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そこにローが居ても必ず助けて貰える何て甘えは持っていないので、助けてという視線もしなかったので驚く。
驚いている間にいつの間にか話しを終えたのかローに手を引かれ出す所でハッと意識を戻す。

「おーい、平気か?」

目の前でシャチが手をフリフリしている。

「辛うじて」

何とか声を出すと周りが安堵した。

「しかし、何度見てもお前って分かってても……そっくり過ぎる」

「噂のリィア姫?」

「嗚呼。っと、あそこに肖像画発見ー。あれだぜ」

船員の一人が指した所を見ると一人の女性が佇み両親らしき人物達が書かれていた。
鏡というものは日々見ているが、人から言われなければ案外そっくりかどうかなんて分からない。
普通にまあ似てるかも、くらいしか感じないので首を傾げる。

「世の中には似ている人間が三人居るって言うけどその一人がお前とリィア姫だよなァ」

そんなにしみじみと言われても。
そのせいでこういう嫌な目に合っているので余計に似ている事が不快に感じた。

「私、普通の血筋だしっ」

ぶつくさと小声で言うとローの楽しそうな視線が頬を突(つつ)く。

「そうだな。お前は不幸体質が取り柄過ぎる記者だな」

「余計ですローさん。それにしても」

ロー達はどうやってリィア姫と出会ったのか気になる。

「リィア姫って王族なのにどうやって付け込んだんです?……シャチさん」

「おれかよ!付け込んでも誑かしてもねェしっ。大体お前そっくりなのにナンパだってないない」

「どういう意味ですかアンポンタン!禿げて下さいっ」

シャチでないなら誰がどうしてそうなったのだろう。

「おれだ。きっかけはいつもの些細なもんだ」

ローはリーシャが騎士達にリィア姫と間違われて連れて行かれている頃に話しを戻して語り出した。



***



ハートの海賊団 side


リーシャ達と同じ航路を進んでいるロー達もまたこの島に降り立ち物資を得る為に買い物をしている最中であった。
観光も兼ねているのでそれぞれか買い物をしたりしてブラリとしていると前方から騒がしいものが迫っている事に一早く気付いた先頭に居たロー。

(なんだ)

怪訝に、警戒心を上げて前を見ていると人だかりを押しのけて何かがやってくる。
人が押しのけられて見えたのは一人の女。
その姿はローブで顔が見えかけているような状態で走っていた。
どう見ても走り慣れていないし、大分疲れている顔色でやってきた女の顔が動く度にチラチラと見える。
その後ろには騎士風の姿をした男達。

「……つーか、あれ、リーシャっぽくない?」

船員の一人が記者である女の一人だと指摘するのをローは複雑な顔で聞いていた。
ローも全く同じ事を考えていて、更に他の船員達もそう唱えるので認めざるおえない。
また厄介事に巻き込まれていると存外に知らされて頭が痛くなる。

(あの馬鹿)

悪態を付くと同時に愛刀の鬼哭を握る。
彼女はこちらへ来る事はなく右に曲がり細い路地へ入り込む。
そんな所に入っては危ないと叫びたくなるのを我慢してローは仲間達に連絡すると伝えると走り出す。

「チッ」

捕まえたら宿屋に連れ込んでたっぷり苛めてやると鬱憤晴らす為に決める。

(どこに行った)

左右を見回すと耳に何かの声が聞こえて言い争うものだと気付きそこへ向かう。
騒動がある所にリーシャあり、とは船員達の中でもローの中でも周知の事実だ。
騒動が聞こえる所に行くとその騒ぎがどんどん大きくなり、何が起こっているのかが解っていく。

「この女、髪サラサラー」

「売ったらマジ遊んで暮らせる」

「っ」

怯えた顔で息を呑むのはリーシャだ。
少しの違和感がローの中で芽生えるのは直ぐだ。

「?」

リーシャならばこんな事になったら取り敢えず怯えるよりは面倒だという顔をするであろう。
そして、必死に策を巡らさせている。

「怖くて声出ねーとかポイント高いな」

怯える女に喜ぶ男達なんてどんなテンプレだ。
ローは見ているのも飽きてきて即座に行動した。
この程度ならば能力を使うまでもないと判断して回し蹴りで相手を沈める。

「ギャア!」

「キャ!」

「なん−−ぐはっ!」

二人目も倒すとその疑惑が更に高まった。

(なんつー悲鳴だ。演技か?デレてんのか?)

