76
「そこにおられる白熊様をどうか少しの間だけお借りできないでしょうか!」
「……へ」
係員は意外な言葉を五人に投げ付けてきた。
その人は一度発言をするとここぞとばかりに理由を言ってくる。
「実は海のパフォーマンスの役者が足りなくてですね」
「役者?人なの?」
「あ、はい……特殊な特技を披露するショーなのです。お見受けしたところ、白熊様は二足歩行であるくという特技がおありなようなので失礼ながら申し出させていただいたのです」
係員が一息に終えると暫し場が静まる。
「俺別にいいよ」
「本当ですか!?」
「うん。面白そうだしね」
ベポはニコニコと笑顔で承諾した。
ロー達は「ベポがいいなら」とあっさりと認める。
リーシャも彼のパフォーマンスを見てみたくなったので同意しまくった。
後は係員がベポをパフォーマンスの楽屋に連れて行き、四人はパフォーマンス会場へと別れた。
「ひゅー、満席」
シャチが口笛を吹きながら驚く。
「あ、席が空いてる」
ちょうど最前列の真ん中が四人分空席だったのでそこに向かう。
「ペンギン」
「はい」
「どうやら初めっから用意されてたらしいな」
ローは「面白ェ」と小さく呟く。
ペンギンも腕を組んで前方にある水のステージに目を向けた。
「今日はお集まりいただきありがとうございます」
司会者らしき女性が円状になっているプールの真ん中から現れた。
そこだけは乗れるスペースが造られているようだ。
「たくさんのパフォーマー達が皆様を楽しませてくれます。」
「シャチシャチシャチ」
「一回で十分だよ……」
リーシャは放心状態に陥りかけてハッと隣に座る肩をバシバシと叩く。
「人魚、人魚だよね。人魚しかないよね人魚がいるんだけど」
「パニクる気持ちはわかっけど落ち着け。ここは水族館なんだぞ?いて当たり前だろ」
「えーーーー」
え、しか出てこない。
(あ、そっか。この世界はあべこべなんだったけ?)
しかし人魚が出てくるとは予想外だ。
マーメイド、皆の憧れマーメイドがいる。
(人魚姫とかいるのかな)
見てみたい。
好奇心が猛烈に掻き立てられる。
(王子様とかいるのかな)
「見てみたい!」
妄想がなんか膨らむ気がする。
[ back ] bkm