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「すいませーん」
シャチが濡れた帽子を被ったまま扉を叩く。
リーシャは「入れてもらえるの?」と疑問に思った。
「はーい?」
少しするとパタパタというスリッパ独自の音と共に赤い扉が開いた。
除いたのは黒い髪色。
女性で二十代の容姿に見える、後ろにゴムで一つに縛った人が出てきた。
よもや、知らない自分達に目をぱちくりとさせる彼女は濡れたペンギンなどを各自に目を移動させる。
「あぁ……もしかして、旅をしている人達?」
「はい。貴方は女性ですよね?上がらせていただきたいのですが」
ペンギンの疑問を含む問いにリーシャは、そういえば魔王は女性のみを攫うのだったと思い出した。
ということは、まだこの近辺は被害を受けていないというわけか。
リーシャは予想を付けながら女性の返事を待つ。
「あら、女の子もいるのね。いいわ、入って」
気前の良い清楚な女性に一同は安心したような空気になる。
もし、ダメだと一概に言われてしまえば雨の中をまた疾走しなければならなかっただろう。
「ありがとうございます。上がらせていただきます」
「失礼します!」
シャチはウキウキとした足どりで扉を潜る。
(女性の家が珍しいからか)
何となくわかった気がする。
リーシャは呆れつつも玄関で靴を脱ぐ。
「瓦の家なんて久しぶりに入ったな」
「え?普通はそうなんじゃ――」
「は?」
「や、何でもないっ」
ローの呟きにポロリとと口を零してしまいかけ、慌てて手を振る。
自分は異世界の人間だと言うようなものだ。
口を閉じたリーシャを怪訝な表情で見遣るローに冷や汗をかいた。
(あぶなかった……!)
バレたら最後、搾り出すような質問攻めに合うだろう。
「お、暖炉!」
「あったかーい」
シャチとベポが一番乗りで暖炉の側へと行く。
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