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「理由?そんなものは、あるにはあるなァ」

「あの理由とか心の中でも質問した覚えがないんですけど」

「お前が思わなくても違う人間が気になる所なんだぜ?……お前の事を早く見たいと思ったからだなァ。まァ気に入っちまったから手放す気はねェけどな、フッフッフッフッ!」

「どえええ!?」

(解放する気ゼロ!?)



リーシャはドフラミンゴの疾風のように駆け抜けた話に驚きを隠す暇もなかった。
なんせ彼は自分を気に入ってしまったと宣言したのだから。
これには流石にヤバいと嫌な汗が背中を伝う。
身体も椅子に縛られている上に身動きができない。



「わ、私なんて興味持つ価値なんてないですからっ。ミジンコ以下の存在なんで、貴方のご期待には絶っっ対に答えられませんよおお!」

「フッフッフッ!お前のそういう所が気に入ったんだがなァ」

(逆効果あああ!)



リーシャは心底、後悔した。
自分を低く見せようとしたが、相手を更に愉しませてしまったようだ。



「どうだ?勇者なんて止めちまって俺と楽しく過ごさねェか?」

「私だって勇者を止めれるならとっくの昔に辞退してますけど……」



なけなしの希望が折られた今、会話だけに気を紛らわそうとする。
だいたい、勇者をしたいなんてリーシャは一度だって言った事も進言した事もない。
ロー達にしょっちゅう、勇者関連の話題を振られるが、話の主役としてはいまいちピンとこないのだ。



「あの、ドフラミンゴさん?」

「さん付けなんていらねェよ。どうした勇者様」

「私、どうして勇者に選ばれたんですか?」



今更な問いだが、前々から知りたかった。



「フッフッフッ!良い質問だが、それは誰も答えちゃくれねェぜ!」

(誰も?)



ドフラミンゴの言葉に、前にエースが言っていたのを思い出す。



『口封じの魔法をかけられてるからな』



口封じ。
それはなぜかけられているのか。
こちらとしては煮え切らない思いだ。
少しくらい情報が欲しいのに。



「簡単に教えたらゲームオーバーになるかもしれねェからなァ……知らねェ方がシアワセな事もあるって事だぜ、勇者様」



ドフラミンゴがリーシャの心を見透かしたように忠告してきた。



(あ、実際この人完璧に私の心の中読んでるよね)



疑う余地も何もあったもんじゃない。



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