんですよ」

『別に幸せなんて望んでねェから来い』

リーシャはガチャンと電話を無断で切りマイとヨーコに向き直る。
今の会話を聞いていた二人も不安げにこちらを見ていた。

「よし逃げよう。面舵いっぱい!」

「「了解(です)」」

二人の威勢の良い返事にリーシャはローの船を見て倉庫へ向かう。
戻ってくると船が近寄ってきたのか距離が近くなっている。
マイ達がやっぱり逃げ切れませんと言ってくるのを聞いて手に持っていた物を投げる。
乙女の領域に土足で踏み込んでくる人はこうである、と教訓を教えよう。

「てえい!」

ポイッと放ると向こうの船に居るロー達ハートの船員達が慌てる。

「げ!何だこれ!」

「煙幕!」

「な、いきなり何でこんなもん!?」

慌てているのも気にせず次々煙幕を投げ込む。

「ゲホッ、煙たい!」

「し、視界が……」

「は、反抗期かこれ!」

反抗期ではない、制裁だ。
無表情で放っていると手に有る煙玉が無くなってしまいローにされたのだと瞬時に理解。
舌打ちをしそうになるのを我慢して第二の計画を発動する。

「ふっ、は!」

パチパチと音を立てる爆音。
船の中では爆竹が暴れている事だろう。

「今度は爆竹だ!」

「何なんだ!?革命か!?」

だからこれは正当防衛である。
ホレホレホレと火を点火し投げ入れていっているとそれも手元から途端に消えてローの能力に歯噛み。
この能力は使うと体力が減ると聞いたのに使っている。
こんなお遊び程度に使うなよと思わず思ってしまう。
後ろに思わず下がってしまうといつの間にか船が接近してきていて、船員達が船に奇襲してきた。

(くそう、奇襲し慣れてるなこの海賊達)

あっと言う間に占領された。
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