そんな馬鹿なと思いつつ彼女の方を向くと容姿はリーシャと同じであるのに、小さな違いがある。

(胸がデカくなってやがる……髪も長ェ)

あの悪党達が言っていたように髪がサラサラだ。
海の塩に晒されている彼女は髪がごわついている筈。
よく見ると着ている服も上品で女らしく、普段の男装かと突っ込みたくなる動く事を前提とした服装でない。
おまけに少し焼けていたと記憶にある肌の色が病的に白い。
全く外に出ていない人間の肌色だ。
そして、極めつけは。

「あの、助けて下さいまして、有り難う御座います」

「…………お前、誰だ」

「え?私はリィアと申します」

ローの混乱している最中での問い掛けに答えるリーシャそっくりの女、リィア。
名前が違うとなればこれはつまり。

「他人の空似……」

ここまで似ていて、全く違う存在。
これではただの慈善事業、ヒーローじみた行いをしたようなものだ。
ローは助け損かと内心苛ついた。
これがリーシャ本人ならば今頃キスをして壁に押し付けて宿に連れて行って、という手順でロー的に何もかも有利に進むそれが、人違いのせいで奇しくも無くなってしまった。
ローは海軍でなく海賊。
見返りのない行いをしたとなれば舌打ちもしたくなる。
不機嫌を醸し出しかけているローにリィアは嬉しそうに言う。

「救世主様。どうか我が城へ来て下さい。是非今回のお礼をしたいですわ」

リィア姫は自らをこの国の姫だと述べて、こちらをヒーローを見る目で言うのでヤケクソ気味に行くと言った。
電話をして船員達と合流すると事のあらましとリィア姫とリーシャは全くの別人である事を伝える。

「に、似てるな」

ひくひくと頬を動かして言う一人、それに同意する複数。

「でも、あいつより胸は……ある、な」

「嗚呼」

(あいつが聞いたら白い目で見られるな)

ローも思ったが言うような失態はしない。

「あの?皆様?」

「「「上品!」」」

何かを言うだけでも王族のそれは滲み出るらしい。
仕草が貴族のものだ。

「リーシャってこんなに綺麗だったか?」

(……殴られるなこいつ)

ローはそのリーシャに。
城へ行くと何故かリィア姫だと思っていた女のリーシャが居たり、よく分からない罪を被せられていたり。
兎に角ヤバそうな雰囲気だったので苛ついていた所の良い安定剤だった。
彼女を連れ出して手を掴むとリィア姫を見ていた時とは違い安心感に似た満足感が胸に染みた。
ローはやはりリーシャでないといけないらしい。
助けたのを理由にローの為に働いてもらおうと要求する予定を脳裏に描いた。



***



部屋を宛てがわれたので、そこへ行こうとするとローに「馬鹿か」と頭を叩かれて一緒の部屋に連れて行かれた。

「また面倒なもんに巻き込まれて身動きとれなくなるだろうが」

「あ……」

ハタッと思考を回すとそんな事は当たり前だった。
確かに一人で居たらまた何かごり押しされそうで有り得る。
疲れていたせいで判断力が鈍っていたらしい。

「でも、マイとヨーコの所に帰らないと」

「あいつらにはもう連絡しといた。それよりこっちに集中しろ」

と唇に噛みつかれた。
ガブッとだ、可愛らしい効果音はどこにあるのか、落としたのか。

「!」

「まさか、何の見返りもなくてめーを助けたとでも思ってねェよな」

前までは何の見返りも要求してこなかったのに味をしめたのか。

「ん」

「先に湯浴みするか」

と容赦なく浴室へ引き込まれた。
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