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「フッフッフッ、どうやらおしゃべりもここまでみてェだなァ」
ドフラミンゴが意味ありげに首を向こう側に向ける。
どういう事かと聞こうとした時、リーシャの耳に懐かしい心地の声が響いた。
「門番ともあろう奴が不埒な真似してくれるじゃねェか」
「フッフッフッフッ!不埒な事なんてした覚えはねェな?ただ噂の勇者様と喋ってただけだぜ」
「ローさん!……皆も!」
バタバタと忙しない足音と共に登場したのは勇者のお供達だった。
「リーシャ無事ー!?」
「うん。身体縛られてること以外は平気だよ!」
ベポに笑って返す。
(あれ、そもそもなんで身体縛られてんだろ私?)
試しにドフラミンゴを見てみる。
彼は高らかに笑っていた。
「今更気にするのか?鈍い勇者様だなァ!フッフッフッフッ!」
愉快犯の雷の門番は爆笑しつつ、リーシャの縄を解いてくれた。
久々の開放感に両手をにぎにぎしていると小走りで四人が来る。
「リーシャ無事か?」
「うん」
ペンギンが聞いた。
「怪我してねェか?」
「うん」
シャチが聞いた。
「お前を縛るのは俺の役目なのに先を越されやがって」
「台なしだよ」
ローに聞かれたが蹴った。
「いつっ!何が間違っていたんだ!?」
「ナニモカモデス」
頭が痛くなりかけた時、ベポが癒しをくれた。
「次は絶対俺がリーシャを守ってあげるからね!」
「ベポ好きいい!」
叫びながらベポのフワッフワの毛並みに飛び込む。
野球場数億個分に相当する広さを持つ胸は最高だったと言っておこう。
リーシャとベポが愛の抱擁をしている中、ロー達はドフラミンゴを睨む。
「おいおい、怖いから睨むんじゃねェよ。フッフッフッ!……ちょっと話しただけで嫉妬か?心の狭ェ奴は嫌われるぜ」
ちっとも怖そうに思っていない風のドフラミンゴ。
更に笑みを深くする。
ローも額に線が増え、一層顔が険しくなった。
「勇者を攫うとは何を考えている、貴様」
ローの代わりにペンギンが代役する。
シャチも頷く。
「許される行為じゃねーだろ」
「フッ、フッフッフッフッフッフッ!許される行為?言ってくれるじゃねェか、シャチくんよォ?」
ドフラミンゴは、深い闇に底冷えする瞳をシャチに向けた。
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