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「ほあー……」
「口開けてると虫が入ってくるぞ」
クツクツと喉で笑うローにリーシャは空気の抜けた返事を返す。
今はそれどころではないのだ。
「俺、遊園地とか初めて来たわ」
シャチが同じくほうけた表情でポソリと言う。
「遊園地もいいが、まずは宿だ」
「ホテルしかなさそうだがな」
ペンギンが提案すれば誰も意義など唱えない。
少し楽しそうに口元を上げて付け加えるロー。
「今回は少し奮発してみるか」
「え!ペンギン、いいの!?」
「たまには贅沢しても罰は当たらんだろうからな」
「「「やったあああ!!」」」
シャチとベポとリーシャが手と手をバチンとハイタッチさせる。
テンションが上がる合図だ。
「じゃあホテル探さなきゃね!」
リーシャが意気揚々と手を挙げると一行は質の良いホテルを物色し始める。
どれもなかなかの高級感溢れる建物ばかりが情景を美しくしていた。
最初、リーシャが初めて目を覚ましたあの村とはまるで天と地の差だ。
「あのホテルなかなか良くね?」
「どれ?」
シャチが指す場所を見遣れば、目に写ったのは人魚の彫刻。
その次はヒトデ?らしき彫刻が横に並んでいた。
「ヒトデが帽子被ってるんだけど……え、ギャグ?あのホテルは笑いをモチーフにでもしてるの?」
「どうだろうな。とりあえずはあそこに入るか」
ペンギンは吹きそうになっているリーシャの横を通る。
どうやら今夜のホテルをここにするらしい。
「透明感がある建物だね」
ベポに話し掛けられて頷く。
アクアパークと連動しているのだろう町が択一している。
住むのなら近代的な、こんな所にしたい。
「て、まずは旅を終わらせてからか」
宿り木でさえ安定しない冒険よりも早く日常へ戻りたいものだ。
「人魚の石像がいっぱいあるな」
シャチが感嘆の声を漏らす。
内部に入ると出迎えたのは真ん中にそびえる円の形をした水槽。
中には様々な種類の魚が悠々と泳いでいる。
その周りには石像がたくさん置いてあり、わかりやすく言えばドーナツの型の様な構造だ。
「いかにも水族館をモチーフにした感じ」
珍しくてキョロキョロしていると隣にペンギンが歩いてきた。
「予約は済ませた。係員がこれを渡してきたが、行くか?」
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