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あーだこーだと思考に浸るリーシャを現実に引き戻したのは、あの女性の人魚だった。



「今回はスペシャルゲストとして私達の試練を受けていただく人をご紹介するよ!」

「――え?」



今、聞き逃せない言葉が出た。
ドドド!とドラムが鳴り響くと周りが暗くなりスポットライトが右往左往に動く。
そして、リーシャにそれは当てられた。



「え、え、ふえええー!?」

「あの有名な名高き勇者!リーシャちんです!」



司会者の話し方が変わった事ですら気付く余裕は持ち合わせていない。
ただ、この現状に頭がついてこなかった。



「やっぱこうなんのかよ」



シャチのため息が遠くに聞こえた。
左右を見ればローもペンギンも同じ様な顔をしているではないか。



「皆気付いてたの!?」

「薄々な」



シャチが答えるとペンギンも頷く。



「全てが上手く行き過ぎていたんだ。チケットを渡されたのは偶然かと思ったがベポが誘われた時点で前フリを感じた」

「そ、そうだったんですか……」



全く全く気付かなかった。



「まァ、別に受けるつもりだったんだし構わねェと思うがな?」



ローがフッと楽しげに口元を上げる。



「さて!では勇者ちん様にはステージに上がってもってもいい?」

「へ、へー」



脱力感が襲う雰囲気にリーシャは頭が痛くなった。
パフォーマンスを見に来たのにとんだ罠に嵌められたものだ。



「ベポ、は……?」

「ベポちんは都合上不参加になったよ。あ!安心して!楽屋でお菓子とか出してもてなしてるから!」



都合上強制的に出られないからああいう風に連れていかれたらしい。
本当に驚いているから言葉がすぐに出てこなかった。



「試練始めるよ。まずは浮輪とか準備しなくちゃね。はい」



と手渡された萎んだ浮輪。



「あ、膨らんだ状態で渡してもらえないんですね」



げんなりとしたまま受け取る。



「勇者一人だけか?」



ペンギンが人魚の司会者に尋ねる。
すると人魚はパァ!と顔を輝かせて待ってましたとばかりに名を呼ぶ。



「しらほし様!パッパグ!」



いきなり右側の水面に気泡が現れザバァ、と二つの影が出現した。
この現れ方はあれだ、ペンギンが登場した時を連想させる。



「は、初めまして……」

「おめェらが勇者一同か!」



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