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ないものを捜すのは不可能だ。
何度、草を掻き分けたかわからない。
「無くなるはずないじゃん。ねぇ、ローさん達も確かに会ったでしょ!?」
「あァ……そうだな」
シャチは言い淀むように頷く。
どうして慌てないのか。
リーシャは混乱した。
「女性がいなくなったんだよ?失踪したんだよ?」
「リーシャ」
宥めるように落ち着かせるようにベポが肩を叩く。
「俺最初に言ったよね……女性は狙われるんだよ、って」
「……!?」
ベポの言葉に二度目の衝撃を受ける。
だって知らなかった。
こんな、こんな風に攫われるなんて――。
出会った女性が数時間後に消えていたことを知っていたなら。
リーシャは、どうしようもない脱力感に見舞われた。
「ノエルさんは……無事、なの?」
「それは誰にもわからない」
ローが淡々と言う。
確かにそうだろう。
誰にも安否はわからない。
安否すら不明な状況を皆体験したのだろうか?
シャチもペンギンもベポもローも。
女性が居なくなる現象をどうにかしたくて魔王退治に参戦しているのだと、今更ながら感じた。
(旅ってこんなに残酷だった?)
ゲームだと信じて疑わなかった自分が今、憎らしい。
現実か否か。
そんな事を考えている時間は何だったのだろう。
「ローさん……」
「何だ」
「私は勇者でないと駄目ですか?」
ローに聞きたかった。
勇者と言われるリーシャは魔王を倒す存在で。
その為に旅をしている。
「お前は……リーシャだ」
「え?」
彼が何を思ってそう断言したのかはわからない。
けれど、勇者と言われなかった事に肩の荷がスッと軽くなった気がした。
「行くぞ」
「……うん」
それ以外は何も言わなかったし、何もなかった。
それから数刻、コンパスに導かれるまま歩いて、
何度か休憩している間に水のアーチがちらりと窺えたので興奮した。
「水?で、できてる?」
リーシャが疑う様に呟くとペンギンの肯定が聞こえた。
「どうやら次の場所についたようだ」
その町に着いてあちこちに情報収集をかけてわかった事が幾つかあった。
この場所は『アクアパーク』と呼ばれ、エンターテイメント性溢れる賑わう遊園地がメインの町。
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