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「い、一緒に住む?」
リーシャはドフラミンゴの言った事を繰り返す。
「俺はお嬢ちゃんの事が気に入った」
「許されるとでも思うのか?」
ローが額に青筋を立てていた。
リーシャはオドオドしながら答えに窮する。
(どう答えたらいいのかな……無理って言うしかないんだけどなぁ……)
ドフラミンゴの下した条件は簡単で難しい。
雨を止ませてもらえたらと願い出たが、予想外の事に悩む。
「おいリーシャ、お前まさか頷いたりしないよな?」
「まさかぁ……って言いたいけど……」
自分は全く勇者に向いていない。
だから、勇者を止めて一庶民となるのも……と考えているとローが視界に入ってきた。
「くだらない事を考えるんじゃねェ」
「!!――っ、ローさんに何がわかるの?」
「何?」
リーシャはローの吐き捨てるような声に無性にイラついた。
自分が何を感じながら勇者をしているかなど、彼が理解できるはずがないのに。
リーシャだって何度も何度も、飽きるくらい真剣に考えた。
勇者を止める事ができるなら止めたい、と――。
「私は勇者で、ローさんは魔法使いでしょ。私の気持ちなんて知らないくせに、理解できないくせに……憶測でものを言わないで!」
リーシャはずっと溜めていたものを初めて吐き出した。
勇者勇者勇者勇者。
何度そう呼ばれ、望みもしない試練を受けねばならないのか。
何故リーシャなのか。
明るく皆に接してきたが、生々しい戦闘や重荷が嫌だった。
明るく振る舞わなければ、この世界から出られない。
(くだらない?なんでローさんにそんな当たり前の事言われなくちゃいけないの)
リーシャも自己発言が何を意味しているのか、重々理解している。
「こりゃァ見物だな」
独自の笑みを浮かべるドフラミンゴ。
ローはローで呆気と困惑の混じった表情をしている。
まさかリーシャが反論してくるなど思いもよらなかったのだろう。
「私、ペンギンとチーム組むから……後は三人で探してね」
リーシャは紙をキリのいい場所でビリリと破りシャチに押し付ける。
シャチは口を開けたままほうけていた。
「行こっ、ペンギン!」
「……あァ」
ペンギンはローをチラリと見ると渋々といった風に付いていった。
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