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- ナノ -
 
13
ローは瞳を揺らしながらこちらをゆっくりと確かめるかのように見詰め、

「けど、生きてた」

確信に満ちた声音でリーシャの頬へ指を滑らせた。
その動作は幻影を見ている感覚を起こさせ、無意識に目を細める。
まるで手の温もりを知っているかのように。
身を委ね先程のあらぶった感情が溶けていく。

「私は、家を飛び出しました」

「……記憶が戻ったのか」

「いえ、ほんの少しだけです」

ローは執拗にリーシャを探していたからか、記憶を失っていることを早くに知っていた。

「走っている中で私は……ある男性の名を口にしました」

ローは待ち望むような期待の眼差しを向ける。

「‘ロー’と」

「お前は……その名前に心当たりがあるのか」

「随分と遠回りな言い方をなさるのですね」

「まーな」

彼にしては慎重に言葉を選んでいるようだった。

「時として、知らなかった方がいいこともあるだろ」

「そうですね、確かに怖いです」

けれど、何も知らないままでは誰かを傷付けてしまうかもしれない。
口にすればローは目を見開き頭をかいた。
苦笑と歓喜が交じった複雑は面(おもて)に笑みが浮かぶ。

「じゃあ、お前の勇気に免じて一肌脱ごうか」

ローはニヤッと笑い手を差し出した。
勿論、その手を取ることが最善だと立ち上がる。



男はイライラとした様子で神父であるランスを咎めていた。
なぜなら、約束の時間を二十分も過ぎた今でも迎えが来なかったからだ。
怒鳴る男に謝るランスは端から見ていて理不尽に見えた。

「そのくらいにしたらどうだ?婚期を逃した男は癇癪を起こしやすいのか」

「なんだとっ!……貴様はトラファルガー・ロー!?」

鮮やかな笑みを携えた死の外科医に少将は顔を真っ赤な色から真っ青に変える。
怒鳴ることも忘れ間抜けに口を半開きにした男を一瞥してローはヒラリと建物から飛び降りた。

「な、貴様!何故此処に、いや……何故そのことを知っている!?」

「婚期のことか?それとも癇癪のことか?くくく……」

「婚期だっ、生意気なガキめ!」

嘲笑う男に少将は憤り露に地面を足で踏む。
回りの海兵達は突然の海賊による登場で銃を構えている。
余裕しゃくしゃくなルーキーからしてみれば、この程度の海兵を相手にするのはたやすいだろう。


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