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「剣、剣……」
頭の中で自分好みのデザインを想像する。
イメージが固まったら次は強く念じるだけ。
そうすれば手元には銀色に艶めく剣が。
しかし、リーシャは剣が苦手なので思い直し再び武器のイメージを練り直す。
「棒、ぼーう……」
白く長いステッキサイズのこん棒みたいな武器がポウ……と淡い光と一緒に現れる。
「ふぅぅ……一苦労だよ」
「出せるようになったな」
「うん。ここまで来るのに大変だったけどね」
ペンギンに言われて思い出す特訓の日々。
『違う。もっとしっかりイメージしろ』
『なんだこの下手くそな粘土みたいな剣は』
『やり直し』
ふざけた態度の塊みたいなローに魔法を教えて欲しいと、ちょっとした成り行きで発言したあの瞬間程後悔した事はないだろう。
いざ特訓が始まると予想外にスパルタ指導だったのだ。
あれにはもう二の句なんて言葉を挟めない程辛かった。
ビシバシ、効果音があっても何ら違和感なんてない。
(私もう死ぬかと思ったな……)
あうあうと泣きっ面を晒した事すらどうでもいい。
リーシャは頭を振り、ベラミーに向き直る。
「魔法か……この世界じゃァそんなもん珍しくなんてねェよ!」
「えええ!足が!?」
ベラミーの足が徐々に変形していく。
幻のように足首はボヤがかかり捻れていった。
「俺の足はバネ。さて、勝てるか?」
「こんなのアリ?」
「変形魔法の一種だな」
ペンギンが冷静に分析しているようで。
「行くぜェ!」
「わ、わわわ!」
ドビュンと猛攻撃を仕掛けてきた。
間一髪で避ける。
「は、速っ!ヤバいぃ!」
ドビュンとまた攻撃を仕掛けられるが棒を振りかざす。
しかし、ヒョイと意図も簡単に避けられた。
「バネの足か、厄介だな」
神妙に言うペンギンにも厄介だと言われてしまう辺り、リアルに手強いようだ。
「よそ見してる時間なんてねェよ!!」
「ゔっ!」
ガキンと棒にベラミーのバネキックが当たる。
ギリギリと持ちこたえているが、それが精一杯だ。
(これに勝たなきゃ、次に進めない……!)
なんとか押す。
と、あろうことか相手を負かす勢いで押し返せた。
「な゙!?」
ベラミーも予想外の反撃に目を見開く。
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