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■ 01

???side

男が男に駆け寄り耳打ちする。

「“ブラックドール”が本格的に活動を始めたとの事です。どうしますか」

「取り敢えず様子見だ」

耳打ちされた男は余裕な仕草で笑みを浮かべ、次いでの情報に更に気を良くする。

「今まで一人で活動していたあの女、どうやらパートナーか友人かはまだ分かりませんが同伴を許してます」

「へェ、あの鉄仮面女が?面白ェ」

是非それは間近で見てみたいと思う。
思い付いた楽しい計画。
ここ最近はイマイチ刺激が足りなかったので仲間達のストレス発散にも適している筈。

「ゲームを考えついた。全員集めろ」

男が言うとその命に従うために動く。
それを見送り男はゆったりと椅子に座り直した。

「精々楽しませてもらおうか」

イエローブラウンの瞳が愉しげに細められた。



***



ドシーンドシーンと地響きを肌で感じながら遠い目をして走っていた。
隣にも悠々とつまらなそうに浮いている女。
当時進行に見えて若干浮いている方が後ろに居る。

「契約違反契約違反契約違反〜!!」

泣きながら叫ぶ。
心底この依頼を只のネズミ掃除と言った依頼主に怨念を向けた。

「あら、あんなの只の図体が大きいだけのネズミではなくて?」

隣でさっきから浮いている女がそう言うので違うと力強く言う。
ゴスロリの服装をして黒い傘を広げ浮遊している女の言う事はいつも規格外だ。

「紅茶飲むのは良いけど、せめて、せめてもう走るのを止めたいっ。どっかに逃げよう?」

提案をすると令嬢口調で先程から余裕でいる相棒を催促。
もう足もクタクタ。
けれど今止まれば確実にデッドなエンドになる。

「逃げても依頼完遂にならないのですけれど。そうね、そろそろヤってしまいましょう」

物騒な発見をすると令嬢風の女は指を超デカいネズミに向けて唱える。

「ファイア」

通常のファイアよりも五倍は威力がある炎によりネズミは居なくなる。
跡形もないのは流石に困るのだが。
心配していると水の魔法を使い鎮火。
ああ、それなら証拠もある。

「別に走らずとも守りに徹して耐える方法もあったのでは?そちらの方が楽でしてよ」

「目の前にデカいのがいて精神衛生上宜しくなかったんだよ。無理だよ。トラウマだって」

リーシャはちょっと魔法が出来るというこの世界からしたら特別なものでもない使い手だ。
この世は魔法ありのファンタジー世界。
対する令嬢の相棒、アンリエッタは魔力もその他もとても完璧な子。
二人は学園で出会い学園で友情より強い絆を結んだ仲。
つまりは相棒、相方の仲だ。
進路はフリーの冒険者。
その実は只の好きな時に旅をして回る二人旅。
差がある二人を結ぶのはまあ色々あるのだが、リーシャは平凡であると強く言っておこう。
アンリエッタは令嬢の風貌をしているのに考え方はそこら辺の荒事が得意な男と似ている。
大ざっぱだ。
この依頼だって報酬が高いから何かあると言ったのにハプニングもスパイスだなんて言うから受けた。
その結果はもうお分かりだろう。
依頼の内容とは大分違う駆除作業により苛々が募る。

「これって立派な契約違反じゃん。はぁ、疲れた」

無駄に体力を消費して今すぐ安全地帯に行きたい。

「ふふ。まあまあ、紅茶でもお飲みなさい」

優雅に紅茶入りのカップを渡され受け取る。
マイペースであるが頼れる最強の相棒。
平凡な自分だからこそ助かっている。
この子が居なければ細々とどこかのお店で働いていた未来もあったが、今はこれで大層満足だ。

「波乱万丈はやっぱり嫌だけどね」

ぽつりと呟く。
面倒臭がりである己と厄介事をひっかき回すタイプのアンリエッタ。
傍から見ればアンバランスだろう。

「そういえばアンリってフリー冒険者の中では結構有名だよね」

アンリエッタと冒険者じみた真似をするようになったのは卒業した後だが、彼女は学園時代からやっていたらしい。
彼女は元は結構位の高いご令嬢だったが学園で会った時には元が付く訳ありな子になっていた。

「今流行のツエー系令嬢を模したらあだ名なんて付けられて、私望んでいませんのに」

ふう、と溜息を付く。
その仕草は気品に満ちている。

「だね、流行の国外追放系だよって、毎回この話ししてるね私達」

学園時代には散々二人で楽しく話していた。
今では笑い話ですわ、とは、アンリエッタ談。
実はこの世界、変な病が流行っているのだ。
王族や貴族、平民に関わらず全てに掛かる。
それにより国は乱れ混乱の極み、果ては滅亡の可能性も高くなるとか。
まだ話を聞いただけで見た事は無いが、出来ればそんな面倒の中の面倒等お目に掛かりたくはない。
願わくば関係ない時にやらかしてほしいところだ。
この世界はファンタジー、だからそんな国規模の病もあるのだろう。
他人事故にチラホラと考えて、歩いていると依頼を受けたギルドに着いたので早速クレーム。
その後、交渉してそれ相応の額をせしめた。
でも、最初に内容と違う事を紙に書いた方が悪いんだし、せしめるってのも変。
なので頂きましたよ。



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