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「#幼馴染」のBL小説を読む
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■ 08

よし、これでもう視界に入らない。
ゴスロリを着た人形なんて見てない。

「次の扉を」

よし、居ない。
誰も居ない事を確認する。
カーテンが揺れていない事も確認。
もう扉を開く必要性を感じなくなっていた頃、ローが包帯だらけの魔物を片手にこちらへ寄ってくるのが見えて懐に仕舞っていたライターを包帯の魔物とローに向けて放つ。

「ぎゃあああああああああああ」

包帯男が炎に近寄りたくないと暴れる。
それはこちらの台詞、であるのに、暴れる程ローが嫌そうに炎を見て魔物を放り投げた。
ここまで運んできた事が謎であるくらいあっさりと。
もしかしてリーシャに嫌がらせのつもりでもってきたのではないか、と思ったが、そんなにお互い親しくもないのでないか、と思い直す。
パタッと扉を順次開いていくのにも疲れたので一旦下の階段へ降りる事にした。
少なくとも一人ではなくなるだろう。



その頃、アンリエッタはメロウのメンバーをシャンデリアに引っ掻けて中ずりにしていた。
口封じの魔法で声を出せないようにして。
元々、彼らはアンリエッタを偵察しに来ていたのでつり上げても文句は言えない。
勝手にクエストを受けた事にもちょっぴり不満だった。



下に降りると誰も居なくなっている事に気付いたが、トップを残して帰るとは考えにくい。
アンリエッタが部屋に閉じ込めたかもしれない。

「アンリエッタ!」

「ここよ」

漸く返事を返してきた女に安堵の息を洩らす。
アンリエッタは幽霊を浄化させたとい言うので、それならもう帰ろうと足す。
メロウの者達はどうしたのだと聞くとニッコリ圧のある顔で誤魔化したのでそれ以上聞くわけもない。
幽霊屋敷の外に出ると来たときよりも空気が澄んでいるような気がした。



ローが下に降りるとシャンデリアの揺れ具合と影に違和感を感じ、上を向く。

「あの女っ」

ギリッと脳裏に浮かぶドールにしてやられたとぶらりぶらりとシャンデリアの飾りとして引っかけられているメンバーを見る。
彼らの顔にはすいません、やられましたと落ち込む表情があった。



リーシャは幽霊とかけ離れた距離に来たので漸く一息つけると安心した。
ロー達もロー達で幽霊に違わぬ程アレだった。
ロー以外は全員がシャンデリアにずっと引っかけられていたのでぐったりだ。
皆は背を互いに向けていて、疲れている。
しかし、それでもアンリエッタに避難の目を向けるのは忘れていない。
器用だ。

「くそ〜、アンリエッタめ」

「しっ、黙っとけ!」

アンリエッタを怒られたのだからまたその隙をつかれるのは堪らないと男が嗜める。
しかし、何もされてず疲れていないローがアンリエッタに対して文句を連ねた。

「おいドール。おれの部下を苛めるな」

「遊んでるのよ」

「「「同じだろ!?」」」

された人達が一斉に言う。
アンリエッタはよく大人数に言われ平気だなと凄いなって思う。

「トラファルガー・ロー。貴方邪魔よ」

今日のギルドといい、と彼女は口角を上げて彼を見る。
駆け引きとかできて大人だな。

「殿方は女の邪魔をしちゃいけないのよ?」

ふつ、と首を傾げた。
その仕草は艶やか。
流石は何年も品位を学んできた人だ。
それと、生まれ持ったものもあるのだろう。
アンリエッタの姿を見ているとローがこちらを睨み付けるように見ているのが見え、困惑。
何かしてしまった覚えもなく。

「わたくしの子に粉をかけないでださる」

アンリエッタがリーシャを庇うように前に立つ。

「目ェ腐ってんじゃねェのか。粉かけてねェっつの」

「焦がれていたように見ていたではありませんの」

確かにすんごい睨んでたよね。
仇かってくらいに。
自意識過剰ではないから余計に分かる。

「ドールお気に入りの人形を観察してただけだ」

ドールのお人形って。
アンリエッタのお人形ってことだよね?

「あら、お人形なのはお前達よ?」

アンリエッタが不思議そうに睫毛を震わせるとローを除いたメロウのメンバーが立ち上がり突然バレリーナのダンスを踊り出した。
多分これはアンリエッタの魔法。
慌てた様子のローが部下達を見ている間にアンリエッタに手を取られ転移魔法で屋敷を出た。

「ふふ、見たかしらあの顔?」

笑いを溢して屋敷を指す。
確かにダンスは見事だったかな。
自分達が外へ行く目眩ましにはなったようで追ってくる気配はなかった。



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