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「聞きましたか?シスターリーシャ」
「何をです?」
ランス神父が朝早くの教会で話し掛けてきたので首を傾げながら聞き返す。
「この島に有名な海軍の少将がおいでになられるそうです」
「海軍の……いつ頃ですか」
「明後日の昼には着くと知らせが届きました」
「わかりました。それにしても、何故そのような地位の方がこの島に来るのですか?」
「なんでも、近辺の海賊の討伐と島の治安を調べにくるそうですよ」
ランス神父は詳細を述べて最後に用件を頼んできた。
「そこで、案内を貴女に頼みたいのです」
「ランス神父は確か明後日に大切な用事がおありでしたね。私で良ければ引き受けさせていただきますよ」
「ありがとうございます。私が案内出来れば良かったのですがね……」
残念そうな声音で俯くランスに慰めの言葉を投げかけ、案内をする準備をする為に外へ出た。
曇る空を見上げ今日は天気が悪くなりそうだと不安が過ぎる。
人が少ない通りに出ると、突然腕を横に引っ張られた。
何をされるのかと身構えたが予想に反してローが目の前でこちらを睨んでいた。
睨まれるような事をした覚えがないリーシャは困惑しながら首を傾げる。
彼は口を開くなり、海兵に近付くなと言う。
ますますわけがわからない。
もっと詳しく言われたのが、今日港に入港する海軍に近付くなと強く言われる。
そんな事をいきなり言われてもとローから後ずさった。
しかし、彼はリーシャを壁に押し付け動けなくしてきたので逃げる事が出来ない。
ビクともしない腕。
「は、離して下さい。私は今から大事な用があるのです……」
「自分の命よりもか」
鋭い空気と冷やかな眼にゾクッとした。
一体、彼は何に対して警告しているのかさっぱり理解出来ない。
海軍に近付くべきではないのは海賊であるロー自身だろうに。
それとも、単に自分の居場所をリーシャに言われたくないから来る行動なのだろうか。
「ご安心下さい。貴方の事は言いませんから」
だからこの手を退けて欲しいと頼めばローはゆっくりと力を緩めて離した。
今の内に広場へと出てしまおうと足早に背を向ける。
「違う……リーシャ」
その時、耳が密かな声を拾ったが依然としてよくわからないままだった。
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