81
「起きろ」
「ん、んー」
「朝だ。ご飯食べたくないのか」
「食べたい、眠たい」
「ククッ……よしよし、我が儘なお前だから願いを叶えてやる」
夢と現の境に今だいるリーシャが反射的に答えると問い掛ける誰かが布団を退かす。
次に来たのは浮遊感。
「うん?」
「乙女の夢だぞ」
そのままスタスタと歩く振動が伝わる。
やはり瞼が重くて開けられない。
「誰……?」
「愛しのロー様」
「ぶふぇえええ!?」
流石に目が覚めた。
そのまま己の拳を握りストレート!
「ゴフッ……!」
愛しのロー様もとい、ローはリーシャの殴り込みを受けても尚立っていた。
「なんでローさんが私を横抱き!?しかも倒れてないし!」
リーシャはローから部屋の端に逃げる。
「フフッ、お前がなかなか起きて来ないから様子見に来たんだぜ」
「普通の起こし方ー!!」
「これが普通」
「ローさん論外だな!」
はあはあ、と息が切れる。
朝から過激な攻防にぐったりとした。
「とりあえず、朝ご飯食べる、ね……」
「ああ」
あっさり頷くローに肩透かし。
リーシャは疲れ切った表情でロビーに降る。
朝食は水の町らしく蒸した料理が多かった。
「胃が心配。でも幸せ!」
「お前ご飯の時は切り替え早ェな」
シャチが呆れたように苦笑する。
「腹が空いては戦は出来ぬ」
「へーへー」
キリッと決め顔のリーシャを軽くあしらう。
だが、ご飯をたらふく食べられる至福で気にならなかった。
「うまうま、むぐっ」
「これやる」
ローが隣に座って水菓子を渡してきた。
リーシャはそれをじっと見てありがとうと言う。
「あまっ!うまひ!」
「これも」
「わあ!いただきまーす」
ローは次々に菓子を足す。
「そんなに食わして太らせるつもりですか?」
ペンギンがローに微苦笑で尋ねる。
「あァ。太らせて動けなくなったら監禁する予定だ」
「ぶーーーー!?」
リーシャはローの危険思考発言に口の中から菓子を吹き出す。
シャチは「汚ねェ!」と叫ぶが今はどうでもいい。
「ごほぇっ!ごふっ!がはっ!」
「大丈夫リーシャ?」
「大丈夫じゃないよ〜……」
[ back ] bkm