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14
ローは気が済むまでひとしきり笑うと相手から見れば死角になる建物に手招きする。
それを合図に出てきた顔に少将は身体を強張らせて震える指先で女を指した。

「ば、馬鹿な……死人が……まさか」

「生きてたって、オチだが?」

まるでタネを明かしたマジシャンのような気持ちになる。
相手は蒼白の顔色で一人のシスターを見つめ、リーシャもどんな顔をすればいいのか最初は戸惑っていたがもう一人の自分が「正々堂々と」いう言葉を胸に反響させ、胸を張って姿を見せればいいのだと自信が湧いてきた。
ローはリーシャの手首を掴み自然な動作で引き寄せる。
いきなりの出方に彼を見上げるとローもこちらを見ていた。

「と、いうわけだ。惜しい女をお前は逃した」

「……私は」

「お前は俺の恋人だ」

そう言われて信じられないと否定することもなく、ストンと欠けていたピースがハマった感覚がした。
自分は目の前の人間を知っていて『恋人』と断言されても違和感を抱かない関係なのだと。
何故か彼は海軍を悪魔の実とおぼしき能力で攻撃しリーシャを抱えて海へ向かった。
最後に片隅で腰を抜かしていたランス神父に一礼しておいたので失礼はないと思う。
心のどこかでこのまま船へ乗せられるのだろうという確信があった。
彼と出会ったばかりの頃は絶対に海賊の仲間になんてならないと頑なに拒否していたが、記憶が少し戻った自分の性格はどうやら冒険事を楽しみにしているようだ。
心臓がドクドクと鳴る胸に手をやりローに尋ねた。

「私はまだ完全に記憶が戻ったわけではないです。それでも、よろしいのですか」

「分かりきったことだな。どんな姿をしていようと、記憶を失っていようと拒否権なんてねーよ。最初からな」

「そうですか……」

担ぎ上げられている状態で腰に回ったローの腕にブレスレットが見えた。
同じものをリーシャも付けていて、イニシャルは『T.L』。

「貴方の事を少し、知りたくなりました」

「くくっ、当然だ。俺は惚れ直させるのが上手いからな」

冗談めかして聞こえた言葉に女は男に初めての笑顔を見せた。






もう一度二人で未来を走る




まずはお互いの名前から、なんていかがですか


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