一番星のヒーロー | ナノ
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「トラ男〜〜!!」

「っっ!?………………麦藁屋……か?」

「みたい。凄い声だったねー……ふっ」

「!!…………わ、笑うなっ。今のは麦藁屋のせいだ……!」


突如扉付近の外から大音量の叫びが聞こえ呼ばれた本人はかつてない程戦いた。
ビクつくなんて生温く、まるで世界が震撼したような飛び上がり様にこちらも驚愕したがそちらに笑ってしまう。
驚き方がまるでアニメみたいだ。
顔を赤くして説明するローに目尻に溜まる涙を拭うと「そうだね」と一応頷き扉に向かう。


「うるっせええええ!!てめェはまたかよ!!今此処で殺ってやろうかァ!あ"あ"!?」


扉に向かうときに反対側から叫び返す声に足が止まる。
この声は、


「キッド!お前も外に行かねェか?」

「話を摩り替えんな!近所迷惑も甚だしいんだよ!」


またもや怒声にすら竦み上がるような事にはならなかったルフィに相変わらずの天然だと内心笑う。
するとローが立ち上がり扉へと向かい外へ出た。
ついて行くとやはりキッド達にうるさいと言っていたようだ。
なかなか仲が良いこの三人は何もかもがバラバラだが命令されるのを好かないという共通点と仲間という者を複数集めそれぞれサークルのように集まっているという。
ローはペンギンも含めてシャチというアシスタントを雇っている。
中学からの友人で、キッドもローもルフィもそれぞれ中学時代の友人でよく集まっていた。
彼らも中学からの顔見知りで例に漏れず二人とも有名な人達だ。


「キッドくんは今日は練習休み?」

「キラーにどやされてな」


キッドはボクシング業界でルーキーと呼ばれる選手。
ルフィは祖父が警察のトップの側近という地位。
なのでこのアパートに住んでいる。
理由は違うが結局は腐れ縁というわけだ。
それにキッドはローに良く戦いを申し込む。
リーシャは、詳しい事は知らないが中学時代に決闘をした時に両者共々互角で勝負は引き分けに終わったらしい。
まさかローがそんなに強いと思わなくて命がかかるものには強くなるのだろうかと疑問に思った。
それからと言うもの、キッドはボクシングで優勝してもローをライバルと認識している。
それに面倒なローは毎回手を怪我すると仕事に支障をきたすと彼の申し込みを上手く断っている。
しかし、それも本当なのでリーシャも何も言わない事にしていた。
彼等を見ると今だに言い合っているのでここら辺で割って入る。


「三人共、今日はそのくらいにしといた方がいいよ……ルフィくんは確かガープさんが家に来る予定だったよね?キッドくんも今からボクシングの何とか番組始まる時間でしょ」

「あ!そーだった!早くアレ隠さねェーとやべー!!」


ルフィは慌てて自分の部屋に戻る。
キッドも悔しそうに部屋に戻っていく。


「流石に扱いが上手いな」

「だってもう中学から皆と居るんだよ?癖だって知ってるんだから」


ローが感心したように言えばクスリと笑いながら自分達も自室に戻ろうと足す。
先に玄関へ上がりテレビがある部屋へ入り座れば、ここは毎日が賑やかで楽しいと不意に感じた。
ここだったらローの引っ込み思案な所があっても平穏に暮らせる。
勿論それは治さなければいけないが、ここから少しずつ女性に免疫を付けて行く事だって辞さないつもりだ。
ある種のショック療法も試してみようと画策している。
そして、そろそろ彼が来る時間だ。


−−ピンポーン


考えている間に、予想通りにインターホンが鳴る。
このシステムは大変便利だが、外に待たせてしまうという問題があるので素早く対応しなければと行動した。
ローが来たのか、と聞いてきたので相手の顔を確認した後に頷く。


「あいつもよく来るな」

「アシストなんだから当然だよ」


あはは、と笑って扉の解除を解く。
まだ此処に来るまで少し掛かるから今の内にお茶等を用意しておく。
ローも絵本の作成道具を用意している。
そして、この部屋のインターホンに来客が来たことを知らせる音。
いつものように玄関へ向かって扉をガチャリと開けると変わらない笑みを携えたシャチが立っていた。


「こんにちは。今日も暑いですね。これ、この前行ってきた旅行のお土産です」


挨拶と共に差し出された物を受け取り礼を言いつつ、上がってもらう。
ローの居る部屋まで来たら彼にも言った。


「ロー、シャチくんがお土産くれた」

「シャチ、言ってきたんだな」

「はいっ、めちゃくちゃ綺麗でしたよ」


目を輝かせて報告するシャチの健気さと慕う気持ちは昔から一途だ。
子犬が尻尾を振るような……いや、大型犬が甘える図の方が合っているかもしれない。


−−ピンポーン


「あれ?宅配便?」


それにして頼んだ覚えのない。
シャチと話していたローも首を傾げている。
一応そうだったら困るので出てみるとリーシャよりも年下に見える女の人が写っていた。


「…………誰?」


まさかの悪戯なのか、それともローをストーカーしているのか。
危機感を覚えているとローとシャチが同じ様にインターホンを覗く。
ローも知らないらしく怪訝に眉を下げていた。


「チコ……!?」


反応したのはシャチだった。


「シャチくん知り合い?警察に通報しようかと思ってるんだけど……止めた方がいい?」

「うっ、その、出来れば止めて下さい……こいつ、俺の妹なんです」

「妹……?聞いたような気がする」

「なんでその妹がここに来てんだ」


ローの嫌そうな声音にシャチは苦い顔をする。


「俺の妹……面食いで。ローさんをかっこいいって自慢しちまったから後を付けてきたのかもしんないです」

「シャチ……分かってるな?」

「はい、心得てます」


ローが目で言うとシャチは神妙に頷く。説得して追い返せという事だ。
リーシャはどちらでも良かった。
それに入れない方が良いと思ったのだ。
妹が面食いならば余計にローと合わせない方が絶対にいい。
ローは確かに思わず振り返ってしまうような顔立ちだ。
でも、性格を垣間見てしまえば相手はそのギャップに、勝手に期待して勝手にがっかりする。
それを何度も繰り返したから今のローが出来てしまったと言っても過言ではないのだ。
という事で、シャチ VS 妹 の戦いが幕を開けた。


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