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ニカッと笑いかけられ、励まされているのだと感じる。
エースの人柄はどうも、周りの人間に活力を与えるらしい。
リーシャも先程より、遥かに元気が湧いてきた。
ありがとう、と蔓延の笑みで言う。
「火拳屋ァ。もう我慢ならねェ……消す」
「あれぇ!?なんか物騒なモノを掲げてる人がいるぅ!!」
ユラリと背後で気配を感じ、振り返ればローが不健康な笑みを浮かべていた。
いきなりの展開についていけない。
リーシャは奇声を発してローを説得する。
「ちょ!どうしたんですか!?エースさんがローさんに何かしましたか!?」
「色仕掛け」
「確かにクラリとしたけどっ、エースさん本人には無自覚だから罪はないです!」
「存在自体が罪って事で俺が直々に捌いてやる」
「捌くの字が違います。『裁く』ですよ」
「ペンギン、冷静にしてないで手伝ってぇ!」
変に律儀な訂正をかましたペンギンに、リーシャは涙を浮かべる。
ボケも程々にしろよ!
「いきなり怒ってどうした?」
(エースさんって鈍い!!)
メラメラと怒りに燃えるローを差し置くエース。
大物を見たようで神々しさを思わせる。
「エースさん……私、私!貴方にどこまでも付いて行きます!!!」
リーシャの言葉に、エース以外の全員が絶叫したのは言うまでもない。
「うええぇぇんん!!どーしてえええ!?」
「……胸に手を置いて考えろ」
リーシャはローに襟首を掴まれたまま、火山を見ていた。
「しっかし、お前も阿保だな。勇者がずっと同じ場所にいるなんてどう考えても可笑しいだろ」
「うるさぁい!シャチのくせにシャチのくせにぃぃ!!」
「なんだよ俺のくせにって!地味に傷つく!」
「塩を塗ってやる」
「ペンギン、お前って奴は俺が嫌いか!?」
ペンギンに追い打ちをかけられたシャチはベポに助けを求めた。
「俺、リーシャの味方だもん」
「ベポっ!愛してる!!」
ベポの天使の美声にリーシャは、ローの拘束を振りほどく。
シャチはその言葉に盛大なダメージを受けたようだ。
「どーせ俺なんか……ちくしょー……!」
地面にひたすら、ののじを書くシャチ。
その傍らのローが抱きしめ合う二人に待ったをかけた。
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