05
「それにしてもお前ほんっと間抜けだよなァ。強盗に人質にされるとかどんだけ運悪いんだ」
ケラケラとからかうように笑うシャチに好きで捕まったんじゃない、と言う。
それに元はといえばローが渡した現金があったから、預けにいったのだから原因を作ったのはローだと思うし、強盗は本当に自分の運の無さが招いた事態だ。
文句を胸に押し込めつつも助けてもらった事には変わりはなく、今だ笑っているシャチを放置して彼の所へ向かう。
酒を水のように飲む姿に豪酒なのだと思い出す。
「なんだ、不細工な顔して」
「うわ、うわないわー。せっかくお礼をしようと思ったのに萎えましたあああっ」
不細工な、と言われて喜ぶのは魔性のMしかいない。
なので心は大荒れになりプイッと顔を背ける。
「礼?……へェ……じゃあ俺の言うこと何でも聞けよ」
「あれ、その台詞は窮地に陥った助けられた側が言う言葉ですよね、ローさんが言うべきものじゃないですよね、ね?」
「うるせえな。助けてやった命を俺がどうしようが俺の勝手」
「なにこの人俺様過ぎっ」
ドヤッとした顔をまた拝んでしまったリーシャはげんなりした表情で突っ込むが、彼には聞こえていないフリをされた。
何をするんだろうと待っていると、持っていた酒瓶を横に移動させ空のコップを自然に握らせられ、注がれる透明なアルコール飲料。
まさかと顔を窺うと、そのまさかで眼が飲めと言っていて、苦い顔をする。
「私世界一お酒が苦手なんですけど」
「なら飲め」
(ならってなんだよ!)
不貞腐れながら一気に飲む。
ここまでされて逃げることは不可能だ。
グイイイ!と煽るとコップをドンッ!とテーブルに置いた。
***
LAW-side
「いい飲みっぷりじゃねーか。嫌とか言いながら実は」
「苛めないで」
「は?苛め?」
礼がしたいと言うから酒を飲ませたのたがどうも様子が可笑しい。
身体は小刻みに揺れ瞳はうっすらと色気のあるものになっていた。
世界一嫌いなものを飲ませた後の反応に興味が湧いた故の今なのだが頬は赤く色づき心なしか息も荒い。
「お前……酒飲むと性格変わるのか」
「ひゃ、ご、ごめんなさい!」
別に怒ったわけでも睨んだ訳でもないのにいきなり謝りだされ心底面倒に思った。
よたよたとおぼつかない足でこちらに来て膝に頭を乗せ懇願してくる姿に無意識に自分の喉がごくりと鳴る。
「お願い……もう許して……」
何を許して欲しいのか分からない。
酒を飲む事かと考えるが、上目使いに己の中の雄がズクリと震える。
このままここにいさせてはいけないと冷静さがまだ残る脳はリーシャを抱き上げさせた。
そこに居る船員達にこいつを寝かせてくる、と言い後は任せる。
(酒を飲ませるとこんなにも変わるのかよ……明日には忘れてそうだな)
本人の飲む前の反応を見るからに性格が変わるのは知っているが何が起こったか知らない様だった。
本人曰くこれでも良い年らしい。
「おい、水飲め」
「ん、飲めない……頭ふらふらするよ……」
自室のベッドに寝かせ水を汲むが受けとれそうにない様子にローは自身が招いた事だと言い聞かせ背を支え起き上がらせる。
しかし、手も動かさない寄った女は濡れた唇で命令してきた。
「飲ませて……?」
大胆な言動になったリーシャは普段とは比べ物にならない程色気があり脳内に邪な思考が蔓延る。
こうなってしまえば後は枷が外れてしまい自制が聞かない、そんな音が聞こえた。
「そうだな。俺に命令したんだこれくらいは貰わねェと」
「?、ロー、さん?」
グッとコップを口につけ一口分を入れると直ぐに彼女の柔らかな唇に押し付ける。
夢心地な記者は何をさせているのか分かっているのかいないのか口を少し開け水を求めた。
その隙に口内へ舌を入れ慎ましい小さな舌に絡める。
卑しい音をさせて何度もリーシャを夢中になってしまう程求めた。