■ 02
次の依頼はどうする?と聞いてアンリエッタが街を出るというのなら旅の続き。
リーシャもまんまと嘘の依頼に嵌められたので暫くする気が起きなかった。
その意を汲んでくれたのか今回は街を出るらしい。
リーシャは基本面倒で仕切られたいタイプなのでその辺の判断はアンリエッタに丸投げしている。
食料とか必要な物は殆ど彼女任せ。
おんぶだっこのお話ではない程の負担に学園時代や冒険駆け出しの時は悪いと思っていたけれど、出来ないしやろうとして更に負担をかける結果になったのでそれも彼女に任せる事になった。
重い物を持とうにもリーシャですらアイテムを収集するのはちょっとしか出来ないし腕に掛けて持っても進みを遅くし更に出遅れる。
野宿に関しても同じ。
アンリエッタは空間魔法のアイテムを収集出来る魔法を拡張してくれたから自分の分だけは何とかなった。
アンリエッタは凄い、携帯みたいなものやその他の物を開発出来る魔法を持っているらしい。
仕組みは分からないけれど想像したら出せるってものらしいが万能だ。
それを他の人に披露されると厄介が自分で歩いてやってくるのでお願いして見せないでくれている。
アンリエッタも末路は想像出来るのか快くオッケーしてくれた。
「次の町が見えてきましてよ」
アンリエッタに高速魔法を掛けてもらい歩いていると見えてきた町の外壁。
白い塗装が良く見える。
「あー、なんかやっぱり拠点あると安心しちゃうよね」
和む。
やはり一人よりも二人が楽しい。
「そろそろ夕刻ですもの。タイミングも良好のようで」
フワッと浮いているアンリエッタは目立つ。
と言うわけもなく、すんなり入れた。
でも女しか居ないので訳ありと思われるから毎回入るのに説明が居る。
すんなりなのはアンリエッタがちょっとだけリーシャも含めて目立たないように認識されにくくなる魔法を掛けてくれたからだ。
必死に思い出してやっと記憶にある、程度の認識になるから便利。
こうでもしないと職質が面倒だ。
別に悪い事をした訳でもしにきた訳でもないで、興味本位で聞かれるのはうんざり。
「アンリ、見て、やっとカフェあった」
前の町はカフェどころか可愛い雑貨すらもなかった。
漸く買い物のし甲斐がある所を見つけられた。
とは言ってもアンリエッタはアンティーク調が好みなのであっても雑貨屋には興味ないだろう。
「ここ最近は働き詰めでしたのでここら辺でゆるりと休暇に致しましょう」
「やったー、休み休み」
最近は貯金日ばかりで流石に辛かった。
リーシャは到底手伝いをする事を必要としない依頼であっても付いていく事にしている。
流石に家でのんびりして待つのも可笑しいかなって。
今回は結構賑わっている場所であるから楽しい催しもある筈。
(わたあめ食べたい)
あのふわふわした奴。
単に砂糖を食べたいってだけなんだけどね。
アンリエッタに頼めば良いのだが、自身で作りたい。
「先に宿を頼みましょう」
リーシャは彼女の案に頷く。
そのまま進もうとしてアンリエッタが唐突に「あら」と言って楽しそうに笑みを浮かべた。
どうしたのだろうと思っていると地面からふわりと浮いている子は秘密ごとの中身を述べる。
「前に世界の秩序を乱す組織『メロウ』について話したのを覚えてらして?」
「うん。裏と表の顔があるって奴?悪役だよね」
「その組織がこの町に居るみたいなの」
「うわ面倒臭い」
アンリエッタからのいらない情報で直ぐに出てきたのはその言葉であった。
その発言に介して黒いゴスロリっ子はクスクスと笑う。
「貴方ならそう言うと思っていたわ」
楽しそうに語るのを聞いているのだが頭の中ではどう厄介ごとから逃れられるのかしか無かった。
その組織『メロウ』については結構アンリエッタ越しに聞いている。
何でも表では善良な事をしている何でも屋のようなことをしていると周りに認知されているがアンリエッタが言うには裏で裏組織の支援をしていたり逃走の道を作っていたりとバレないように暗躍する組織でもあるらしい。
その手伝いをして後片付けもしてその片付けを表でやり好感度を上げているという狡猾を体現している集団だとの事だ。
「絶対関わりたくない」
断言すると分かったわ、と心得てくれた。
彼らと関わり合いたくないのでその関係のある依頼を受けないという事。
彼らと幾度となく対峙しているが彼らの組織には大きな大陸が裏で繋がっていてアンリエッタが訴えたとしても証拠も無いので対峙した部分しかなく、彼女も捕らえてないし捕らえたとしても無罪で釈放される程の大物がバッグに居る。
だから無駄骨になる行為をするつもりはないので捕らえるのをする事はしない。
だが、相手もアンリエッタと対峙するのは分が悪いと認識しているので因縁の相手と向こうは感じていてはた迷惑なのだと毎回聞いていた。
学園を卒業してからは厄介レベルが高い物も関わっている可能性が高い物は受けていないとの事でまだ会っていないと言っていたのを思い出す。
組織『メロウ』のリーダーは頭の切れる男。
「格好いいとの評判を世間から受けていて見目麗しいらしいので観賞用としては良い物件ですわよ」
アンリエッタの発案にとんでもないと首を振る。
厄介事の種等見に行くだけでも厄介であるし、そこに至るまでか既に面倒。
彼女だってリーシャの面倒で放置主義なのを知っているから言ったまでの事。
だろうと信じている。
正反対の厄介を連れてきて滅茶苦茶に引っ掻き回してしまうタイプの彼女がこのまま大人しく引き下がってくれるのかはまだ懸念もしていた。
「ふふ、わたくしが問題を起こすと?暇になれば考えなくはないでしょうが、今日のところは………あらあら」
途中で言葉を切った女の発言には不安しか残らない。
けれど、相棒でもある相手のあらあらは何か問題が起こっているか起ころうとしているかの前提が極めて高い。
聞きたくないので敢えて聞かない。
「どうやら問題発生がありそうですわね。まぁ私達には関係ないようですので捨て置きましょう」
「いつでも捨て置いて結構なんだよ?」
敢えて首を突っ込むその特効性を止めてくれれば更に安心出来るというのに。
「今のところは、です」
おっとりと話すアンリエッタは浮遊しながら目的の宿に着いたのだろう、立ち止まる。
今日止まる宿はここにするらしい。
「今日は宿でと思いましたが、変更しましょう。野宿に」
(変更の仕方、まさか宿に問題?うん、なら外に行こっ)
アンリエッタに習い宿から離れる。
「サクッと外へ向かう事にしよう」
彼女を催促し雑貨屋を見ながら来た道を戻った。
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