一番星のヒーロー | ナノ
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ローを連れだってアパートを出ると彼は嫌そうに太陽を睨み付けた。
晴天過ぎる、曇りだったら良かった、等と悪態をつきながら近くにあるショッピングモールの中にある個室付きのレストランへ入る。
のだが、その途中でもローは黄色い視線に晒されていて行く先々で女性が振り返ってはその整った顔を凝視しては声を上げたりと注目の的。
彼は顔を歪めてはオドオドしてまるでライオンのいる檻の中に放たれたウサギのように縮こまっていた。
最終的にはリーシャに引っ付き顔を下げて歩くという状態だったので内心あらら、と積極的な行動をさせることを諦めパフェが売りのレストランの個室へと行く。
店員も新人らしくローにうっとりとした顔を浮かべて注文を取っていた。
その視線に気づいた彼はメニュー表で視線を遮断していたので代わりにパフェとお昼ご飯を注文する。
店員の子は注文を受け終わると名残惜しそうに出ていく。
それを見るともう大丈夫だと彼に伝え、メニュー表を下げた幼馴染みは溜め息を吐いた。

「何でこんなに色目を使われなきゃならねェんだ…………サングラスが欲しい…………」

「それもありだけど、サングラスしたら印象が分からなくて出会えないよ?それにローが顔を隠して歩くなんて寂しいし……」

「っ、リーシャ……!」

「だから、堂々と歩けばいいよ」

「ああ…………そう、だな」

「ローがそうやって生きてると私も嬉しい」

「!!…………お、お……俺も……その、お前が……笑う姿を見ると、う、うれ」

「お待たせしましたーっ」

感激したのか何か言いかけたローを遮りタイミング良く運ばれてきた料理。
持ってきたのは先程の女性店員。

「わぁ!美味しそう」

「ぅ、っ、っ〜〜!」

「食べようロー」

「〜〜〜〜!」

「ひっ!?そ、それでは、ご、ごゆっくり〜〜!」

ほかほかと美味しそうな料理に気を取られていると女性店員は蒼白な顔をして出ていく。
ローを見ると店員が出ていった方を向いて鋭く、まるで仇を見るかのように睨み付けていた。

「あっ、ロー!また女の人を睨んでっ、駄目だって何度言えばわかるの!」

「!?…………だ、あ、アイツが……俺の、じゃ、邪魔……っ、しやがったから…………だっ」

「ん?聞こえないっ、もう一回!」

「〜〜!っ、わ、わ、るかったよ!こ、これで……いいだろ…………」

「うん!いいっ。許す!」

潔く認めた彼の頭をぐりぐりと撫でれば驚いたように固まるロー。
それを見ると料理が冷めないうちにと箸を手に取る。

「お前、昔から…………時々、清々しいくらい簡単に物事許すよな」

「んー…………だって、許さないって…………ローは言って欲しいの?」

「!?…………それは、困る……」

「そういうこと。私は別にローを困らせたくて注意するわけじゃないし、ましてや意地悪で言うわけじゃないから」

ぱくりとハンバーグを食べながら自分の意見を口にするとローは悶えたのか聞き終わるや否や注文したカレーをバクバクと大胆に口に詰めていた。
そんなに食べたら喉が詰まると言おうとすると案の定グッと呻き声が聞こえ喉を手で押さえたので水を渡す。
無事に生還したローはやがて正気に戻ったのか落ち着いた様子で再びスプーンを動かした。
食べ終えた後はお待ちかねのパフェだ。
予め割引券を渡しておいたので記述通り苺がサービスされる。

「お待たせしましたー…………!?」

持ってきたのは先程とは違う店員でローを見た途端に顔を赤く、恋する乙女の如く染める。
ローはそれに気付かずパフェ一点に釘付けだ。

「…………生クリームが少ねェな」

「それが普通のパフェだって……」

苦笑して言うが口をヘの字にするロー。
そうしていつの間にか居なくなっていた店員に珍しいこともあるものだと、いつもなら少し長目にここに立つ女性達の性からして思ったが、中にはそんな人もいるのだと少し嬉しく思った。

(ローを見ちゃう人しかいないなんて彼には酷過ぎる)

それにしても、とパフェを前にしたローは目を輝かせ嬉しそうに笑みを浮かべること。
その顔を見ることが何よりも好きだったりする。
それほど可愛くて可愛くて仕方がない。

