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水着審査となっているコンテストの目玉。
盛り上がらない筈もなく。

「可愛いー!」

「やべー!」

「「「うおォ!」」」

熱気が凄かった。
コンテストは男達の声援あってこそ盛り上がるものらしい。
次々出てくる胸も何もかもがグラマスで自信たっぷりな笑みを浮かべる人達を見て、何だか隣に立つのが烏滸(おこ)がましいのではないかと自分の体系を自己評価しつつ思った。
リーシャはローに好かれていたとしても、好意を抱かれていたとしても決して奢らない質であるのをよく理解している。
ローの感情はきっと『傍に気の許せる女が居なくて隣の芝生は青く見える現象』の類なのだと達観していた。
水着アピールタイムにやっと呼ばれステージに立つとピークの雰囲気に見事呑まれてしまう。

「うわ」

己は歴代の戦士でもなんでもない一記者である。
肝っ玉なんてものも度胸もない女だ。
演劇の時は自分のペースでやれるのを求められたので平坦で行き当たりばったりでもいけた。
しかし、此処は自分のテリトリーではなく不得意な空気が蔓延してい場所。

『では、アピールタイム始めて下さい!』

催促されている頃には心が折れていた。

「趣味は人の秘密を暴く事です」

ヤケクソと言う名の暴走、どうにでもなってしまえという事柄の放棄である。
水着アピール審査も終わり結果発表のみとなった。
終わったから帰りたいと言ったら二人に揃って後少しの辛抱だと強要されて押し止められる。
くっ、と苦い気持ちを押し殺して発表を聞く。

(此処までしたんだから懸賞金欲しい)

上位に行けと思わないがお金が貰えるというのなら欲しい。
せめて二人の内誰かが入ってくれれば多少は参加して良かったと思えるかもしれないので祈る。

『先ずは可愛い子部門!』

「え?部門?」

「何か幾つかあるらしいわよ?」

ヨーコがパンフレットを見ながら言う。
確かに過去のコンテストでもあったがすっかりコンテストの事で頭がいっぱいだったので忘れていた。
頭からすっぱ抜けていた事を少し不甲斐なく感じる。
可愛い子部門の順位が発表されていく。

『四位、マイさん。三位−−』

「ちょ、あんた四位だって!」

「さん、い……って上位でしたよね?嬉しいような恥ずかしいような……」

照れているマイにリーシャもおめでとうと告げる。
一位まで発表されて次の部門に移りまた目が点になった。

『ツンデレ部門を発表します』

「ツンデレって」

リーシャはそんな物まで、と思った。
そして二位の名前にヨーコと聞こえてヨーコを見る。

「誰がツンデレよっ!?ツンデレって言うなー!」

司会者に向かって怒鳴るヨーコに内心そういう所が……と思う。
真っ赤なヨーコにツンデレという単語が回る。
ヨーコも納得顔で見ていた。
次の部門も言われていき、しかし、リーシャの名は出ない。
そんなに都合良く出ないものだ。

(まー、普通だもんね、私って)

『珍妙な部門!無関心部門が先程出来ましたので発表させて頂きます!』

「え?そんなに簡単に作っちゃうの?」

思わず呟いてしまう。

『斬新なコメント及び、無関心なその顔が男達に話題を呼びました!』

誰だろう、というか、ヒシヒシとその予感が胸に抱かれる。
自分が見ている限りそんな感じの人は居なかった。

「あ、これって」

マイも直感故かピンと来たらしい。

『その人物はァ〜?……リーシャさーんっ!』

(だよね、やる気無しなの私だけだったから……予想外)

まさか無関心部門なんてものが出来る等と思わなかったので。
マイとヨーコは喜んでいる。
複雑だが、嬉しくない訳では無いので笑っておく。
一位なので賞金が貰えるのでそこはとても嬉しい。
今回は賞金が得られて少しは遊ぶ時間も取れるのでマイとヨーコにはショッピングでも楽しんでもらおう。
珍しく時間も取れる事だし、自分も睡眠を貪ろうと決めた。



スヤァ、と寝ているとギシッと音がして眠りが浅くなる。

「う、ん、あえ?」

間抜けな声音を掠れた寝起きの喉で出す。
ぼんやりしていると体に重みが乗る。

「んー、マイ?ヨーコ?」

もう夜なのか、それともご飯だから呼びにきたのかもしれない。
けれど眠い。
鼻で息をすると首筋にサワッと擽ったさを感じる。
その感覚から逃れる為に身を捩(よじ)っても付いてくるので腕を出す。

