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「抱き着くなら、俺の胸にしろ」



と、リーシャの腕を引っ張りベポから引きはがすとローの腕が、リーシャの腰を抱き寄せる。
リーシャは、突然の事に暫し固まった。
彼は平然とした装いだった為、回復が遅れた。



「ハッ……!」



目が覚めたようにローから離れようと腕を動かす。
もがき続けるが、彼の力は強い。
全く動かなくて胸板を叩く。



(何考えてんの、この人!?)



離せ、という視線をなんとか送る。
クツクツと笑って余裕を見せるロー。



「散々お前には妬かされたからなァ?」

「別に妬かせたわけじゃないです!」

「クク……今更遅ェよ。焦らされたのは初めてだ。お礼に何をさせてもらおうか」

「いらないです。遠慮じゃなくて切実に」



なんとか気後れしないように平然を保つ。
今日のローは様子が可笑しいようだ。



「ペンギン、助けもがが!」



ペンギンもとい、オカンに助けを求めようとしたがローに口を塞がれた。
無論、手で。



「コンパスも貰ったし、行くぞ」

「ローさん。貴方が仕切るのはいいんですか?」



シャチがリーシャをチラリと見ながら言う。
助けてはくれないようだ。



(薄情者ー!)



口が利けないので目で攻撃した。



「別に誰でも支障はないだろ」

「勇者が先頭をきるのが常識ですよ」



さらりと言うローにペンギンが反論する。
リーシャに関しては何も言ってくれないらしい。
皆薄情だ。
ペンギンもシャチと同じく恨めがましく見つめた。
ベポでさえ、リーシャから目を逸らす始末。
かくして、四人はコンパスに従い進んで行った。






















しばらく獣道を歩いていれば、突然豪雨に見舞われた。



「わあー!いきなり過ぎるぅ!」



悲鳴を上げながらリーシャ達は雨宿りができる場所を探す。



「あそこに民家があるよ!」



まるで定められた運命のようにベポが一つの瓦屋根の家を指でさした。



「さすがベポ!お手柄だな!」

「急ぐぞ!」



シャチが褒めるとローが全員を急かした。
豪雨は収まるどころか、更に激しさを増す。



「はぁぁ〜、バケツの水をひっくり返したみたい……」



リーシャはとりあえず雨を凌げるスペースを確保出来た事に安堵した。



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