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一方その頃、攫われたリーシャは――。
「ちょ、何なんですか!?貴方は誰なんですか!」
「フッフッフッ!」
特徴的な笑い声。
金髪な短髪にサングラス。
一番身なりで目を引くのはなんといっても首から下を覆い尽くすピンクのファー。
それに身長もすこぶる高い。
がに股ともいう歩き方をしていた男は、今はリーシャを椅子に縛り付けいた。
男はリーシャの隣にある南国風のプラスチックで出来た簡易な椅子に座っている。
「おーおー粋がいいね。お嬢ちゃんは勇者様だったなァ」
ニヤリと、ローとはまた違った笑みを浮かべる男にリーシャは頬が引き攣る。
「俺はドンキホーテ・ドフラミンゴ」
「フラミンゴ……」
「フッフッフッ!ドフラミンゴだ。しっかり頭に刻んどけよ」
「なんか嫌な予感しか感じない」
「そりゃあ光栄だな!」
とても愉しそうな声音だ。
(狂ってる人の類かな)
観察していればかなりの変人である。
椅子に座って優雅にワインなんかを嗜(たしな)んでいて、部屋ですら目を疑う。
(外は雨なのに……正反対)
部屋をぐるりと見渡すと、そこはサンサンと光が降り注ぐ南国の海が広がっていた。
もちろん本番の場所程には広くはない。
それでも十分広いが。
恐らくとてつもなく広大な建物なのだろう。
「どうした嬢ちゃん?随分と大人しいじゃねェか」
「貴方の得体が知れなさ過ぎて……じっとしてたほうがいいかなぁ、なんて」
「フッフッフッ、俺的には暴れてもがいてもらった方が愉しめるんだがなァ」
(ひ〜っ、この人マジでマゾだ……!)
ローよりも遥かに性悪なドンキホーテ・ドフラミンゴ。
彼は一体何者なのか?
「雷の神殿の門番だぜ?」
(私の近くには心を読む人しかいないの?――え、門番!?)
内心、辟易(へきえき)としていると一つの単語が脳内を巡回した。
「ももも門番んんんー!?」
「フッフッフッフッ!本当に面白ェなァ!!」
ドフラミンゴは爆笑ものだというように笑う。
こちらは笑う余裕など塵にもないというのに。
「か、雷の門番がどーして私を誘拐みたいな真似するの?」
「みたいでも、真似でもねェんだよなァ……事実誘拐だぜェ?」
ドフラミンゴはニヤニヤとリーシャの反応を窺うように喋る。
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