――ヌルリ

そんな効果音が付きそうなものが首筋を這う。

「ひ!?」

流石に得体の知れない事態だと感じて目をカッと開けた。
眼を下に向けると藍色が視界を埋め尽くして、それが人であるのだと漸く気付く。

「な!?何してるんですかっ、ローさん!?」

悲鳴を上げると相手の瞳がこちらを射抜く。
ギラついた揺らめきに肩が無意識に揺れる。

「何、だァ?……そんなの一々言わなくても分かるだろ」

「そういう事ではなくてですね!何故此処に居て、こんな事をしているのかって意味、ですっ、ちょ」

また首に顔を埋めたローに批判を述べる。
またあのヌルリとした感触に舌であったのかと察っした。
だとしても、ストップをさせるだけの理由が無くならない訳ではない。

「二人が戻ってきたりしたら大事ですから!止めて下さい!」

此処はホテルではない、船だ。

「……そんなの分かってる。策はちゃんとある。あの二人は当分戻ってこない」

「え、ま、まさか」

ローが何かしたのかとサッと顔を青くする。
傷つける事はないと思うが、戻ってこないような事をしたのは確実な訳だ。
ロー本人が二人の動向を匂わせているのだから。
彼はこちらの反応に顔を上げると眉をしかめる。

(何で怒ってるの!?)

逆に問い詰めたいのはこちらだと言うのに。

「別にお前が想像しているような強要はしてねェ。ただ船に居るベポやシャチ達と鍛錬してるだけだ」

不服だという顔で言うローに暫し思考を巡らせて「あ、あー」と口に出た。

「もしかして」

「あ?」

「ひ!あ、いえ、何でも無いです」

ギロッ、と睨まれて首を降る。
機嫌が急降下である相手に下手な事を言う度胸も無く。

「言え」

「い、いいえ!」

ブンブンと首を降るとローは服の裾から手を無遠慮に入れてくる。

「あ、止めて下さいっ!」

逃げようと横に移動した。

「っ!」

胸に手が到達して息を詰める。

「言え」

手が動く気配が無くなりホッとなる。
しかし、目の前の男がその気になればいとも簡単に懐柔させられるのは肌で感じていた。

「い、言います……えと、ローさん、もしかして……私が彼女達に無体を働いたと思ってます?」

「さっき動揺したじゃねェか」

また拗ねた顔で言うローに可愛いと感じたのは、普段クールなローを見ているからだ。

「何かしたとは思いましたが、彼女達を気に入っているのは理解してますし……信じてますよ?」

「……は、そうかよ」

と言い終わるとローは胸から手を退けて唇に噛みついた。
嬉しそうに口角を上げていたのを目撃したのは言わないでおく。



海水に今、自分は浸っている。
空気を入れて膨らませたドーナツ型の浮き輪に乗っていた。
こうしている理由は朝起きて隣に同じく寝ころびこちらを見ていたローから水着が入っている袋を渡されて「着ろ」と言われたからだ。
勿論即却下を下したのだが、水着をその場で無理矢理着せられて服も着せられてから強制的に海水浴の場に連れて行かれた。
何かの目標があるのか足取りはブレない。
砂浜の砂利を踏みしめていると遠目から見覚えのある姿が見えた。

「おりゃー!」

「あちゃー!」

ベポと船員達がボールを飛ばしあっていた。
スポーツのビーチバレーである。
その海の中ではマイとヨーコが互いに戦っているのを見て口をぽかんと開けた。

「こんな時まで鍛錬……」

「良い心意気じゃねェか」

楽しそうに笑うロー。

「はァ……折角休日が出来たのに……」

「くくく。お前は遊べよ?おれと」

「へ?」

俺とと言われて嫌な予感がする。
ギクギクしながらローを見上げると彼は腕を掴んできて浜辺にある長椅子に腰掛けてたら次はグイッと手を引かれて重力に負けて相手の太股にドスンと座ってしまう。
お尻にローの筋肉質の硬い感触に居たたまれなくなる。

(ていうか、見られたらどうしよう!)

恥ずかしがっている暇は無いと思い立ち上がろうとする。
しかし、腰に据えられた手のせいでビクともしない。
冷や汗と羞恥心がせめぎ合い、ローに苦言を申す。

「は、なして!」

見つかる見つかる、それだけは嫌だ。
恥ずかしいし、二人はそれでなくともきっと更に盛り上がって「ロー押し」と言うのだから。

「フフ……少しだけだぞ?」

海の方へと指を指して笑うローにキッと睨む。
からかって遊ばれている事を感じて珍しくチキンなリーシャは走ってローから離れる為に唯一能力者のローが立ち入れない海へと飛び込んだ。
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