その時、

「お待たせしましたっ。生クリームのサービスです」

「…………え!?」

居なくなっていた店員が戻ってきたと思いきや、生クリームの缶スプレーを片手にそう告げた。
そんなサービスなど券にも、メニュー表にも載っていなかった筈だ。

「あの、メニュー表に載ってなかった気がするんですけど……」

(これは、勝手にそう言ってるだけ?明らかに…………)

考えても女性店員がこんな行動を取る理由は一つしかない。

『…………生クリームが少ねェな』

の先程のローの一言だ。
いつもの女子力が上の発言をする彼が発したオドオドしていない平坦な文句。
彼女からしてみれば好感度を狙った恩を売るチャンスなのだろう。

「え?平気です。店長に交渉したので!」

(!…………まさか…………)

交渉して生クリームが増える等ということは普通考えられないので考えられることは、彼女が実費の分を払うと店長に話したか、店員の特典を使い進言したかのどちらかだろう。
最悪の考えは、振り払うことにした。
ローは嬉々としてそれを受け入れパフェのグラスを彼女の前に移動させる。

「…………くれ」

「は、はいっ」

今にも黄色い声を出しそうな女性はスプレーをグラスに傾け、これでもかいうほど増量した。
女性店員には非情に悪いが、今の幼馴染みはパフェにしか視線が行っていない。
生クリームを増やし終えたローの膝をトンと軽く叩くと彼はこちらに顔を向け首を傾げる。
目でお礼を言うように足すとビクリと肩を揺らし、目をあっちこっちにさ迷わせた。

「…………礼を言う」

「そ、そんな!こんなこと……当然のことをしたまでです〜!」

大概この人もローのぶっきらぼうな言葉を眼中ににも入れていないのだろう。
ありがとうが言えず恥ずかしくてクールなだけの上部で作られた声と言葉は甘く、とても好感度を強く感じたと安易に分かる。
彼女の方を見なくて、それもクールな外見を彩る材料でしかなさそうだ。
ただ照れていて、つい口から上手く言葉を出せなかったことに赤面している彼のことなど見てすらいない。

「では失礼します〜!」

やがて居なくなった店員のことなど既に忘れているローはパフェを味わうように食べ始めた。
苺をぱくりと食べ生クリームを味わう姿は整っている顔付きとはアンマッチ。
しかし、そんな彼でも可愛く思えるのだからリーシャの長年の腐れ縁のとしての感覚という名のローフィルターは専用と化しているのだろう。
彼がどんなに駄目でも男力が皆無であろうと彼が彼として生きていってくれれば構わない。
それを口にしたことはないが態度や行動で示しているからか、幼馴染みはいつも笑みを向けてヒコヨのように慕ってくれる。

「?……お前も食べたいのか?」

「ふふ……来れるの?」

ジッと見ていたからか勘違いをして的外れの言葉を述べた彼に尋ねるとこくりと頷く。
貰おうとグラスを受けとるとスプーンを渡され新しいスプーンを取ろうと浮かした手を止める。
きょと、としてスプーンから手首を見て腕を辿り顔を見ると自然な顔をしていたので首を傾げてから使っても大丈夫なのかと聞くと相手は分からないようでもう一度スプーンを握らせようとした。

「間接キス……に、なるけど」

「あ?………………!!?」

漸く自身の行動の疑問に気付いたローはスプーンを勢い良く手元に戻しペーパーの上に置くと…………テーブルに突っ伏してしまった。
可愛い行動にしか思えないが本人は大真面目に悶えて恥ずかしがっているので顔を緩ませるのを止め、新しいスプーンを手元に持ってきてパフェを食べる。

「…………う、美味いか?」

「うん。甘くて幸せな気分になる」

彼は腕を突っ伏した状態のまま顔だけ出して目元をこちらに覗かせて上目遣いで見上げてくる。

「だ、よな…………食べたかったら、全部やる」

「ううん……私はもうお腹いっぱい。それにローの方が食べたかったんでしょ?」

本当はお腹は程度に膨れていてパフェくらいは食べれたがローの楽しみを減らすことまでして食べようとは思わない。
微笑みながらグラスを返すとぱちくりと目をしばたかせ理解したのか彼は嬉しそうに再びパフェを堪能した。


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